「逆あおり運転」は具体的にどのような違反になるのでしょうか。また、遭遇したらどうすればいいのでしょうか。
■悪質な「後ろのクルマを通せんぼ」 実際どんなもの?
近年、「あおり運転」への関心が高まっていますが、これとは反対に“ノロノロ走行”したり、不用意に停止することで後続車の進行を妨げることを「逆あおり運転」といいます。
ではこの「逆あおり運転」は具体的にどのような違反になるのでしょうか。また、遭遇したらどうすればいいのでしょうか。
いわゆるノロノロ走行は、2020年に神奈川県で発生したことが大きな話題になりました。
これは時速5km〜10km程度の、徒歩〜ランニングほどのスピードで走行し、後続車に追い越しをさせない行為を故意に行ったものです。
この当事者は「10キロおじさん」として、地元では約10年ほど目撃されていたといい、遅く走るだけでなく、頻繁にブレーキをかけたり、急ブレーキをかけることもあったようです。
さらには、追い越されそうになると加速し、追い越そうとするクルマを妨害してクラクションで威嚇し、ハイビームのまま走行するなど、非常に迷惑な行為を行っていたようです。
このように後続車の進路を妨害する行為について、後続車が前走車に接近して圧力をかける「あおり運転」の逆であることから、「逆あおり運転」といいます。
直近では2024年11月、愛知県岡崎市で複数回にわたって進路妨害していた男が逮捕されました。
故意にクルマを停止させ、後続車を威嚇したり、赤信号になるタイミングを見計らって、後続車を停止させる行為などがあったようで、警察には複数件の被害が相談されていたといいます。
では、こうした逆あおり運転は、どのような違反になるのでしょうか。
まず、「急ブレーキ」を踏むケースです。これは道路交通法第24条で明確に禁止と定められています。
道路交通法では、「車両等の運転者は、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、急停止をし、または急ブレーキをかけてはならない」とあり、必要のない急ブレーキは「急ブレーキ禁止違反」に該当する可能性があるのです。
また、「追い越そうとしたクルマを妨害する」ケースも、道路交通法第27条にヒントがあります。
同法第27条では「最高速度が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない」とあり、場合によっては「追いつかれた車両の義務違反」として検挙される可能性があります。
さらに、「高速道路でノロノロ走る行為」も、違反となることがあります。
同法第74条の4では「高速自動車国道の本線車道において、最低速度が指定されている区間ではその最低速度にに達しない速度で進行してはならない」とあります。高速道路の最低速度は時速50kmと定められ、理由もないのにノロノロ走ると、「最低速度違反」が適用される可能性があります。
そして、明らかに他の交通を妨害する目的で危険運転を行った場合は、「妨害運転罪」に問われることになります。
これは、あおり運転や逆あおり運転が社会問題化したことを受け、2020年6月の道路交通法改正で新設され、定義も明確化しました。
妨害運転の要件は「他の車両等の通行を妨害する目的で行われていること」「行われた行為が、一定の違反行為であること」「道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法であること」の3点。
罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金、および運転免許の取り消しという、厳しい処分が科せられます。
これに、「高速道路で他の車両を停止させるなど、道路における著しい交通の危険を生じさせたこと」という、すでに危険な状態にさせる悪質なものであると、5年以下の懲役または100万円以下の罰金、免許取り消しになります。
■「逆あおり運転」に遭遇! どうしたらいいの?
では、逆あおり運転に遭遇したり目撃した場合は、通報できるのでしょうか。
警視庁の交通相談コーナーの担当者は、過去の取材で次のように話します。
「逆あおり運転は、通常のあおり運転行為と変わらず、危険運転としてみなされます。
そのため、該当するクルマの車種とナンバーを控えて、通報してください」
このように、逆あおり運転もしっかりと危険運転行為とみなされるため、発見した場合には通報しても問題ないようです。
現在、ドライブレコーダーが普及しているため、映像としてしっかり記録しておくとなおよく、また逃げられても後で通報できるよう、車種やナンバー、逃走した方向なども控えておくとよいでしょう。
ただしこのとき、自車がクラクションを鳴らしたり、追い越そうとしたりすると、相手が逆上する危険があるほか、自身の事故や違反につながってしまうことがあります。
そのため、逆あおり運転に遭ってもできる限り冷静になり、交通ルールを守りながら対処することが大切です。