2020年6月に施行された道路交通法の一部改正により、「あおり運転」への厳罰化が始まりました。しかし注意しているつもりでも、知らず知らずのうちにあおり運転をしている(させている)ケースも少なくないといいます。どういうことでしょうか。
■「あおり運転」は「妨害運転罪」に相当する!
2020年6月の道交法一部改正で、いわゆる「あおり運転」の厳罰化が始まって4年以上が経過しました。
多くの報道がおこなわれても、なおも続いている原因のひとつとして、「知らず知らずのうちに」あおり運転となってしまうケースが考えられます。
SNSなどで、あおり運転の被害を受けた様子を収録したドライブレコーダー映像が公開され、たびたび話題になります。
なかでも近年話題となったのは「知らず知らずにあおり運転になってしまっていた」件です。
2024年9月にトヨタは、あおり運転においてあおった側・あおられた側の両者にスポットライトを当てるというユニークな動画をアップし注目されました。
報道陣が集まり、双方の言い分や感情が激しくぶつかる「あおり運転囲み取材」をおこなう様子とともに、意外に知られていないあおり運転の実態データとして「8割もの人があおった自覚がない」ことに対し、視聴者に問いかけました。
まずはあおり運転とはなにか、定義のおさらいをしてみましょう。
大きく分けて、「著しい交通の危険」と「交通の危険を生じさせるおそれ」に該当する「妨害運転罪」を指します。
まず著しい交通の危険には、10の違反が「一定の違反行為」としてあおり運転に該当するものとしています。
具体的には、「通行区分違反」「急ブレーキ禁止違反」「車間距離不保持」「進路変更禁止違反」「追越違反」「減光等義務違反」「警音器使用制限違反」「安全運転義務違反」「最低速度違反」「高速自動車国道等駐停車違反」が挙げられます。
これらの“著しい交通の危険”が認められた場合、「道路交通法第117条の2」により、違反点数35点・欠格期間3年の免許取消(前歴や累積点数があると最大10年の欠格期間)・5年以下の懲役または100万円以下の罰金に該当する可能性があります。
同様に、“交通の危険を生じさせるおそれ”に対して「道路交通法第117条の2の2」では、違反点数25点・欠格期間2年の免許取消(前歴や累積点数があると最大5年の欠格期間)・3年以下の懲役または50万円以下の罰金とあります。
こうした著しい交通の危険や、交通の危険を生じさせるおそれ、いずれも違反する者が妨害運転罪にあたります。
■注意力散漫な運転が「あおり運転」を誘発しているケースも!?
さて、知らず知らずにやってしまうあおり運転として思い浮かぶものに、“車間距離不保持”があります。
これは近年、急速に装備化が進んだ「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」を作動させて高速道路を走行し、車間距離設定を最短にしているときに、発生する恐れがあります。
ACCはぴったりと車間距離を一定に保つため、短い車間距離を設定したまま高速道路を走ると、前走車は後ろにぴったりとくっついて「あおられた」と思ってしまいがちです。
そして減光等義務違反も、知らず知らずにやってしまう恐れがあります。
近年のクルマは、かつてのハロゲンヘッドライトよりも明るく広範囲を照射できるLEDヘッドライトの標準装備化が進みました。
ロービームでも明るいので、ハイビームにしたまま走行しても気が付きにくくなってきたことに加え、オートハイビームの搭載も進んだため、自らいちいちロービーム・ハイビームの切替をしなくなったことも、ついうっかりハイビームのまま走行してしまう要因となっています。
また、年末年始にありがちなのが、乗車定員目いっぱい人を乗せ、ラゲッジルームに重たい荷物を載せていて、通常のロービームで走っている場合です。
もちろん、この行為自体は何も悪いことをしていないのですが、たくさん人と荷物を乗せるとクルマが後ろに沈み込み、結果としてヘッドライトが上を向いてしまうのです。
前走車にとって、後ろが沈み込んだ後続車のヘッドライトはまるでハイビームされているかのように非常にまぶしく映り、結果として「あおられた」と感じてしまうのです。
光軸調整が付いたクルマに乗っている場合は、適切に調整することに心がけましょう。
パッシングやクラクションも要注意です。
道を譲るつもりでパッシングやクラクションを鳴らしたとき、相手が「あおられた」と感じてしまうことがあります。状況によっては、パッシングやクラクションでは意思の疎通が難しい場合があります。
そうならないようにするための方法のひとつは「アイコンタクト」です。
譲ってあげたいクルマのドライバーとアイコンタクトをすれば、パッシングやクラクションの意味が相手にも伝わりやすくなります。
逆にいえば、アイコンタクトできない状況でパッシングやクラクションを鳴らすことは、しないほうが無難かもしれません。
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高速道路を走行中、後続車からあおられたと感じた人はいませんか。その場合、自身の運転も顧みる必要があります。
追越し車線は、文字通り「追越し」のための車線で、追越しが済んだら速やかに走行車線にもどる必要があります。
無意識なままいつまでも留まっていると、「車両通行帯違反」の恐れがあります。
これは多くのドライバーが知らず知らずにやっている光景をよく見かけます。
あおり運転に遭遇しないためにも、ドライバーすべてがこのことを強く意識する必要があるでしょう。