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最安モデルが540万円! トヨタ「アルファード」なぜ“上級グレード”しか設定されない? 最近のクルマが選択肢を大幅に絞る本当の理由とは

くるまのニュース 2024年12月4日 17時10分

最近のクルマはグレード数が少ないものが多いです。車種ごとにさまざまな理由があるのですが、一体どんな事情が存在しているのでしょうか。

■なぜ最近のクルマはグレード数を減らすのか?

 乗用車には、ひとつの車種でも「グレード」と呼ばれる複数の選択肢が用意されています。
 
 基本的にクルマ選びとは“車種”選びのことを言いますが、グレードによってエンジンの排気量や標準装着される装備が異なるほか価格も違うことから、実際にはグレード選びも重要なポイントです。

 そして、例えば価格が200万円の上級グレードに標準装着される装備が、170万円の中級グレードにはオプションで設定されていることもあります。価格が高くても多くの装備が標準装着される上級グレードを選ぶか、中級グレードに必要なオプション装備を加えるか、という選択の可能な車種も多いです。

 その一方で、このグレードの数が、最近は減る傾向にあります。

 分かりやすい車種はトヨタ「アルファード」でしょう。

 先代のアルファードのパワーユニットは、2.5リッターガソリン、2.5リッターハイブリッド、3.5リッターV型6気筒の3種類が設定され、ボディカラーも7色から選べました。

 ところが現行アルファードのパワーユニットは、2024年12月時点では、2.5リッターのガソリンと同ハイブリッド車のみです。

 姉妹車の「ヴェルファイア」では、2.5リッターガソリンを選べない代わりに2.4リッターターボが用意されますが、いずれも選べるエンジンは2種類です。

 グレードの数も、アルファード・ヴェルファイアともに基本的には2種類で、アルファードの場合、Zにガソリン車とハイブリッド車が用意され、そのほかはハイブリッドを搭載する上級の「エグゼクティブラウンジ」だけ。ボディカラーも限られており、アルファードは3色、ヴェルファイアは2色です。

 アルファードとヴェルファイアのグレードが少ない理由について開発者は「一番大きな理由は納期を抑えるためです」と言います。

 両車ともに人気車ですから、生産規模の割に需要が多く、グレードを豊富に用意すると受注台数がさらに増えます。そこでグレードを上級のみに絞りました。

 価格も高額化し、最も安価なアルファードZでも540万円に達します。

 ちなみにアルファードの福祉車両には、「Gウェルキャブサイドリフトアップチルトシート装着車」が用意されています。

 通常グレードのガソリン車にも安価なGグレードが設定されるという噂がありますが、いつ頃追加されるのかはわかっていません。

 アルファードとヴェルファイアがグレードの数を減らした一番の目的は納期の短縮ですが、生産や販売効率の向上にも役立ちます。

 グレードが多いと、需要が分散されて1グレード当たりの販売台数が減り、量産効率も低下します。

 そこで効率を高めて受発注もシンプルにするため、グレードを減らすことがあります。

 例えばインドから輸入されるスズキ「フロンクス」は、日本仕様は2WDと4WDが設定されますが、グレードは1種類のみ。

 マイルドハイブリッドを搭載して、カーナビなども標準装着され、実質的に最上級グレードだけの設定にしました。

インドから輸入して販売するスズキ「フロンクス」

 フロンクスのような日本メーカー製の輸入車は、全般的にグレードが少なく、タイで生産される日産「キックス」は実質1グレード、同じくタイ生産の三菱「トライトン」も2グレードです。

 インド製のホンダ「WR-V」は3グレードありますが、1.5リッターガソリンの2WDに限られます。

 輸入車はグレードだけでなく、生産ラインで装着されるメーカーオプションも少数に限られ、販売店で取り付けるディーラーオプションのみにしている車種もあります。

 効率の向上では、パワーユニットの種類を減らす動きも活発化しています。先に述べたアルファードも、パワーユニットを先代型の3種類から2種類に減らしました。

 日産ではガソリン車を用意せず、ハイブリッドの「e-POWER」専用車が増えていて、先代までガソリン車を用意していた「ノート」や「エクストレイル」では、現行型はe-POWERだけです。

 クルマの生産状況については、以前は半導体が不足していましたが、最近はこの供給状態が好転しています。その代わり原材料費や輸送費が高騰して、車両の生産や販売によって得られる利益が減る傾向にあります。

 つまり依然として生産や販売の効率を高める必要があり、全般的に利益の少ない安価なグレードを整理する傾向が見られます。

 この背景には、装備がシンプルで安価なグレードより、装備を充実させた高価なグレードの方が、メーカーにとって設定しやすい事情もあります。

 装備のコストは、ユーザーがメーカーオプション価格などから想像する価格よりも大幅に安いのです。

 従って装備をプラスした上級グレードは、最廉価や中級のグレードに比べると、少ないコストアップで高い価格を実現でき、また利益が大きいため、原材料費や輸送費が高騰する中では設定しやすい事情もあるというわけです。

※ ※ ※

 逆に日本車で一番儲からないクルマは、軽トラックの最廉価グレードです。

ダイハツ「ハイゼットトラック」の最も安いグレードは90万2000円で、ダイハツ「タント」の売れ筋である「カスタムX」の半額以下です。

 販売店では「ハイゼットはまったく儲かりません。しかしお客様との関係は大切で、車検、点検、保険などの取り扱いもできるため、もちろんメリットはあります」と述べています。

 このようにグレード数が減っている背景には、納期の短縮、生産や販売の効率化、日本メーカー製輸入車の増加といった事情があります。

 しかし価格を含めてユーザーのニーズに綿密に応えるには、複数のグレードを用意することも大切です。

 日本の物流を支える軽トラックのハイゼットトラックやスズキ「キャリイ」が、ボディ形状や装備の異なるグレードを豊富に用意することを見ても、グレードの大切さが良くわかります。

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