日産「シルビア」の復活が望まれる一方、かつて公開された未来的なスポーツモデルのなかには、技術の進化で現実的になったものもあります。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■流麗ボディが目を惹く「謎のスポーツクーペ」とは?
日産「シルビア」は1965年から2002年まで、7代にわたり展開されてきたスポーツカーで、既に生産終了となってから20年以上経つ現在もなお人気を誇っています。
そんなシルビアは多くのクルマ好きから復活を熱望する声も寄せられている一方で、日産は過去に未来のスポーツカーを示唆したモデルを公開してきました。
なかには、発表当時は未来的だったものの、技術の進化により今では現実的となったモデルも存在しています。
一体どのようなクルマなのでしょうか。
そのクルマとは「ESFLOW(エスフロー)」です。
同車は「意のままに走るよろこびとゼロ・エミッション・モビリティの実現」をテーマに開発された、EVスポーツモデルのコンセプトカーです。
2011年4月にジュネーブモーターショー、そして同年11月には東京モーターショーでお披露目されました。
最大の特徴は、環境性能とスポーツ性能の共存を狙ったコンセプトカーであることです。
環境性能を考えると、走行性能を犠牲にしないといけないという通説がありますが、エスフローは日産が培ってきたスポーツカーのノウハウと、EVの最新技術を組み合わせることで、未来のゼロ・エミッション・スポーツカーを生み出しました。
例えば、パワーユニットには日産「リーフ」の技術を用いた高性能モーターを2基ミッドシップレイアウトで搭載。
各モーターが左右後輪を独立で駆動させて制御する仕組みで、高い旋回性能とエネルギー回生性能を併せ持ちます。
また、EVならではの性能の高さも健在で、停止時から5秒以下で時速100キロまで到達するスポーツカーらしい加速性能も備える一方、1回当たりの充電で240km以上(US LA4モード)の航続走行距離を兼ね備えています。
外観の白で統一されたロングノーズのボディは、EVとしてのクリーンなイメージも表現したものになっており、サイドミラーのない(代わりにリアビューカメラを装備)すっきりとしたスタイルが特徴的です。
また、ボディは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製、シャシはアルミ合金にすることで、最大限の軽量化に成功しました。
内装は、ゴールドのレザーと穴の空いたスエードで覆われたシートを備え、ダッシュボードにはブルーとゴールドのモチーフを配するなど、ラグジュアリーな雰囲気を演出。
ほかにも、電気信号でステアリングとタイヤをつなぐ「バイワイヤ技術」を用いることで、ステアリング・ペダルの位置を動かすことが可能になっています。
これにより、自由なドライビングポジションで運転を楽しめるようになっていました。
現在ではEVのスポーツモデルも増えてきましたが、当時は走りとエコの両立を図ること自体が画期的なものでした。
エスフローはエコなスポーツカーは生み出せないという常識に挑んだコンセプトカーだったと言えます。