Infoseek 楽天

高すぎた「クルマのガソリン価格」引き下げへ! 目的のない「暫定税率」廃止が決定に 「トリガー条項」「補助金」はどうなる? 実際「どれくらい安く」なるのか

くるまのニュース 2024年12月12日 13時30分

自民党・公明党・国民民主党がいわゆる「103万円の壁の引き上げ」と「ガソリン暫定税率の廃止」について合意しました。このうちクルマユーザーにとっては「ガソリン暫定税率の廃止」は大きなニュースですが、今後の生活はどう変わるのでしょうか。

■「ガソリン暫定税率廃止」の大ニュース どうなるのか

 クルマユーザーに朗報です。自由民主党、公明党、そして国民民主党は2024年12月11日の幹事長会談で「103万円の壁を178万円に引き上げること」と「ガソリン減税(ガソリンの暫定税率の廃止)」について合意したと発表しました。
 
 今後、与党税制調査会、財務省、総務省などによる調整があると思われますが、大筋としてガソリンなどのクルマの燃料価格は下がる見込みとなりました。

 では今回、クルマユーザーにとって身近な、ガソリンなど燃料の減税が今後、ユーザーの生活にどのような影響を与えるのかについて考えてみたいと思います。

 まず、自動車関連諸税と呼ばれる税金について整理しておきましょう。

 クルマを取得(購入)する際、地方税として「自動車税の性能環境割」(旧:自動車取得税)、および国税である「消費税」がかかります。

 そして、クルマを所有すると、地方税として毎年「自動車税」(軽自動車は『軽自動車税』)を納め、さらに車検時には国税として「自動車重量税」を納める義務があります。

 これらの税金をひっくるめて「車体課税」と呼びます。

 さらに、電気のみを使うBEV(バッテリーEV)や、水素を使うFCEV(燃料電池車)以外のクルマでは、走行するためにガソリンや軽油(ディーゼル燃料)を使いますが、これらの燃料価格にも、各種の税金がかかっています。

 これが「燃料課税」です。

 具体的には、国税として「揮発油税」「地方揮発油税」「石油ガス税」また、地方税として、「軽油引取税」がかかっています。

 税額は、ガソリンが、1リットルあたり揮発油税(48.6円)と地方揮発油税(5.2円)の合計で53.8円。軽油の場合、1リットルあたり軽油引取税の32.1円です。

 このうち、ガソリン53.8円のうち「旧暫定税率」と呼ばれるものが25.1円。軽油では、32.1円のうち17.1円が該当します。

■そもそも暫定税率とは何だったの?

 今回の3党幹事長会談の合意書に記載された、「ガソリンなどの暫定税率の廃止」とは、この25.1円(ガソリン)と17.1円(軽油)を廃止し、ガソリンや軽油の小売価格を引き下げる効果があります。

 では、この旧暫定税率とは、どういうものだったのでしょうか。

「ガソリン暫定税率」は存在意義が不明だった

 そもそも、クルマの車体課税と燃料課税は、日本が戦後の高度成長期に向けて、1954年の第1次「道路整備計画」の中で制定されたものです。

 全国の道路を舗装・保守・点検するなど道路整備費用を、道路を使うクルマユーザーから徴収することが目的でした。

 そして、1973年からの「第7次道路整備計画」を進める際に、予算確保の副次的な財源として始まったのが「暫定税率」という概念でした。

 道路整備計画はその後も5年毎に改定されていたのですが、この暫定税率はそのたびに設定が続けられ、2000年代の民主党政権で一時的に期限切れになったことを除けば、今に至るまで存続しています。

 さらに、2008年に政府と与党が、道路特定財源の「一般財源化」を決定し、翌2009年に道路特定財源制度を廃止しました。

 つまり、車体課税や燃料課税の使い道が、当初の目的だった道路整備以外になったというわけです。暫定税率も同じく「道路整備計画」の財源確保のために、追加で設定されたものなので、いよいよ存在意義があるのかという疑問も呈されています。

 そうした批判もあってか、2010年からは「トリガー条項」が設定されています。

 トリガー条項とは、ガソリンの全国平均小売価格が、1リットルあたり160円を3ヶ月連続で超えた場合、暫定税率分を一時的に停止し、また130円を下回ると暫定税率が復活するというもの。軽油でも同様の措置となります。

 ところが、東日本大震災の発生に伴い、燃料課税を復興財源としても活用することを目的にトリガー条項が「凍結」され、その状態がいままで続いている状況です。

 補足すると、自動車重量税については、2010年と2012年に暫定税率の一部が引き下げられています。

■いつから開始? 今後の予定は

 こうした燃料課税についての概要を聞けば、「暫定税率が廃止されるのは当然」と思う人が少なくないでしょう。

ガソリン価格が他要素からの影響が大きいため注視する必要性も

 ただし、課題は財源です。

「103万円の壁の引き上げ」についての議論でも同様ですが、国や地方自治体の歳入が減ると、その分をどうやって工面するのかが課題になるのは当然です。

 歳入が減れば、国民や地域住民の生活を支える、公的な歳出を見直す必要も出てきます。

 また、暫定税率の廃止における財源の問題は、車体課税でも浮き彫りになっています。

 自動車メーカーなどでつくる業界団体の日本自動車工業会は2024年10月、車体課税の抜本的な見直し案を公表し、これを事実上のたたき台として、与党税制調査会、財務省、総務省による議論が進んでいるところです。

 年末までに公開される予定の、令和7年度税制改正大綱の中で大筋を明記し、来年末の令和8年度税制改正大綱までに詳細を決め、令和8年(2026年)4月からの実施を目指すとしています。

 では、こうした国のスケジュールの中で、いわゆるガソリン減税(ガソリンなどの暫定税率の廃止)をどこに盛り込むのでしょう。

 本来、車体課税の抜本的な変革と燃料課税の変更は、同じ時期に同じテーブルの上で議論されるのが筋だとは思うのですが…。

 いずれにしても、ガソリンや軽油の価格は、原油価格によって大きく上下することに変わりはありません。

 日本は原油のほとんどを海外からの輸入に頼っているため、原油の価格変動に対して終始受け身の状態が続きます。

 その上で、景気対策として現在、「燃料油価格激変緩和補助金」が数兆円規模で導入されている状況です。直近(2024年12月12日〜18日)では、レギュラーガソリン全国平均価格189.7円に対して14.3円の抑制効果が出ています。

 この補助金についても、来年度予算では縮小する方向との報道があります。

 ガソリン減税を含めて、結果的にガソリンや軽油の小売価格はこれからどう変化するのか。今後の国の動向を注視していきましょう。

この記事の関連ニュース