東京の都市高速「首都高」では、自動料金支払いシステムの「ETC専用」料金所にも係員がいます。なぜまだ有人なのでしょうか。
■“ETC専用”なのに係員がいる不思議……
無人のETCゲートも増えてきた昨今。しかしよく見ると、「ETC専用」の料金所にも係員がいます。
ETC全盛ともいうべき時代に、なぜまだ料金所は有人なのでしょうか。その理由について首都高に聞いてみました。
首都高(首都高速道路)は、都内の交通渋滞緩和や効率的な移動を目的として、1964年の東京オリンピックに合わせて整備されました。
周辺地域にも接続していることから、都心へのアクセスを提供する重要なインフラであり、日常的に多くの車両が利用しています。
そんな首都高をより便利にしてくれるのが、2001年から全国で本格導入が始まったETC(Electronic Toll Collection:自動料金支払いシステム)です。
ETCの導入によって私たちは、対面・現金手渡しによる通行料の支払いでは渋滞しがちだった高速の料金所をスムーズに通過することができるように。
さらには、ETCを利用したさまざまな割引の適用を受けられるようになりました。
こうしたメリットを享受できることから、ETCの利用率は年々上がっています。
車載器の取り付けや、専用カードの取得といった多少の手間が必要なのにもかかわらず、全国94.7%、首都高98.2%(2024年8月現在)までに普及しました。
ここでひとつの疑問が湧いてきます。
ETCは今や「高速道路を利用するためには欠かせない存在」であり、料金所出入口のゲートで止まることなく走り抜けることができる便利なシステムです。
ETCを利用すれば基本的に、料金所で現金を手渡しするために止まる必要はないわけです。
となれば、料金所に料金収受のための係員さんはいなくても良さそうなのに、“ETC専用”を含む料金所にも、まだ係員さんは配置されています。それはなぜなのでしょうか。
そんな素朴な疑問を、首都高の通行料金を収受する業務を行っている「首都高トールサービス東東京」にぶつけてみました。
■「首都高トールサービス東東京」に聞いてみた!
――首都高を走るクルマのほとんどがETCを利用していて、ETC専用の無人ゲートも増えつつある今、なぜ料金所の係員さんは必要なのでしょうか。
首都高トールサービス東東京(以下、首都高):首都高には現在、“ETC専用”の料金所が35カ所あります。
しかしそれ以外の約150カ所の料金所では、現金で料金をお支払いいただくレーンもあるため、料金収受を行う係員を配置する必要があるのです。
また現状では、“ETC専用”の料金所に現金でお支払いをするクルマが間違って進入してしまうこともあります。
そうなればゲートが上がらなくて立往生してしまい、後続車に追突されるなどして危険です。
そうしたトラブルを防ぐため、現場で常に監視業務を行う係員を配置しています。
――なるほど、確かに監視をしたりトラブルに対応したりするためにも、係員さんは必要ですね。ちなみに、係員さんはどのように採用しているのですか。
首都高:料金収受や監視業務を行う係員の求人は、当社のホームページに採用専用のコンテンツを掲載しているほか、新聞広告を出す、ハローワークに情報を登録する、各種の会社説明会などに参加して募集するなどしています。
それらを見て求人に応募された方の中から、採用試験を経て採用させていただいております。
――そうなのですね。では実際に、どんな方が料金所の係員として従事しているのでしょうか。
首都高:現在、男女を問わず、30代~70代という幅広い年代層の方たちが料金所の係員として従事しています。
その中でも中心となっているのは、50代~60代の方たちですね。
――採用された後の研修制度を教えてください。
首都高:新人は料金収受や監視業務を行うのが初めての方ばかりですので、研修室での座学に始まって、シミュレーターを使った訓練や、ETCの機械に触って仕組みを学んだりもして、まずは7日間しっかりと新人研修を行います。
働き始めると、2人1組になって、ブース内で料金の収受作業やETCの監視業務を行います。
――いつもどんな働き方をされているのか、ちょっと興味があります。
首都高:勤務時間は朝8時から翌朝9時頃まで。もちろん、翌朝までの勤務の間には、食事休憩や仮眠時間があります。
その後、勤務明けの翌日に1日休んで、また朝8時に出勤となります。
――いわゆる3日に1回の勤務体制が基本なのですね。
首都高:はい。ワークライフバランスを重視した働き方ができることを志望動機として、応募する方もいますよ。
※ ※ ※
現在はほとんどのクルマがETCを利用していますから、トラブルなどがないかぎりは首都高の料金所で止まることはないでしょう。
とはいえ、不測の事態は不意に起こるもの。
そんなとき、「いつも係員さんが見守ってくれている」と思うと、とても安心感がありますね。