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ヤリスクロスサイズの「小型SUV」登場! 世界のベンチマークを超えた「new T-Cross」 何が凄いのか

くるまのニュース 2024年12月11日 20時25分

フォルクスワーゲン ジャパンは、2024年10月1日にコンパクトSUV「T-Cross」発売しました。では、実際に乗ってみるとどのような印象なのでしょうか。

■時には世界中でベンチマークされている「ゴルフ」を超える販売台数も記録

 2015年に発覚した排ガス規制逃れで状況をキッカケに、BEVシフトの方針を掲げたフォルクスワーゲン(VW)。
 
 しかし、現時点では思惑通りに進んでおらず軌道修正を図っている最中です。
 
 この経営戦略の影響を受けたのは、その原資を稼いでいた内燃機関モデル。
 
 これまでのVWは大衆ブランドでありながらプレミアムブランド並みのクオリティが特徴でしたが、ここ数年のプロダクトはコストカットを強く意識するモノが多かったのも事実です。
 
 落ちた信頼はプロダクトで示すしかありませんが、そんな中登場したモデルが大幅改良されたVWの末っ子クロスオーバーSUVの「Tクロス」になります。

後方から見ると印象的なテールライトのVWの末っ子クロスオーバーSUVの「Tクロス」

 2020年に日本に導入されたTクロスは、2020年から3年連続で輸入SUV登録台数ナンバー1に輝くモデルで、時には世界中でベンチーマークされている「ゴルフ」を超える販売台数も記録。

 その魅力はまるで日本市場を見据えたかのようなパッケージングですが、大幅改良でどのような進化したののでしょうか。都内近郊で確認してみました。

 エクステリアは前後デザイン(バンパー、灯火類)のアップデートに加えて、3色のカラフルな新色が追加されています。

 VW自身は「よりSUVライクにした」と語っているものの、カジュアル過ぎた印象の従来モデルに対して、VWの良さである“品格”や“落ち付き”が増したように感じました。

 Tクロスのボディサイズは全長4140mm×全幅1760mm×全高1580mmとなり、日本で売れているトヨタ「ヤリスクロス」の全長4200mm×全幅1765mm×全高1590mmと近しいサイズで、取り回しのしやすさは不変です。

 ただ、欲を言えば全高(1580mm)は日本のタワーパーキング対応(1550mm)だと良かったかもしれません。

インテリアは以前のVWクオリティに戻った?

 インテリアはオーソドックスなデザインは不変ですが、目に見える部分がハードプラスチック→ソフトパッドの変更により質感はレベルアップと言うか、以前のVWクオリティに戻りました。

 センターのディスプレイはタブレットタイプに進化したものの、ナビゲーションは熟知しても使いこなせない大問題児なので、スマートフォン連携を活用したほうがストレスはありません。

 居住性の高さは従来モデルと変わらず。特にリアシートは着座位置がフロントシートより高めに設定されている上に、14cmのシートスライド機構付なので見た目以上に広々。

 ラゲッジルームは通常で455L、後席を全て倒すと1281Lとクラストップで、ファミリーカーとしても使える多様性が備えられています。

 パワートレインは直列3気筒1.0Lターボ(116ps/200Nm)+7速DSGと従来モデルと同じですが、スペックを細かく見ると最高出力発生回転数が5000~5500rpm→5500rpmに変更されています。

■実際にTクロスに乗ってみると? 印象は?

 実際に走らせると過給は始まる2000rpm前後までの線の細さは変わないものの(48V MHEVが欲しい)、従来モデルよりも振動/ノイズは抑えられているのと、発進時や微速コントロールのDSG制御のプラッシュアップにより、常用域のドライバビリティは高められています。

 ただその一方、全域でパンチが薄れたのと、DSGならではの小気味良さが抑えてしまった印象を受けました。

 関係者に聞くと「最新の排ガス規制対応の影響は少なからずある」と。気になる燃費は簡易計測で都高速を普通に走ってカタログ燃費(17.0km/L)を超える20km/L前後を記録。ただし、プレミアムガソリン指定なのをお忘れなく。

 フットワークは公式なアナウンスはありませんが、全体的に“まろやか”になった印象です。

 乗り心地も従来モデルで感じた常用域でヒョコヒョコ揺すられる動きは抑えられ、高速道路でのフラット感の高い落ち着きの良さはクラスレス。

 ハンドリングは決して機敏ではありませんが、素直な操舵特性と挙動の解りやすさ、骨太なシッカリ感などは、同じプラットフォーム(MQB A0)を使うポロよりも優れている感じたくらい。

 個人的には従来モデルの18インチは見た目重視だと思っていましたが、新型は総合的に見てそれをシッカリと履きこなせるシャシーに熟成されたと判断していいでしょう。

 ちなみに高速道路では同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist」を使ってみましたが、白線認識や前車両捕捉の精度は他社のそれと比べると今一つ。

 この辺りは別の日に乗った6代目となる新型パサートでは全く気にならなかった部分なので、更なるアップデートを期待します。

2020年から3年連続で輸入SUV登録台数ナンバー1に輝くTクロス

 更に驚きなのは価格設定です。ベーシックな「ACTIVE」と中間の「Style」は装備を拡充しながらも微増に留め、上級のRラインは何と10.3万円の値下げ。

 もちろん同クラスの国産コンパクトクロスオーバーと比べると高めなのは事実ですが、その差を抑えようとしている努力は評価すべきでしょう。

※ ※ ※

 そろそろ結論にいきます。

 新型Tクロスは大幅改良レベルですが、VWの強みでもあり魅力であった「大衆ブランド+α」を再び取り戻した一台に仕上がっています。

 惜しむべきは登場時から指摘しているAWDモデルが本国仕様も含めて未だに設定がない事くらいです。

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