1990年代は、チャレンジングなクルマが登場したものの、短命に終わったクルマもありました。そのなかのひとつが日産「NXクーペ」です。どのようなモデルだったのでしょうか。
■北米市場向けの「セクレタリーカー」を日本に導入
過去にはデビューから数年で販売が終了してしまったクルマが数多くあります。
特にチャレンジングなクルマが多数登場した1990年代は、注目を集めたものの短命に終わることが少なくありませんでした。
日産が1990年に発売した「NXクーペ」も、わずか4年で国内販売を終えたクルマでした。
NXクーペは、北米市場向けの「セクレタリーカー」として、7代目「サニー」をベースに開発された3ドアクーペで、日本では1990年1月に発売されました。
あまり聞きなじみのないセクレタリーカーという呼称ですが、当時のアメリカで主に「小型の乗用車」、なかでも主に2ドアモデルに用いられていた呼称。
セクレタリーとは日本語で「秘書」を意味しており、「秘書として活躍しているような女性が、通勤時に乗る手軽で乗りやすいクルマ」という意味で、小型の乗用車をセクレタリーカーと呼んでいたのです。
セクレタリーカーは女性がメインターゲットということで、オシャレなだけでなく、誰でも乗りやすいこともポイント。NXクーペも、これらの特徴を兼ね備えたクルマでした。
国内仕様のNXクーペは、全長4140mm×全幅1680mm×全高1310mm。セクレタリーカーらしいコンパクトなクーペとなっており、車重は1010kgと、3ドアクーペでは軽い部類に入ります。
アメリカの「日産デザインインターナショナル」が担当したスタイリングは、全体に丸みを帯びたカッコよさとカジュアルさを両立させたもの。
「Z32型フェアレディZ」に通ずる意匠もあり、「ミニ・フェアレディZ」といえるエクステリアでした。
また、グレードラインナップには、ルーフを脱着することができる「Tバールーフ仕様」もありました。
エンジンは1.5リッター、1.6リッター、1.8リッターの3種類。トランスミッションは5速MTと4速ATから選択できました。
インテリアはゴテゴテとした装飾のないシンプルな造りになっていますが、ドアを開けたところに傘収納スペースが用意され専用の傘が付属するなど、女性が使いやすい装備がありました。現存数が少ないため、“純正”の傘もレアなアイテムになっています。
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日本発売の際は、「タイムマシンかもしれない。」のキャッチコピーと、CGを用いた画期的なCMで話題になったNXクーペ。
しかし、セクレタリーカーという存在が日本ではあまり知られていなかったことや、3ドアクーペでは「スペシャリティカー」よりも、スポーツモデルの方が人気だったこともあり、販売面では苦戦しました。
そして1万5000台ほどしか売れずに1994年で国内生産は終了となりました。