救急車で搬送された患者が、入院を必要としない軽症者だったケースが増加。救急車利用の実質有償化が一部の自治体で始まっています。それはどのような仕組みなのでしょうか。
■1回の利用で「1万円台」も
救急車で搬送された患者が、実は「入院を必要としない軽症者だった」というケースが、増加しています。
そんななか、救急車利用の「実質有償化」が一部の自治体で始まっています。どのような仕組みなのでしょうか。
救急車の出動件数は、総務省の2023年度の速報値で、「集計開始以来最多」となる「763万7967件」にのぼったと報告されました。
全国で約4.1秒に1回、救急車が出動している計算になります。
ちなみに救急車が1回出動すると、これまでの実績をふまえた全国平均で4万5000円の経費がかかるとされています。
それから最新の「単純計算」を算出すると、搬送にかかる年間費用は、約3437億円にのぼることとなります。
人命救助のための救急車ですから、日本では公費が投入されています。しかし緊急性がきわめて低い軽症・軽症にもかかわらず、タクシー代わりに救急車を自宅などに呼び、病院へ搬送している人が増加しているという報道も出ています。
例えば、一般的な風邪の症状と同じ発熱、頭痛や指先を刃物でちょっと切って血がにじんだといったレベルで、それこそ自分でタクシーを呼んで病院へ行けるような軽症者が、救急車を呼んで緊急搬送してもらっているようです。
たとえば茨城県は県の公式サイト内で「救急隊は原則搬送しなければならず、搬送を拒否することはできません」と説明しています。
なぜならば、電話口では「それ救急車なんかいらないでしょうが!」と突っぱねる判断が難しいため、まずは受け入れる(駆けつけて搬送する)しかないのです。
多額の税金が投入されている事実を考えると、これに疑問を持つ人は少なくありません。
2024年7月27日付の東京新聞の報道によると、三重県内で2023年に発生した救急車出動は14万3046件(速報値)で、そのうち「約半数」にのぼる6万8549件が「入院を必要としない軽症者」であったといいます。
■東京消防庁の回答は?
そうした状況をうけ、三重県松阪市では2024年6月から、救急車で搬送されたのちに「入院を必要としない軽症者」と判断された一部の場合、7700円を「選定医療費」として徴収するようになりました。
選定医療費とは、2016年に厚生労働省が創設した制度です。一般病床数200床以上のいわゆる「大規模病院」にて「紹介状なし」で受診する場合は、患者へ特別な負担金を課すものです。
茨城県でも2024年12月から、緊急性が認められない軽症者が緊急搬送されたときには、選定医療費を徴収するように決定したばかりです。「県単位での実施」は全国初となります。
茨城県の場合、最安の白十字総合病院で1100円、一般的な大規模病院では7700円、筑波大学附属病院では1万3200円と、搬送先によって金額が異なります。
今後も全国の自治体で、本来不必要である救急搬送案件で手を取られる問題への対処として、こうした救急車利用の「実質有償化」の動きが出ると見られています。
消防庁では、救急車の適時・適切な利用を呼びかけており「救急車を呼んだほうがいいのか?」を相談できる「救急安心センター事業」を提供しています。
判断に困る場合、いきなり119番へかけるのではなく、まず「#7119」に電話を掛けると、専門家が話を聞いて、救急車を呼んだほうがいいか、呼ばずに急いで病院で受診したほうがいいのか、その場合の受診できる医療機関はどこかを教えてくれます。
この「7119」、いつか自分に体の不調やトラブルが発生した時に、適切な相談と判断をするのに役立つかもしれません。いざという時に「あれ、番号なんだっけ?」と迷う前に、今のうちに「アドレス帳登録」しておくのもいいでしょう。