中国トヨタでは”クラウン ミニバン”こと「クラウン ヴェルファイア」が販売されています。どのようなクルマになっているのでしょうか。
■中国では「クラウン」がレクサスのような高級車ブランドに
トヨタ「アルファード」は2002年の初代デビューより、非常に高い人気を誇っています。姉妹車の「ヴェルファイア」はアルファードの2代目のフルモデルチェンジ時に、それまでのトヨタのディーラー系列ビスタ店で販売されていた「アルファードV」から独立してデビューしました。
現行モデルは、2023年6月にデビューした4代目アルファード/3代目ヴェルファイアで、発表されるや否や注文が殺到、実質上受注停止となるほどの高い人気を博しています。
アルファード/ヴェルファイアは、当初はグローバル展開をしない日本市場向けミニバンとして開発されたモデルですが、中国市場では3代目アルファード/2代目ヴェルファイアから販売が開始されました。
アルファードは中国市場でも同じ車名で販売されていますが、ヴェルファイアは一汽車トヨタから”クラウンシリーズのミニバン”「クラウン ヴェルファイア」の車名で販売されています。
一汽トヨタは、中国の自動車メーカー「中国第一汽車」とトヨタの合弁企業です。また、トヨタは広汽汽車とも合弁会社「広汽トヨタ」を設立して展開しています。
中国では、クラウンセダンを「クラウン」のみの車名で販売するほか、北米・欧州・豪州などグローバルで販売されているラージサイズSUV「ハイランダー」を「クラウン クルーガー」の車名で、またクラウン クロスオーバーを「クラウン スポーツクロス」の車名で販売しています。
中国にこのようなクラウンシリーズが展開されている背景には、中国市場ではレクサスと同じように「クラウン」が高級車ブランドとして認識され、中国では「皇冠」で表記される、王冠エンブレムが内外装の随処にあしらわれるなど、一種のステイタスまでに昇華した、ということがあります。
日本で新型アルファード/ヴェルファイアの発表があってから約1カ月後に、中国で現行型クラウン ヴェルファイアが披露されました。
その姿は、日本の新型ヴェルファイアと同一ですが、フロントグリルやボディサイドBピラー付近のエンブレムが王冠エンブレムに変わっており、まさに“クラウンミニバン”といった見る人を圧倒する凄みをもっていました。
車両価格は、アルファードよりクラウン ヴェルファイアのほうが上級高価格モデルの位置づけかとも思われますが、両者ともに約90万元(1中国元=20円の為替レートで約1800万円)からとなっています。
日本市場で販売されるアルファード/ヴェルファイアに比べると、2倍ほど高い価格設定となっていますが、これには中国の政策で、中国で生産する外資系自動車メーカーの現地部品調達率を一定の高い基準にする必要があることなどさまざまな要因が重なっている背景があるようです。
また中国の商慣習では、新車購入時には納車を早めるために追加の費用を支払うということがあり、実際の乗り出し価格は2500万円を超えるだろうという見方もあります。
日本と中国の市場では大きな違いがありますが、アルファード/ヴェルファイアの人気の程は違いがないようです。特に品質面においては、日本車は高い信頼が寄せられており、特にトヨタは人気を集め、中国の中古車市場でも高値で取引され続けています。
興味深いのは、中国のトヨタの車種ラインナップが実に豊富なことです。
日本ではすっかりと人気を失ってしまったセダンは、中国では高い人気があります。このためか、中国トヨタのセダンのラインナップは充実しており、カローラセダンのスポーティモデルが日本では懐かしい「レビン」の車名で販売されているほか、「アリオン」(レビンの兄弟車)や、「アヴァロン」といった日本では消滅した車名もラインナップしています。
このように、クラウン ミニバンことクラウン ヴェルファイアをはじめ、中国市場のトヨタには日本と異なる興味深いモデルが多数ありました。