小型モビリティの有用性が注目されているなか、マイクロモビリティシステム「マイクロリーノ」は注目される1台です。どのようなモデルなのでしょうか。
■独特な出で立ちは「現代版イセッタ」とも
小型モビリティは、普通車ほどのサイズは必要ないものの、狭い都市部や自力での移動が難しい郊外、公共交通機関が撤廃した過疎地域などでの有用性が期待されています。
特に、EVシフトが進む欧州ではこうした小型モビリティの開発がすすんでおり、スイスのマイクロモビリティシステムによる「マイクロリーノ」も、注目の1台です。
マイクロリーノは2016年に発表された1ドア2人乗りの小型モビリティです。
登場の背景として、狭い都市部などで環境負荷の少ないモビリティが求められるなかで、クルマ(普通車)での移動は無駄が大きく、たくさんの乗車定員も必要ないということから開発がスタートしたといいます。
当初、2018年の市販化が目指されていましたが、2022年にようやく市販モデルの「マイクロリーノ2.0」が発売されました。
ボディサイズは全長2519mm×全幅1473mm×全高1501mm。極めて小さいサイズにより、最小回転半径はわずか3.7mを実現。旧い町並みが残る欧州の都市でも、非常に取り回しやすくなっています。
一方で、小型でありながらも、ライトウェイトスポーツカーにあるような簡素なチューブラーフレームではなく、スチールとアルミニウム素材を採用しており、安全性能と耐久性も高めています。車両重量は496kgです。
なお、エクステリアデザインは1950年代の超小型車「イセッタ」をオマージュ。
イセッタとは、1953年にイタリアのイソ(Iso)社が発表した全長2.3mのマイクロカーで、のちにBMWが生産権を獲得し多数を販売。日本でも「BMWイセッタ」として比較的知られており、少数が存在します。
このイセッタの大きな特徴として、フロントほぼすべてが1枚のドアで冷蔵庫のようにパカッと開く点、触覚のようにサイドにちょこんと佇むキュートなヘッドライトが挙げられますが、マイクロリーノもこうした特徴を現代的にアレンジしつつ完全にオマージュ。
これらのデザインやコンセプトから「イセッタの復活」とも称されました。
インテリアも移動手段という点を最重視したことで必要最小限にまとめており、ドアトリムとダッシュボードを兼ねるパネルにバーとステアリングコラム、小型の液晶メーターが備わる程度です。
パワートレインは17馬力のモーターと最大15kWhのバッテリーを採用。
ただし、航続可能距離は最大228km(WLTPモード)と通勤や買い物、隣町への移動などでは必要にして十分で、最高速度も90km/hを確保。最小限といいつつも、ある程度のスペックは確保しており、比較的余裕をもったものとなっています。
マイクロリーノの欧州での価格は1万7690ユーロ(約281万円)から2万2690ユーロ(361万円)。
現在、スイスやオランダ、英国で販売しており、北米では2024年終盤への投入が予定されていますが、日本国内への投入に関しては一切アナウンスされていません。
しかし、日本においても深刻な高齢化のほか、地方の過疎化や路線バスの廃止などといった課題が山積しているなか、山村部や瀬戸内海などの離島といった日本特有の地形から、日常生活での移動手段の確保が急務となっています。
そうした状況で、最新モデルによる高い安全性や、環境に優しいEVユニットを備えた小型モビリティの有用性は大いに注目を浴びています。
マイクロリーノの日本投入にも期待したいところです。