日産は過去に、6人乗りでかつ6ドアという非常に斬新な特徴を持つSUVミニバンを披露していました。
■衝撃の「6ドアSUVミニバン」 さすがに市販化は難しいか
「ジャパンモビリティショー」などの国内外の自動車ショーでは、発売予定のニューモデルだけでなく、新時代に向けての最新技術を用いたコンセプトカーが発表されます。
なかには市販化は難しそうでも、非常に画期的なデザインや機構を持つものもありますが、日産が2005年に初公開したSUVミニバンも、まさにそんな1台でした。
2005年1月9日から23日にかけ、米国デトロイトで「北米自動車ショー(NAIAS・通称デトロイトショー)」が開催。日産では2台のコンセプトカーと7台の市販車を出展しました。
そのコンセプトカーのひとつが「クラーザ」です。伸びやかなデザインが特徴の大型3列シートSUVで、日産の高級ブランド「インフィニティ」のコンセプトカーとして登場しました。
公開当時、日産はクラーザついて、「乗る人全員に快適さ、心地良さ、ゆとりを等しく提供する、将来のSUVのデザインを提案するもの」と説明しています。
エクステリアは「FX」や「M45」、「ムラーノ」「スカイライン」などとも類似する、当時の日産車に共通する縦長のヘッドライトや楕円形状のフロントグリル、ワイドに膨らんだフェンダーなどを採用。
フロントフェイスは実に市販車らしく、非常に現実味のあるデザインとなっていました。
一方で、ボディサイドからリアにかけてはかなり斬新です。フロントフェイスとは裏腹に、スクエアなイメージを持つAピラーや直線的なフロントガラスに、中央からリアにかけて上部に向かって膨らみをもたせた形状のルーフを組み合わせました。
このようにリアが高くなったことで、3列目の乗員の頭上スペースが広くなっていることを想像させます。
そしてリアはほぼ垂直につながっていますが、テールランプやリアバンパー周辺はフロントフェイスと同様に丸みを帯び、ボクシーなスタイリングと曲線美が組み合わさっています。
インテリアは「自然素材と先進技術を組み合わせ、極めて贅沢なインテリア環境を創り出している」と説明。
エクステリア同様、曲線と直線を組み合わせたインパネやドアトリムに、ステッチ入りの本革素材やウッドパネル、アルミ素材などを組み合わせ、豪華な雰囲気を演出します。
シートバックの形状は着物をイメージしたもので、生地の層は十二単(じゅうにひとえ)のデザインがモチーフです。さらにシートバックのインフィニティロゴは家紋が備わる場所をイメージしているとされています。
また、1列目から3列目までアーチを描くように連続した形状のセンターコンソールによって、左右シートを隔てており、6つのすべてのシートが独立。乗員はどこに座っても自分のリラックス空間を確保できるようになっています。
そんなクラーザの最大の特徴は、左右それぞれに3つのドアを設けた点です。フロントのドアは通常ですが、リアドアはクオーター部も開く観音開き構造とすることで抜群の開放感を実現しました。
これはクラーザの目指す「すべての乗員は平等に扱われるべき」という思想を体現したもので、通常は窮屈で使い勝手の悪い3列目も、前席同様のホスピタリティをもたらしています。
パワートレインやボディサイズなどは一切不明で、デザイン以外の詳細情報は不明ですが、大人数が快適に乗れるミニバンと都会派SUVを見事に融合させた新時代の高級車を感じさせるものでした。
6ドアという構造上、さすがに市販化は無理があったようで、公開から現在に至るまでクラーザの直接的な市販モデルは登場しませんでしたが、インフィニティの最高級SUV「QX56」(先代)などとは強い共通性が感じられます。
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現在、SUVはアウトドアレジャーの浸透などから人気を獲得している一方、3列シートが備わり、ミニバンのように扱えるモデルは少数派です。
6ドアの実現は難しいかもしれませんが、3列目の乗員もしっかりと座れるSUVミニバンは今求められる1台なのかもしれません。