現代のクルマでは「暖機運転」はあまり必要ないとされていますが、それでも「ある程度の暖機運転はしたほうがいい」とも言います。一体どうしたらいいのでしょうか。
■「暖機運転」より「暖機走行」がオススメなワケ
現代のクルマでは、「暖機運転」はほとんど必要ないとされています。
環境を考慮して、条例で長時間のアイドリングでの暖機運転を禁止する自治体もありますし、もちろん暖機運転が必要かは地域差も大きいのですが、それでも「ある程度の暖機運転はしたほうがクルマには良い」という話も聞かれます。
しかも、今はハイブリッド車が広く普及しており、そして、多くのハイブリッド車は、始動時は「EVモード」となることからエンジンは稼働しません。
それでも暖機運転は必要なのでしょうか。
暖機運転するべき理由について、神奈川県のH整備士に聞いてみました。
「夜間に駐車していたクルマのエンジンを始動するのは、ヒトが寝起きしたばかりの状態と一緒です。
寝起きしてすぐにダッシュするのは(ヒトでいえば)心肺だけでなく関節や筋肉なども痛める原因になります。
それを防ぐためにスポーツ選手がストレッチをするのと同じように、クルマにもエンジンをはじめとする各所を潤滑にさせるオイルが、スムーズに循環できる温度まで暖めてあげるほうが、エンジンやトランスミッションなどの負担が少なくてすみます」
ただ現在は、クルマの取扱説明書にも「停車しての暖機運転は必要ありません」と記載されていることもあるほか、カーエアコンが暖まるまでアイドリング状態で暖機するのは、環境にもマナー的にも推奨されていないのが現状です。
しかし、住環境によっては暖機運転が欠かせないケースもあるようです。
「霜が降りるレベルならまだしも、路面が凍結してしまうほど冷え込む地域では、ボディや窓ガラスに凍結してしまった氷などを落としやすくするために、やむなく従来式の暖機運転をしているケースもあります」(H整備士)
もうひとつ気になるのが、ハイブリッド車の場合です。始動時はモーター駆動の「EVモード」走行になっており、そのため暖機運転は不要なのではないでしょうか。
「構造やシステムとしては必要ないように感じますが、シリーズ式・パラレル式ともエンジンは搭載されているので、ハイブリッド車でもやはり暖機はできるならしたほうがいいでしょう。
それにモーターだって適正可動温度があるはずで、内部が凍結していないとも限りません」(H整備士)
また、1週間以上ぶりにエンジンを稼働させる場合も、循環すべきオイルが下に下がってしまっている(オイルパンに溜まって油膜が落ちている)ため、ゆっくりとオイルをほぐし金属部品を潤滑に動かせる状態になるように意識しながら暖機運転したほうが良いといいます。
そして、現在では「オイルがエンジン内に行き渡り、最適な状態になるための準備運動」のような「暖機走行」がもっとも好ましいそうです。
「暖機走行とは、走行しながらクルマを温める方法です。
ただし、エンジン始動直後から動かすにしても、『急』がつく操作をしないことが大切です。
いきなりアクセルを踏み込む、暖まる前に急な加減速を繰り返すと、エンジンだけでなくサスペンション内のオイルもまだ馴染んでいない状態ですし、サーモスタットが稼働していない状態では熱変換もうまく作用しません。
結果として故障の原因にもなりかねません」(H整備士)
では、この暖機走行は、どれくらいの時間かかるものなのでしょうか。
「周囲の気温や環境にもよってかなり差がありますが、凍結していない場合は暖機走行として5分程度ゆっくり操作することが好ましいでしょう。
ウインドウ類が凍結するほどの寒冷地なら、始動前にある程度の氷を落とす必要はありますが、乗り込んで発車する前に暖機して、その後『暖機走行』で計10分程度おとなしく走ることが望ましいと言えます」(H整備士)
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人間の体同様、クルマも本格的な走行前の「ウォーミングアップ」は大切です。
とくに寒い時期はクルマも冷え切っています。エンジン始動後は、暖機運転でクルマを温めてましょう。