NEXCO中日本は、東名高速の日本坂トンネルで実施した「日本坂トンネル防災訓練」の様子を公式SNSで紹介しています。どのような訓練だったのでしょうか。
■きっかけは45年前にあった「大惨事」
NEXCO中日本は、東名高速の日本坂トンネルで実施した「日本坂トンネル防災訓練」の様子を公式SNSで紹介しています。
一体どのような訓練だったのでしょうか。
東名高速の日本坂トンネルは静岡ICと日本坂PAの間に位置しています。かつての東海道の難所である花沢山(および日本坂峠)を貫くものです。長さは2000mを超え、東名の数あるトンネルのなかでも最大規模だといいます。
1979年7月11日 18時40分頃、この日本坂トンネルの下り線で大型貨物車4台と小型車2台が関連する多重事故が発生。これによって大規模な車両火災が引き起こされました。
この火災では、大型貨物車に燃えやすい素材を積載していたことなどで後続車にも燃え広がり、最終的には173台が全焼。死者7名と負傷者2名を出す大惨事になったのです。
日本坂トンネルでは最新の防災設備を採用していましたが、実際には十分に働かず、防災設備本体も焼損していた状況でした。
さらに、トンネル内の異常を知らせる情報板が少なく、火災発生後も次々と後続車が進入。これも被害が拡大した原因のひとつとされています。
さて、NEXCOではこの日本坂トンネルの火災事故を教訓とし、一時的に通行止めにして毎年訓練を実施しているといいます。
訓練はトンネル内及び周辺において車両火災が発生した場合を想定し、消防・警察などの機関と連携した、迅速で効果的な初期活動(避難誘導・規制など)と初期消火ができるよう、体制の整備・確認を行っているということです。
NEXCOの公式Xでは、トンネル内に火災車両を置いて、これにピンポイントでスプリンクラーから水が発射される画像を投稿。
また、消防車や救急車なども集結して実際の車両火災さながらの訓練が行われました。
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ちなみに日本坂トンネルの火災事故後は、長大トンネルにおける火災対策見直し(道路トンネル非常用施設設置基準の施行)のきっかけとなっています。
一方、現代では技術の向上により、火災の早期発見や的確な避難誘導、火災時の避難環境の構築などが可能になりました。
具体的には火災感知のセンサーの精度向上や、トンネル内に設置したカメラによる「交通異常事象検出システム」の発展、ETC2.0による通行車両への注意喚起といったことがあります。
火災の「予防」や「早期発見と対処」と併せ、今回の訓練のように「被害拡大防止」という3つの柱で安全が守られているのです。