2024年12月5日に福岡県警は、駐車違反の「放置違反金」を滞納した男性2人の自宅を捜索し、それぞれ現金約1万8000円を差し押さえたと公表しました。このような差し押さえは九州の警察では初めてのことですが、一体なぜおこなわれたのでしょうか。
■自分は駐車違反をしていないのに…「使用者責任」を問われるケースも
先日、福岡県警はクルマの放置違反金を滞納した男性2人の自宅を捜索し、現金を差し押さえたと発表しました。
このような差し押さえは九州の警察では初めてのことですが、一体なぜおこなわれたのでしょうか。
福岡県警は2024年12月5日、駐車違反の「放置違反金」を滞納した男性2人の自宅を捜索し、それぞれ現金約1万8000円を差し押さえたと公表しました。
差し押さえを受けたのは福岡県中間市に住む41歳の男性と古賀市に住む24歳の男性で、いずれも駐車違反をしたクルマの使用者でした。
まず中間市の男性は2022年7月、北九州市内の歩道上に乗用車を放置した件で警察が放置違反金を納付するよう命じていましたが、2年間にわたる再三の督促に応じなかったため自宅の捜索がおこなわれました。
同捜索で警察は、放置違反金1万5000円と延滞金3428円の合計1万8428円を差し押さえています。
次に古賀市に住む男性についても、放置違反金を1年7か月にわたって滞納したことで自宅の捜索がおこなわれ、放置違反金1万5000円と滞納金2694円を合わせた1万7694円が差し押さえられました。
実はこのように放置違反金滞納者の自宅を捜索し、現金を差し押さえるのは九州の警察で初めての事例です。
そもそも駐車違反で取り締まりを受けた後の手続きは、運転者が警察に出頭するかどうかで次のように異なります。
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【運転者が警察に出頭した場合】
1 駐車違反として運転者に交通反則切符(青切符)と反則金の納付書が交付される。
2 運転者が反則金を納付すれば、駐車違反の処理が終了。
警察に出頭すると上記のように青切符を切られ、駐車違反の状況に応じた違反点数が累積するものの、手続き自体はすぐに終了します。
【運転者が警察に出頭しない場合】
1 車両の使用者(車検証に記載されている使用者)に対して「弁明通知書」と放置違反金の「仮納付書」が送付される。
2 期限内に放置違反金を仮納付しなかった場合、使用者に「放置違反金納付命令書」と放置違反金の「納付書」が送付される。
3 上記2の段階でも放置違反金を納付しなかった場合、使用者に「督促状」が送付される。ここで、放置違反金に延滞金と督促手数料を加えた金額を納付すれば手続きは終了。
4 上記3の段階でも納付せず滞納を続けていると、強制的に財産を差し押さえられるほか、自動車の車検が拒否される可能性がある。
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上記4にある「差し押さえ」の手続きは、道路交通法第51条の4第14項と地方税法、国税徴収法などに規定があり、今回福岡県警が実施した現金の差し押さえも、これらの法令に基づいておこなわれた処分です。
仮にクルマを他人に貸していて、その人が駐車違反をした後警察に出頭しない、あるいは出頭しても反則金をおさめなかった場合はクルマの「使用者」に責任を問われるため、他人にクルマを貸す際には十分に注意しましょう。
また埼玉県警では現金だけでなく、ビットコインといった暗号資産や自動車、生命保険などの資産も差し押さえの対象としており、2024年9月17日から30日までの間に放置違反金の滞納者である男女31人に一斉徴収をおこなっています。
たとえ現金を持っていなくても、それ以外の資産で差し押さえられるケースは少なくないといえるでしょう。
このたび福岡県警がおこなった差し押さえに関してはインターネット上で「どんどんやって欲しい」という声のほか、「延滞金が安すぎ」「差し押さえに動員した捜査員の人件費も支払わせたら良いのでは?」などの意見が寄せられました。
警察は「逃げ得を許さない」というスタンスを明確にしており、九州の警察で初めて放置違反金に関する差し押さえがおこなわれたことを契機として、今後放置違反金の滞納者に対する措置がより厳しくなることも想定されます。
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駐車違反の放置違反金を滞納していると、資産が差し押さえられたり自動車の車検を拒否されたりするおそれがあります。
また一時不停止やスピード違反といった交通違反の反則金に関しても、納付せずにいると最悪の場合逮捕されるため、すみやかに納付することが大切です。