2024年12月18日、ホンダは2025年発売予定の新型クーペ「プレリュード」(プロトタイプ)と、搭載される次世代技術について世界初公開しました。新型プレリュードに速攻試乗したカーライフジャーナリストのまるも亜希子氏が、詳しく紹介します。
■「次世代e:HEV」と「S+ Shift」がもたらす「操る喜び」とは
ホンダは2024年12月18日、2025年発売予定の新型クーペ「プレリュード」(プロトタイプ)と、搭載される次世代技術を世界初公開しました。
新たな「操る喜び」を体感できるという新技術とは、どのような仕組みなのでしょうか。
ついに扉を開けた、新時代のホンダらしさ。“第二の創業期”と自ら呼ぶほどの大変革期だからこそ、今一度ホンダらしさとは何か、新たに提供できる価値とは何かを愚直なまでに突き詰めて誕生した「操る喜び」を垣間見せてくれたのが、今回クローズドコースで試乗することがかなった新型プレリュード プロトタイプです。
年明け早々の「東京オートサロン2025」に出展されるというアナウンスがあったばかりで、気になっている人も多いのではないでしょうか。
外観こそカモフラージュで覆われていましたが、ロー&ワイドなクーペシルエットの堂々たる存在感は、やはり遠目からでも目をひきます。
ドアを開けると、今回の試乗車は左ハンドル仕様。2+2シーターの室内は新開発された大きなフロントシートと、長身の人でも座ることができるリアシートが往年のプレリュードから継承されています。
クッションは強めのハリで身体を支えてサイドからほどよく包み込んでくれるような、スポーティだけど上質感のある座り心地。
太めのステアリングに手を添え、ボタンタイプのシフトを押そうとすると、そこに見慣れぬ「S+」の文字が大きく入った丸いボタンが置かれていました。
それこそが今回、このプレリュードの量産車を皮切りに「次世代e:HEV(イーエイチイーブイ:ホンダ独自の2モーターハイブリッド)」搭載の全モデルに展開されていくことになる、新時代のホンダらしさを象徴する技術「Honda S+ Shift(ホンダ エスプラスシフト、以下S+シフト)」。
五感を刺激し、ドライバーとクルマがより「Synchrinize(シンクロナイズ:一体化)」するような、爽快で意のままの走りを最大化して提供するために開発された新技術です。
大きな特長としてはまず、聴覚・視覚・体感で訴えかける新システムだということ。
e:HEVの特長であるモーター駆動とエンジン直結をシームレスに切り替える機能、高効率エンジン、2つの高出力モーターを駆使することで、運転状況に応じたエンジン回転数を緻密にコントロールします。
加速に関しては、エンジンと発電用モーターが協調して変速を行いつつ、エンジンの原音に加えてASC(アクティブサウンドコントロール)がスピーカーからも音を提供。リニアで迫力のあるサウンドを届けます。
減速では、もう1つの駆動用モーターを活用して、あたかも有段ギアを変速したかのようなドライブフィールを実現。
e:HEVはメカニカルな変速機構は持っていませんが、S+シフト作動時はパドルがギアセレクターの役割を担い、従来のSports DCTよりも速い応答性での変速フィールが得られるといいます。
同時に、目の前のメーターがタコメーター付きの表示に切り替わり、視覚からも変速のイメージを増幅。
切れ味の鋭いシフトフィールと迫力あるサウンド、瞬時に反応するメーターの相乗効果で、新時代のホンダらしさを感じることができる「操る喜び」が完成しているのです。
■新型「プレリュード」は「新しい満足感」が味わえる!
新型プレリュード プロトタイプの試乗コースは、高速周回路とアップダウンやタイトなコーナー、S字などが続くワインディング路。
S+シフトボタンを押し、アクセルをゆっくり踏み込んでいくと、なめらかな加速としっかりとした接地感とともに感じたのは「まるでV型6気筒エンジン!?」と驚いてしまうような気持ちのいい音でした。
速度を上げていくにつれてグッと重心が下がるような、自分がスーッとプレリュードに組み込まれていくような、久々に感じる「いいスポーツカー」にしか出せない一体感が押し寄せてきます。
心地良く響く音のリニア感も想像以上で、あえてパドルを弾いて減速してみると、ブリッピングの音までしっかりリアル。どんどん気分が高揚してくるのを止められません。
ついついアクセルを奥まで踏みたくなり、直線で空気を切り裂くような加速フィールも味わうことができました。
そして興奮気味のままワインディング路に入ると、後ろから押されるような力強さと、ギュッと思いのままに減速できるメリハリのある操作感が楽しさを倍増させてくれます。
コーナーの手前ではステアリングを切ろうかなと思ったくらいで、すでに鼻先が行きたい方向へと吸い込まれていくようで、自然に一筆書きの弧を描くことができる爽快感。
操作が忙しくなったり追従の遅れを感じがちなS字コーナーでも、ボディのカタマリ感があってキビキビとした身のこなしに運転が上手くなったような気分になりました。
また、今回の足まわりは「シビックTYPE R」をベースにしているとのことで、路面からのインフォメーションはしっかりと伝えながら、まったく乗り心地に角がなく、「ひょっとしてこれはFR? それとも四駆!?」と疑いたくなるくらいの安定感だったことも驚きました。
従来のe:HEVの加速ではリニアシフトコントロールを採用していましたが、ブレーキングをするとEVに入ってしまい、ワインディングなどでスポーティに走っている時にドライバーに対するインフォメーションが希薄になってしまっていた、というところを反省材料として進化させたというS+シフト。
減速時にエンジン回転数を高めにキープすることで、再加速の時にエンジンの高い発電電力を即座に引き出すことができるようになり、アクセルを踏んだ際のモーターの初期応答時間を大幅に短縮できたといいます。
この技術には、F1黄金期に「Powerd by Honda」の文字が輝いていたように、「エンジンのホンダ」が今再び新時代の技術となって蘇ったようなワクワクを感じました。
これまでのハイブリッドモデルは、なんとかしてエンジンの存在を小さくしよう、消し去ろうと、あの手この手で対策をしているように見えました、
しかし今回はそうではなく、エンジンの良さをもっと引き出そうと最大限に“使い倒す”ことで「魅力あるホンダならではのハイブリッドをつくろう」という気概を感じたのです。
ちなみにS+シフトの「S」には、「S2000」や「S660」、スポーツグレード「TYPE S」といったホンダのスポーツスピリットを継承するモデルや技術に与えられる「S」はもちろん、「Synchronize」「Special」「Sensational」など新たな価値を「プラス」し、ヒトとクルマを新たな世界に「シフト」させていくという思いが込められているそう。
新型プレリュード プロトタイプには、まるでV6エンジンのような気持ちのいいサウンドや、クルマの制御に流されているような操作感ではなく「運転しているのは間違いなく自分なんだ」と実感できる、懐かしいけど圧倒的に新しい満足感が詰まっていました。
2025年の発売に向けて、これから最後の仕上げにかかる新型プレリュードに今、大きな大きな期待がふくらんだのです。