ダイハツは2019年に、次世代の軽トラックを示唆する画期的な「Tsumu Tsumu」を公開していました。
■「日本の課題解決」 大事な使命を果たすために
軽トラックは農業や小口配送といった商用ニーズだけでなく、現在はアウトドアレジャーの浸透化により、趣味の道具として活用する一般ユーザーもいます。
そんな軽トラックですがダイハツはかつて、日本が抱える問題を解決する、次世代の軽トラックを示唆するモデルを披露していました。
それがダイハツが2019年開催の第46回「東京モーターショー」で披露した「Tsumu Tsumu(ツムツム)」です。
ダイハツによるとツムツムは「多用途に対応する次世代軽トラック」だとしており、抜群の乗降性を持つビッグキャビンと、広い荷台を両立。用途に合わせて荷台を換装することで、多くの「コト」に対応するといいます。
ボディサイズは従来の軽トラックと同等の全長3395mm×全幅1475mm×全高1850mmです。
エクステリアはスクエアを基調にまとめており、グリーン×ブラックのポップなカラーを採用し、アウトドアギアのようなカジュアルな印象を感じさせます。
フロントフェイスは大きなフロントウインドウの下に6つのライトを配したほか、キャビン上部から下部にかけてはマットブラックのラインを通し、道具のような堅牢なイメージをもたせました。
張り出したバンパーやグリルの類はなく、非常にシンプルなデザインです。
ボディサイドやリアも加飾類はまったくなく、テールランプは縦2本のバータイプとするなど、ミニマムなスタイリングです。
インテリアも実用性を最重視したようなもので、直線的なインパネにグリーンの外板そのままのドア、樹脂製フロア、Aピラー内蔵の大型グリップなど、日常使用での使いやすさを最大化しています。
そんなツムツムですが、ほかの軽トラックにない画期的なものとして、ドアと荷台を特殊な構造としていたことがあります。
運転席側のドアはうしろ側にヒンジを持つ折戸を採用。少ない幅で開けられ、さらにキャブの横すべてが開口部となることで、非常に乗り降りのしやすい構造になっています。
助手席側は通常のドアですが、ヒンジを車体最前部にコンパクトにまとめて大きな開口部を確保するとともに、冷蔵庫のドアのような変則的な観音開き構造を採用しました。
独自の低床プラットフォームの採用と合わせ、軽トラックのレベルを超える広大な空間を実現しています。
そして荷台についても、用途に合わせてまるまる換装できる構造を採用。大幅な改造が不要ながら多用途に対応していたのも大きなメリットでした。
ちなみに公開時は農業用ドローン基地や個室空間などを利用例として挙げていました。
このツムツムが誕生した背景として、ダイハツの奥平総一郎社長(当時)は、東京モーターショー2019の会場で以下のように話しています。
「ツムツムは、このクルマを通して働くひとへの優しさで地域の暮らしを支え、これからの日本の『働く』を応援していきたいと考えております。
地域での移動や働き方をめぐる課題に取り組み、ダイハツならではの答えを出す、ダイハツの次世代のモビリティを表現したものです」
高齢化や過疎化が進み、地方などではバス路線の廃止など、移動に関するさまざまな課題が浮き彫りになる一方で、健康寿命の増進から生涯現役で働いていたいとする高齢者も多くいます。
そうしたなか、低床かつ広い空間から乗り降りがしやすく、さらに荷台を自在に変更できる軽トラックの存在は、こうした諸問題を解決する手がかりになる可能性があります。
大胆で斬新ともいえるツムツムは、これまで地域での生活に密着した軽自動車を数多く手掛けてきたダイハツならではの取り組みといえ、まさに、次世代の軽トラックとして大いに注目を集めたのでした。
しかし、公開後5年が経過しましたが、今のところ市販に向けた動きなどは一切なく、従来の軽トラックを超えた大胆発想のモデルが登場していません。
いっぽう、2023年10月、「ジャパンモビリティショー2023」で、軽トラック・バンのコンセプトカー「UNIFORM(ユニフォーム)」シリーズを発表。
ユニフォームシリーズについてダイハツは、「使いやすさなど働くクルマの原点を追求し、多様な働き方や用途に対応する未来の軽商用車」としていることから、現在もなお次世代の軽トラックを模索する動きは続いています。