米国トヨタは、86がベースの5ドアワゴン「サイオンX86Dコンセプト」を公開していました。これはどのようなクルマだったのでしょうか。
■トヨタ「86」とは?
トヨタ「86(ハチロク)」は、スバルとの共同開発で誕生したライトウェイトスポーツカーで、日本のみならず北米でも販売され高い人気を博しています。
86は「東京モーターショー2011」でプロトタイプが出展された翌年、2012年2月に初代がデビュー、現行モデルは2021年10月にフルモデルチェンジを受け、車名が「GR86」となった2代目となります。
車名の86は、1983年にデビューした4代目「カローラ レビン」「スプリンター トレノ」の1.6リッターDOHCエンジンを搭載したモデルの型式「AE86」に由来します。
AE86は、FRのライトウェイトスポーツカーで「ハチロク」の通称で呼ばれています。特に人気に火が付いたのは、生産終了後の1995年7月から連載がはじまった漫画「頭文字D(イニシャルD)」の主人公が乗っていたことからで、それ以降、中古車市場では価格が高騰、今でも高い人気を維持しています。
GR86のボディサイズは、全長4265mm×全幅1775mm×全高1310mm、車両重量1.2トン台という軽量コンパクトなボディと低重心設計を持つ2ドアFRスポーツカーです。
そのスタイルは、スポーティーでアグレッシブなフロントフェイスに低い位置にあるボンネット、流れるようなクーペスタイルが特徴的です。
エンジンは、スバルの水平対向エンジンを採用し、そのエンジン特性を活かした低重心で優れたハンドリング性能とドライビングの楽しさを提供しています。
■まさかの”86ワゴン”「X86D」とは?
北米でも人気が高い86、トヨタのアメリカ法人は、“Hidden Gems(隠れた宝石)”と題して、お蔵入りになっていた2012年製作のコンセプトモデル「サイオン X86Dコンセプト」の画像を公開していました。
「サイオン」とは、トヨタは2003年から2016年まで北米で展開していた、若年層をターゲットにしたブランドです。86のデビュー当時、北米ではサイオンブランドで「FR-S」の車名で販売されていました。2016年のブランド廃止に伴い、車名は86に変更されました。
X86Dコンセプトは、トヨタがアメリカ市場に合ったデザインを開発するため、1973年にカリフォルニア州に設立したデザイン拠点「キャルティデザインリサーチ」が手掛けたものです(キャル=Californiaの頭3文字)。
キャルティデザインリサーチの代表作には、2代目「セリカ」(1977〜81年)、初代「エスティマ」(1990〜2000年)、3代目「ソアラ」(1991〜2000年)、初代「プリウス」(1997〜2003年)、「FJクルーザー」(2010〜2023年)などがあります。
コンセプトモデルでは、2017年発売のレクサス「LC」の原型となった「LF-LC」、2019年発売の「GRスープラ」の原型「FT-1」などがあります。
このような経歴をもつキャルティデザインリサーチが、設立50年となった2023年の記念企画の一環として、お蔵入りとなった5モデルの秘蔵画像を公開、そのうちの1つがX86Dコンセプトでした。
X86Dは、グラマラスなボディラインが特徴的な5ドアハッチバックで、水平対向エンジン搭載車しかなし得ない低いボンネットが印象的です。
キャルティデザインリサーチは、真横や斜め後ろから見たときのスタイルは、アメリカで根強い人気を誇る往年のホットロッドをイメージしたと述べていました。
このユニークなスタイルのX86Dは、FR-S(当時の販売名、日本では初代86)のプラットフォームを流用したシューティングブレークで、蝶ネクタイ状の黒いグラフィックも目を引く、非常に個性的なコンセプトモデルでした。
「強すぎる個性ゆえに、お蔵入りしてしまったのでは?」という背景が容易に推測できますが、試みとしてはとても興味深い”幻の86ワゴン”でした。