ホンダの市販車として唯一の「V型8気筒」エンジンを搭載したモデルとは、一体どのようなクルマなのでしょうか。
■ホンダ史上初!「V型8気筒エンジン」搭載の市販車
「クルマの電動化」が進む昨今、ホンダはハイブリッド車や電気自動車、水素自動車など様々なエコカーをラインナップしています。
一方で、かつての「エンジン屋」としてのイメージも根強く残っており、今でもクルマやバイクの市販車には、単気筒から6気筒まで多様なエンジンを搭載しています。
そんなホンダですが、過去には同社の市販車として唯一の「V型8気筒エンジン」を搭載した“幻のモデル”も存在しました。
それが、1993年に発売された初代「クロスロード」です。
同車は90年前半に日本の自動車市場に吹き荒れていた「RVブーム」に乗るべくホンダがラインナップしたモデルで、現代で言う「本格クロスオーバーSUV」に該当します。
ボディタイプには3ドアと5ドアの2タイプが用意され、そのサイズは全長4465-4535mm×全幅1800mm×全高1950mm。
全長に対して大きめの全幅と全高が特徴で、悪路走破性に優れるラダーフレームと4輪リジッド式のサスペンションを備えています。
パワーユニットは、最大出力180馬力・最大トルク31.8kgmを発揮する3.9リッターのV型8気筒エンジンを搭載。
4速ATのトランスミッションを組み合わせ、駆動方式は常時4輪を駆動するフルタイム4WDを採用していました。
そんなクロスロードですが、突如登場したV型8気筒エンジンやフルタイム4WDなど、RVブームとはいえどうも“ホンダらしくない”雰囲気が漂います。
それもそのはず。このクロスロードはホンダが独自開発したオリジナルモデルいうわけではなく、イギリスの自動車メーカーであるランドローバーから「ディスカバリー」のOEM供給を受け、ホンダで販売していたもの。
基本的にはフロントマスクとエンブレム以外は本家ディスカバリーそのままのクルマだったのです。
これは当時SUVを生産していなかったホンダが、初の自社開発SUVとなる初代「CR-V」を登場させるまでの“つなぎ”として販売したため。
とはいえ、名門ランドローバーの本格SUVらしく当時の先進技術が満載されており、車体はアルミニウム製のボディパネルで軽量化され、さらに低重心化も実現。
また広いキャビンスペースと収納によって、快適かつ実用性に優れたクルマとなっています。
しかし価格が約400万円と、当時としても高額な部類であったことや、海外製のためパーツの規格が日本と異なりホンダの正規ディーラーでも整備が難しかったことなどから、クロスロードの販売は低迷。
後に登場した初代CR-Vの販売が好調となったことや、OEM元のディスカバリーがフルモデルチェンジしたこと、さらにホンダとランドローバー(当時はローバーグループ)が提携関係を解消したことなど複数の要因から、クロスロードは1998年に販売を終了し、その役目を終えました。