最近の新車には「スペアタイヤ」が標準で装備されず、オプション設定になっています。なぜ標準装備されなくなったのでしょうか。
■「えっ…、スペアタイヤがない!?」一体なぜ?
クルマで走行中にタイヤがパンクしてしまうことがあります。パンクしてしまった時は、まずは安全な場所に停車して、「スペアタイヤ」(応急用タイヤ・テンパータイヤ)へ交換作業を行います。
しかし、近年はスペアタイヤが標準装備されていないクルマが増えてきています。
一体なぜスペアタイヤが装備されなくなったのでしょうか。
クルマのスペアタイヤは荷室の下の空間に格納されていたり、アンダーフロアに吊り下げられていることが多く、かつてはSUVなどでリアゲートなどに搭載されることもありました。
ところが最近の新型車の多くはスペアタイヤが搭載されず、オプション装備となることも少なくありません。
スペアタイヤが廃止される理由は複数あり、ひとつは「エコ」の観点が挙げられます。
国産車メーカーによると、新車で購入してから廃車になるまでの期間に、スペアタイヤが一度も使用せず廃棄されることが多々あるといい、環境への配慮から“非搭載”となっています。
そして、ゴム製品であるタイヤは走行しなくても経年劣化が生じ、使用する機会がないうちにヒビが入るなどで使えなくなってしまうこともあるのです。
なお、使っていないスペアタイヤでも定期的な点検や交換が必要です。タイヤ大手のブリヂストンでは、製造から10年を目安に新しいタイヤへの交換を推奨しています。
さらに、低燃費を追求する昨今のクルマは軽量化を図っており、スペアタイヤは不要なアイテムとして標準装備から外されるという事情もあります。
ほかにも、ドライバーがスペアタイヤの交換作業をしなくなったことも理由のひとつ。
スペアタイヤが搭載されていても、タイヤの交換作業には知識や体力が必要となり、力が弱い女性や高齢者には難しい作業だといえるでしょう。
また、JAF(日本自動車連盟)や自動車保険にロードサービスが付帯されるなど、万が一のトラブルの際に救援依頼できるサービスも存在しており、ドライバー自身がスペアタイヤを交換しなくて良くなったことも非装着となる理由のひとつとして考えられます。
電話1本で救援に駆けつけてくれるロードサービスは強い味方ですが、その一方で、携帯電話の電波が通じない場所でパンクしてしまうこともあるでしょう。
スペアタイヤがない現代のクルマでは、立往生する危険性も否定できませんが、スペアタイヤの代わりに「タイヤパンク応急修理キット」が装備されるようになりました。
タイヤパンク応急修理キットはタイヤの損傷が1本のみで、釘が刺さるなどの軽微な損傷の場合に限って使用できます。
タイヤ交換するときのようにジャッキアップしたりタイヤを持ち上げたりすることなく、簡単な作業でパンク修理がおこなえます。
キットは空気つぎ(コンプレッサー)と補修剤がセットになっており、使い方は、パンクしたタイヤに補修剤と空気を注入し、その後ゆっくりと一定距離を走行します。
すると、タイヤの内側に補修剤が広がってパンクした部分を塞ぐことができます。
ただし、タイヤのサイドウォール(側面)が損傷してしまった時やバースト(破裂)など広範囲で損傷しているタイヤには使えません。
また、キットは基本的にタイヤ1本分の使い切りとなるため、2本以上のタイヤがパンクしている場合には補修することができません。
ほかにも注意点があり、キットで補修したタイヤでの長距離走行は不可。早めにディーラーや修理工場などへ持ち込んで、タイヤ交換を行いましょう。
トヨタ「アクア」に純正装備されているキットでは、使用後は急ブレーキ、急加速、急ハンドルを避けことや、走行距離は約100km以内、80km/h以下の速度で走行するように説明されているほか、販売店に持ち込み、パンク補修液注入済であることを伝えるよう案内しています。
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スペアタイヤやタイヤパンク応急修理キットの格納場所は、取扱説明書などに記載されています。
万が一の時に慌てないように、スペアタイヤの交換方法やパンク応急修理キットの使用方法をあらかじめ確認しておきましょう。