広大な室内空間と利便性が魅力のミニバンですが、かつて日産はメーカー純正チューニングを施したミニバンを展開していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■専用チューンが施されたメーカー純正「ミニバン」がスゴイ!
広い車内空間と高い利便性を備えたミニバンは、家族層を中心に幅広い人気を集めています。
しかしその中には、メーカー純正のチューニングと豪華装備が施された特別な1台が、かつて存在していました。
それが、日産のフラッグシップミニバン「エルグランド」の特別仕様車「ライダー ハイパフォーマンススペック」です。
エルグランドは、1997年に初代モデルがデビュー。
力強いスタイリングとラグジュアリーなインテリア、さらには高性能なV型6気筒エンジンを搭載し、当時のミニバンにはなかった高級感を前面に押し出したことで、高級ミニバンの先駆けとして一躍注目を浴びました。
2002年には2代目モデルが登場。同時期にはトヨタ「アルファード」やホンダ「エリシオン」といった競合モデルが市場に投入され、高級ミニバンの需要が急激に拡大していきます。
2010年には現行モデルにあたる3代目がデビュー。
プラットフォームを刷新し、従来の「縦置きエンジン+後輪駆動」から「横置きエンジン+前輪駆動」へと変更します。
これにより低床化と低重心化を実現し、乗り心地と走行性能が大幅に向上しました。
パワートレインには、最高出力170ps・最大トルク245Nmの2.5リッター直列4気筒エンジンと、280馬力・344Nmを発生する3.5リッターV型6気筒エンジンが用意され、通常モデルに加えて内外装を強化した特別仕様車もラインアップされていました。
そんなエルグランドの中でも異彩を放つのが、2011年に登場した特別仕様車であるライダーハイパフォーマンススペックです。
このモデルは、日産の子会社であるオーテックジャパン(現:日産モータースポーツ&カスタマイズ)が手がける「ライダー」シリーズの1つとして、内外装や走行性能が徹底的にカスタマイズされました。
その特徴的なデザインと専用チューニングが際立ち、特別仕様車の中でも異彩を放つ存在でした。
外装には、専用のフロント・リアのクロスステーやヤマハ製のパフォーマンスダンパーが装備され、走行時の安定性を高めています。
また足回りには、ダーク調の専用19インチアルミホイールや高性能タイヤが装着され、独特の存在感を放つとともに、専用チューンドサスペンションの採用も相まって、滑らかで安定感のある走りを実現しました。
さらに、2016年にはオーテックジャパン設立30周年を記念して、特別な仕様が追加されました。
ダーククロム仕上げの外装パーツや、ブラックとホワイトのコンビレザーシートを備えた室内は、さらなる高級感を演出しています。
搭載された3.5リッターV型6気筒エンジンは、専用のエンジンコンピュータ(ECU)とエキゾーストシステムにより、最高出力300馬力・最大トルク361Nmを発揮。
これにより、ミニバンとは思えない力強い加速性能を誇り、「爆速仕様」として知られる存在となりました。
しかし、このライダーハイパフォーマンススペックは、2017年のモデルチェンジを機にカタログから姿を消し、現在では生産されていません。
しかし、この特別仕様のエルグランドは、高級ミニバンの枠を超えた独自の魅力を持つ1台として、日産車の歴史に刻まれていることでしょう。