毎年、年末年始になると、帰省したりレジャーへ行ったりするクルマで高速道路が大混雑します。そうした際に「ファスナー合流を」と呼びかけられることがあります。では、ファスナー合流にはどんな効果があるのでしょうか。
■なぜ「ファスナー合流」に否定的な人がいるのか
高速道路の合流などで、各高速道路会社は加速車線の先頭まで行って1台ずつ交互に交わる「ファスナー合流」を呼びかけています。
しかし、先頭まで行って合流する行為に対してドライバーからは否定的な反応もあるようです。
では、ファスナー合流にはどんな効果があるのでしょうか。
毎年、年末年始になると、帰省したりレジャーへ行ったりするクルマで高速道路が大混雑します。
高速会社が決めた渋滞は、時速40kmに満たないノロノロ車列が、15分以上にわたって1km以上続く状態。この条件になると、道路の掲示板やカーナビから渋滞情報が発せられることになります。
運転中にそんな渋滞情報を見るのは、覚悟していたとはいえ、やはり気持ちのいいものではありません。
渋滞がおこる原因は、クルマのスピードの乱れです。
たとえば、クルマはわずかな勾配の坂をのぼるときに、自然とスピードが落ちます。
しかし、運転中にそれと気づかずアクセルをそのままにすると、やがて後続車が追いつき速度を調整するためブレーキを踏みます。
こうした現象が次々と後ろのクルマに連鎖していくことで、結果的に本線の流れが滞るのです。
さらに、本線と他道路が交わるインターチェンジやジャンクションでは、本線のクルマが流入車に合わせてスピードを落とすため流れが停滞します。
名古屋高速道路公社の担当者は、合流部の渋滞について次のように話します。
「加速車線のさまざまなタイミングで合流することで、本線を走行する車両が合流車の動きを予測しづらく、ブレーキを踏む回数が増えてしまうことが渋滞の一因として考えられております」
加速車線で多いのは、混雑していてもすぐに本線に入ろうとするクルマです。
なかには、合流するタイミングをみつけられずにまごつく姿もみられます。
さらに、そうしたクルマを追い越し、より先頭で合流しようとするドライバーもいます。
一方、本線では、走行車線の流れが悪いことから、追い越し車線や合流車線以外への車線変更が多発します。
その結果、追い越し車線もクルマのスピードが落ち、合流部周辺が大きく渋滞してしまいます。
■実は効果がある? 各社が推奨する「ファスナー合流」の効果とは
このように本線が渋滞しているときは、合流のしかたも工夫しなくてはいけません。
そのため、高速道路会社がマナーとして提唱しているのが「ファスナー合流」です。
ファスナー合流について、過去にNEXCO中日本は次のように説明しています。
「インターチェンジやジャンクション、サービスエリア・パーキングエリアなどから高速道路の本線に合流する箇所では、渋滞が発生しやすくなります。
このような場所で渋滞が発生している時は、加速車線の先頭まで進み、ゆずりあいの精神で1台ずつ交互に合流する“ファスナー合流”にご協力をお願いいたします。
ファスナー合流とは規則正しく 1 台ずつ交互に(ファスナーのように)合流するものです」
このファスナー合流が初めて呼びかけられたのは2019年、NEXCO中日本による一宮ジャンクションでのテスト導入でした。
こうした呼びかけに対して、現在もドライバーからはの反応は様々です。
たとえば、「加速車線の手前で合流するのがよい」と考える人からは、「本線が混んでいるのに加速車線を進むのは順番抜かしのようで申し訳ない」という声があがっています。また「抜かすのはズルい」と憤る人もいるようです。
しかし、NEXCO中日本の導入例では、実際に先頭まで行ってからの合流行為により渋滞が緩和されているのです。
NEXCO中日本は、一宮ジャンクションにおいて、加速車線の先頭付近までラバーポールを設置することでファスナー合流を促しました。
2か月間運用したところ、接続する名神道と東海北陸道の交通量がほぼ横ばいだったにもかかわらず、所要時間は両道を合わせて約3割減少しました。
こうした結果から、各高速道路各社ではファスナー合流の合理性を認めています。
前出の名古屋高速道路公社の担当者も効果について次のように語ります。
「ファスナー合流により規則正しく1 台ずつ交互に合流することで、交通の流れがスムーズになると考えております」
現在は各所で試行運用が始まっており、道路上で「1.5m先 交互合流」といった表示板が設置されているケースもあります。
実際にファスナー合流するときは、加速車線の途中ではなく、終了する付近までしっかり進んで、先頭から1台ずつ合流するのがポイントです。
また、ファスナー合流はどこでクルマが流入してくるか分かりやすいので、本線のクルマにとっても安全な方法といえそうです。