降雪時におこなわれる「滑り止め装着規制(冬用タイヤ規制)」と「チェーン規制」には、大きな違いがあります。それぞれの規制と対応するタイヤ、チェーンについて解説します。
■混同されがちな「滑り止め装着規制」と「チェーン規制」
冬の足音とともにニュースで話題になるのが「チェーン規制」。聞き慣れた言葉ですが、正しく理解できている人ばかりではなく、「滑り止め装着規制(冬用タイヤ規制)」と混同していることも多いようです。
そこで今回は、滑り止め装着規制とチェーン規制の違いについて紹介します。
道路に雪が積もる地域の道路に出される規制には2種類あります。
ひとつはチェーン規制、もうひとつは滑り止め装着規制(冬用タイヤ規制)です。
どちらかと言えば語呂のいいチェーン規制のほうが、一般的に広く使われている傾向があります。
高速道路の電光表示板などでは便宜上“チェーン規制”と表示されているものの、実際は滑り止め装着規制であることもあります。
しかし、実際の規制内容には大きな違いがあります。
チェーン規制とは、国土交通省が定める13の国道・高速道路を対象に、大雪特別警報をはじめとする緊急発表がされるような「異例の積雪」があるときに出されるものです。
これはスタッドレスタイヤ装着の有無にかかわらず、タイヤチェーンを装着した車両のみに通行を認める規制となっています。
その13の道路は、2023年度では以下のとおりです。なお規制区間は毎年見直されています。
【直轄国道】
・山形県 国道112号(月山道路):西川町月山沢~鶴岡市田麦俣(15.2km)
・山梨県/静岡県 国道138号(山中湖・須走):山梨県山中湖村平野~静岡県小山町須走字御登口(8.2km)
・福井県 国道8号(石川県境~坂井市):あわら市熊坂~あわら市笹岡(3.2km)
・広島県/島根県 国道54号(赤名峠):三次市布野町横谷~島根県飯南町上赤名(2.5km)
・愛媛県 国道56号(鳥坂峠):西予市宇和町~大洲市北只(7.0km)
【高速道路】
・上信越道 信濃町IC~新井PA[上り線のみ](24.5km)
・中央道 須玉IC~長坂IC(8.7km)
・中央道 飯田山本IC~園原IC(9.6km)
・北陸道 丸岡IC~加賀IC(17.8km)
・北陸道 木之本IC~今庄IC(44.7km)
・米子道 湯原IC~江府IC(33.3km)
・浜田道 大朝IC~ 旭IC(26.6km)
チェーン規制は、2018年の法改正で変更された規制です。
それまでのチェーン規制では、4輪にスタッドレスタイヤを装着していれば通行可能となっていました。
しかし、大規模な立ち往生事案が相次いで発生していたことを受けて、新たにスタッドレスタイヤ装着車両でもチェーンを装着することが義務となりました。
■「チェーン規制」に対応している「チェーン」の種類とは!?
チェーン規制に対応するチェーンの種類については、法律上で製品や材質による規制が明示されていません。
国土交通省のウェブサイトに掲載されている「チェーン規制のQ&A」では、「金属チェーン・ウレタン&ゴムチェーンタイプ・布製カバータイプ」は問題なく使用できるとし、スプレーなどの薬剤を吹き付けるタイプものは不可としています。
一方、滑り止め装着規制(冬用タイヤ規制)とは、積雪が発生したときなどに全国の高速道路を対象に出されるものです。
規制区間では、スタッドレスタイヤを4輪に装着しているか、夏用タイヤ装着車の場合はチェーンを装着していないと通行できなくなります。
通行不可車両は、規制区間に一番近いインターチェンジで強制的に下ろされます。
冬用タイヤ規制に対応しているタイヤかどうかは、タイヤウォールに「スノーフレークマーク」の有無で判断され、一般に「冬用タイヤ」といわれるスタッドレスタイヤには、このマークが付いています。
また「オールシーズンタイヤ」のなかでも、同様のスノーフレークマークが付いていれば規制区間の走行が可能となります。
近年販売されているオールシーズンタイヤの多くにはこのマークが付き、雪上路の走行も可能な多用途性をアピールしていることもあり、万が一の備えとしても注目が集まっています。
スノーフレークマーク付きオールシーズンタイヤの雪上性能は年々向上していますが、凍結路のグリップ力についてはスタッドレスタイヤに優位性があるものが多いようです。
特にカーブ途中に部分的に路面が凍結していたりすると、スタッドレスタイヤでなければスリップやスピンのリスクがあります。
オールシーズンタイヤ装着車はチェーンを携行して、凍結が予想されるときには早めに装着するのが良いでしょう。
また、滑り止め装着規制に対応するチェーンは、チェーン規制と同様に、金属・非金属・布製の各チェーンが使用可能となります。
滑り止め装着規制が出される地域の高速道路では、チェーン脱着場を設けています。
規制が出されたら速やかにチェーンの装着ができるよう、事前にチェーン脱着場の場所を確認することをオススメします。
ただし滑り止め装着規制がかかっていない区間でチェーンを装着したまま走行すると、チェーンが切れてしまう危険性が高まります。
最悪の場合、飛散したり車軸に絡まってしまったりするなど、重大な事故や故障の原因となりますので、規制が終わってから一番近いチェーン脱着場で外すようにしましょう。
ちなみに一般道路では、滑り止め装着規制が出されることはありません。
しかし沖縄県を除く各都道府県の公安委員会では「道路交通法施行規則」または「道路交通規則」で、道路が積雪ないし凍結したときの「滑り止め措置」を義務としています。
これに違反すると6000円の反則金(普通乗用車の場合)が科せられる可能性があります。
シーズン前までに物置などで眠っていたチェーンは、正常に使えるかどうかの点検も忘れずにおこないましょう。