近年、ガソリン携行缶の販売が厳格化されていますが、もしガソリンを携行缶に入れる時はどのようなことに注意すべきなのでしょうか。
■ガソリン携行缶での販売ルールとは?
ガソリンスタンドはガソリンを給油・購入することができる場ではありますが、自由にガソリンを購入して持ち帰れるわけではありません。
現在はガソリンをクルマに給油せず、ガソリン単体で持ち帰りたい場合、ガソリン専用の携行缶へ給油することが厳格化されています。
「昔は好きな容器にガソリンを入れられた気がする…」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
その通り昔は何も言われず、自分で好きな携行缶に給油することができました。
ただし令和2年2月1日からガソリンを携行缶に給油するには、消防法令に適した携行缶のみで、「購入者の本人確認」「使用目的の確認」「販売記録を作成」の3点が法令により義務づけられることとなりました。
また、この3点を行う上で担当する従業員が、不審だと感じたら警察に通報するよう消防庁と警察庁は呼びかけています。
容器は危険物保安技術協会の性能試験をクリアした携行缶を使う必要があり、灯油用ポリ容器や消防法令が守られていない携行缶には給油できません。
上記を満たしたポリエチレン缶や金属製ドラムへの給油も可能ですが、自分で判断ができないのであればガソリン専用の携行缶を用いるのが無難でしょう。
セルフ式であればこっそり携行缶に給油できるかもしれないと思われるかもしれませんが、消防法により監視設備が設けられています。
給油の様子は従業員に全て見られており、窃盗や犯罪を防ぐだけではなく給油の種類が間違っていないか、顧客が事故を起こしていないかなどを確認しています。
そのためセルフ式ガソリンスタンドであっても、誰にも見られず携行缶に給油を行うことは不可能であり、必ず従業員が確認事項をチェックし給油します。
現在は携行缶への給油が厳しくなったことも相まって、自主保安規制等により携行缶への給油販売を行わないとしているガソリンスタンドも増えています。
専用の携行缶に給油するのはガソリンスタンドの従業員なので大丈夫かとは思いますが、携行缶にガソリンを満タンまで入れると膨張による圧力が缶内にかかり危険なため、容量は90%以内にとどめるようにしましょう。
携行缶に入れたガソリンは、直射日光が当たらない通気性のよい冷暗な火気のない場所で保存し、なるべく早めに使用することも大切です。
ガソリンは劣化すると、発火点が下がるので新しいガソリンと古いガソリンでは古いガソリンの方が引火しやすい状態になります。
もしも昔購入した専用の携行缶ではない容器に入ったガソリンがあり、もう古くて使えない・使わない場合はガソリンスタンドに引き取ってもらうか、産業廃棄物処理業者に処理を依頼しましょう。
■ルールが厳格化された背景とは?
これらの背景には2003年に起きた名古屋立てこもり放火事件が、携行缶への給油が厳しくなったきっかけの1つといわれており、以降ガソリンスタンドのポリ容器などのガソリン販売の禁止など法規制が強化されています。
ほかにも携行缶に入ったガソリンによる事故や事件はたびたび起きていますが、さらに追い打ちをかけたのが「京都アニメーション放火殺人事件」です。
同事件はアニメ制作会社のスタジオに犯人の男が放火したという概要を知っている方は多いかと思いますが、犯人の男が放火に使用したガソリンはガソリンスタンドで「発電機に使う」と嘘をついて購入したものでした。
事件を起こす直前に携行缶からバケツに入れ替えて犯行に及びました。
この事件により、危険物に関する規則や消防法など関係法令が改正され、携行缶に給油する際の手続きが以前にも増して複雑になりました。
現在ほとんどの方が携行缶に給油したガソリンを必要とする状況におかれているということは少ないでしょうが、今でも仕事や家で携行缶に入っているガソリンを必要としている方々はいらっしゃいます。
それらの方々がこれ以上携行缶への給油が厳しくなって困らないよう、一人一人がルールを守って給油を行い、また携行缶に入ったガソリンによる事件や事故がなくなることを願います。