狭い道などで歩道にクルマを乗り上げる人がいます。一部のユーザーからは「狭い道でのマナー」だという意見もあるようですが、この行為は違法にならないのでしょうか。
■よく見かける歩道乗り上げ駐車は違反行為「駐車方法違反」
道端で停車するとき、道路の邪魔にならないよう歩道に片方のタイヤを乗り上げた状態になっているクルマがあります。
一部のユーザーからは「狭い道でのマナー」だという意見もあるようですが、この行為は違法にならないのでしょうか。
街を歩いていると、路上駐車をしているクルマを見かけることは多いでしょう。
一般的には道の端に寄って停めるのが通常ですが、なかには歩道に半分ほど車両を乗り上げて駐車しているクルマを見かけることがあります。
しかし、この行為は違法に当たる可能性が高いです。
警視庁交通相談センターの担当者は次のように話しています。
「駐車・停車に関しては道路交通法の47条で『車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない』と記載されています。
つまり駐車する際にはあくまで車道の左側に停めなくてはなりませんので、歩道への乗り上げは違反と考えられます」
また、道路構造令第2条の第1項では、歩道について「専ら歩行者の通行の用に供するために、縁石線又は柵その他これに類する工作物により区画して設けられる道路の部分をいう」と定めています。
そもそも歩行者専用の道にクルマが乗り上げている時点でも、法令的にみて違反であると考えられるでしょう。
ちなみに、歩道への乗り上げ駐車に加えてよく見られるのが、路側帯への駐車行為です。
路側帯とは、「歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路側寄りに設けられた帯状の道路の部分」を示したもので、歩行者が通行するためのスペースとして設けられています。
路側帯にも種類がありますが、基本的に路側帯は0.75m以上の余地を残して停めなくてはいけません。
それにも関わらず、0.75m以上の間を空けずに停めているクルマを見かけることがあります。
いずれにせよこれらの行為は違反となり、15万円以下の罰金が科されるおそれがあるので注意が必要です。
■迷惑行為だけど…乗り上げ駐車をする事情とは?
違反行為とも取られてしまう道路に乗り上げての駐車。しかし、これをやる人はかなり多く、SNSでも乗り上げ駐車に対する声も様々見受けられます。
その中でも「日本の道路の狭さなどから、歩道に乗り上げないと他の通行車両の邪魔になってしまうのである程度はしょうがないのではないか」という意見も。
では、実際に配送者など、運転を生業としている人はどのように思っているのでしょうか。
「配送業をやっているけど、歩道に乗り上げて停め、荷物を配送することがある。
片側1車線の道路に沿って止めると、後からくる車の走行の邪魔になり、自分の車を追い越す時、対向車線にはみ出さないといけなくなってしまう。
歩道に半分ほど乗り上げていると、対向車線のクルマもあまりはみ出さないで追い越すことができ、クルマへの迷惑がかなり減ると感じている」
またタクシードライバーからは次のような声が聞かれています。
「路肩がない片側一車線で交通量の多い道路では歩道に乗り上げて停車せざるを得ない時がある。
配車で向かって客が中々現れない時や、客の用事(買い物等)で停車する場合などは歩道に乗り上げていることが多い。
反対車線の車が通れるだけの間隔をあけて停止してくれればいいけど、そんなドライバーはほどんど存在しない。
道路に停車していれば後から来た車にクラクション鳴らされてしまうので、必要悪と捉えて歩道に乗り上げて停車しています」
業務上路肩へ駐車する機会の多い人たちにとっては、歩道に乗り上げざるを得ない場面も多く発生しています。
クルマ側の邪魔になったり、トラブルを起こさないようの配慮があるようです。
しかし、その一方で乗り上げ駐車を迷惑だと感じている歩行者側の意見もあります。
「通勤で大勢が行き交う道で、夜間にいつも大型トラックが歩道の半分以上まで乗り上げて通りにくい。
場合によっては通れなくて、車道に一旦出て通っている。
車の往来も多く、同じ道路のすぐ近くに保育園もあるので、注意しないと危ないと感じている」
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このように様々な意見が聞かれる乗り上げ駐車ですが、その理由には致し方ない場面もあるようです。
しかし、走行するクルマにとっても歩行者にとっても邪魔に思われる可能性が高いだけでなく、そもそも法令違反で取り締まりを受ける可能性もあります。