「自動車盗難」の件数は年々減少傾向にあるものの、依然として無くなっていません。狙われるクルマや手口にはどのような特徴があるのでしょうか。また、盗難防止にはどのような対策が有効なのでしょうか。
■まだまだ減らない自動車盗難の実態
「自動車盗難」の件数は年々減少傾向にあるものの、依然として無くなっていません。
過去には国会議員の「ランドクルーザー」が盗難されることもありましたが、狙われるクルマや手口にはどのような特徴があるのでしょうか。
また、盗難防止にはどのような対策が有効なのでしょうか。
警察庁の発表したデータによると、自動車盗難の認知件数は2003年をピークに減少傾向が続いており、2023年は5762件とピーク時の1割以下まで抑えられています。
一方で、埼玉県、千葉県、茨城県、神奈川県、愛知県の5県だけで「全国の認知件数の55.6%」を占めるなど、「特定の地域では多く発生している」現状も浮かび上がってきています。
車名ごとの盗難台数では、「アルファード」が最も多い700台、「ランドクルーザー」の643台、「プリウス」の428台で、上位5車種をトヨタ車が占めています。
新しい年式のクルマのほかにも、2000年以前に製造された古い年式のクルマや、トラックを狙った犯行も発生しているといいます。
盗難場所では全体の39.8%で一般住宅が最も多く、次に駐車場の26.0%と続きます。
盗難の手口はさまざまですが、ドライバーがクルマから離れたわずかな時間に、キーがついたままのクルマを狙われるケースもあります。
ほかにも「窓の隙間から針金を差し込む」「窓ガラスを割る」などして強引に侵入する手口や、「自宅に侵入しキーを入手する」という事例もあるようです。
近年では新しい手口が増えてきているといい、そのひとつが「リレーアタック」です。
最近では多くのクルマがスマートキーを採用しており、クルマのキーをいちいち車体のカギ穴へ差し込まなくても、「カバンやボケットに入れたまま」ロック解除したりエンジンをかけたりすることができます。
これはキーが発する微弱な電波を車体が検知するという仕組みですが、これが悪用されてしまうのです。
「リレーアタック」は、この微弱な電波を、特殊な機器を使って遠隔で拾い、電波を増幅してリレー形式で複数人で中継しながらクルマまで繋いで解錠する方法です。
自宅でキーを保管していても、室内の電波を拾って屋外のクルマを解錠されてしまうわけです。
■まだある!驚きの「ハイテク自動車盗」の手口
さらに最近増えているのが「CANインベーダー」という手口です。
これはモバイルバッテリーのような小型の端末をフロントバンパーの内側などにある配線に接続し、「CAN」という車載システムに侵入することで、ドアロックの解除やエンジンの始動が可能となるものです。
リレーアタックやCANインベーダーの手口は、犯罪グループが組織的に行っていることもあり、盗んだクルマは海外に輸出されたり、解体した他の車両と合体(ニコイチ)させて販売させたりする例があります。
それではこういった最新の手口も含めて、クルマの盗難にはどのような対策をすればいいのでしょうか。
まず、クルマから離れる時はわずかな時間であっても必ずロックをかけるのが、基本中の基本です。
ほかに駐車中の対策としては、盗難犯に「このクルマを盗むには手間や時間がかかり、リスクが高い」と感じさせることです。
例えば、自宅駐車場で保管している場合は、センサーライトや防犯カメラの設置のほか、シャッターやゲートを設置して施錠することが有効です。
もう少し安価で手軽にできる対策としては、クルマそのものにロックを追加する方法で「ハンドルロック」や「ホイールロック」などがあります。
ナンバープレートやタイヤ、ホイールなどの部品盗難には、盗難防止ナット・ボルトを使用してしっかりと固定するといいでしょう。
また、リレーアタックに対しては、クルマのキーを玄関などで保管せず「電波を遮断できるケース」に入れて保管するというのも有効です。
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クルマが盗難に遭うと金銭的なダメージも大きく、生活も不便になってしまうかもしれません。
盗まれないような対策を取るとともに、盗難に遭ってしまった場合に備えて車両保険に加入するなど、複数の備えをしておくことが大切です。