スズキは次期「アルト」で、現行型からさらに100kgの軽量化を目指すと宣言しました。2024年7月の「次世代の技術戦略説明会」のなかで明らかにされたものですが、具体的にはどのようなことがおこなわれるのでしょうか。
■現段階でも他社より200kgから300kg軽いスズキのクルマ
スズキは2024年7月におこなわれた「次世代の技術戦略説明会」において、次期「アルト」を現行型からさらに100kgの軽量化を目指すと宣言しました。
もともと軽量なアルトですが、どのような技術で実現しようとしているのでしょうか。
スズキの鈴木 俊宏 代表取締役社長は、技術戦略説明会のなかで自社の行動理念について次のように話します。
「行動理念は、1.現場・現物・現実 2.小・少・軽・短・美 3.中小企業型経営 の3つです。
これは、技術戦略達成においても重要な役割を果たすものです」
なかでも、2050年のカーボンニュートラルに向けた取り組みに対して「『小・少・軽・短・美』の理念にもとづき、使うエネルギーを極小化して、出すCO2を極限まで小さくします。これが私たちの考える技術哲学です」と説明しています。
現時点でも、すでに軽量化設計に注力したコンパクトカーや軽自動車を主軸にグローバルで販売をおこなうスズキ。
2024年の段階でも、日・欧・印における乗用車の平均に対し200kgから300kg軽いクルマづくりを推進しているといいます。
鈴木氏は「軽ければそのぶん材料は少なく済み、製造時のエネルギーも約20%少なく、走行に必要なエネルギーも6%少なく済む」と力説します。
軽ハッチバックのアルトは、こうしたスズキのクルマづくりを象徴する存在といえます。
初代は1979年に登場。乗用モデル「フロンテ」をベースに、主に前席を中心に使うユーザー向けに割り切った3ドアモデルでした。
デビュー当時、47万円というインパクトのある価格設定としたことで一躍話題を呼びました。
その低価格を実現するためにも、小型・軽量かつ安価に仕立てることが大きなポイントとなります。
その後世代を重ねるごとに、軽規格の拡大や安全基準などの法改正に対応するため車両重量も増加し、初代の545kgに対し、現行型の9代目では680kgとなっています。
スズキでは、2014年12月登場の先代(8代目)開発時、全社で軽量化を推進する取り組みを実施していました。
このとき刷新されたプラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」は、従来型では補器類レイアウトの都合でできたフレームの曲げ形状を見直すなどして最適化を図り、高剛性化と軽量化をおこないました。
その結果、7代目比で120kgの軽量化を実現し、4世代前のアルト同等の軽さになったのだといいます。
とはいえ現行の6代目アルト(680kg)も、軽最量販車であるホンダの軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」の車両重量は910kg(自然吸気エンジン車)と比べれば、十分に軽いクルマです。
■もともと軽い「アルト」をさらに軽量化するには
8代目アルトの取り組みからおよそ10年が経過し、スズキは次の10年に向けた取り組みとして、前出の技術戦略説明会において、次期型(10代目)アルトの「100kgの軽量化」を目指すと宣言しました。
根幹となるプラットフォームのHEARTECTをさらに進化させ、安全を保ちつつ軽量な車両にすることで、1988年登場の3代目アルト同等の軽量ボディとするとしています。
現行型の車両重量は680kgであることから、単純にマイナス100kgと考えると、およそ580kgまで減量化することになります。
マイナス100kgの軽量化は、例えばプラットフォームの骨格を少しいじるくらいでは達成できません。
外板パネルやエンジン・トランスミッション、サスペンションから、内装材やシート骨格、先進運転支援機能(ADAS)に対応するハーネス類に至るまで、社内のみならず協力会社とともに取り組む必要があります。
極めて大がかりなプロジェクトであり、スズキの意気込みが伝わります。
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アルトの歴代モデルはこれまで、およそ4年から6年のサイクルでモデルチェンジを重ねてきました。
2021年12月の現行型登場時期から考えると、最短で2025年から2026年初頭の刷新が見込まれます。
次期10代目アルトがどのような革新的技術でマイナス100kgを達成するのか、動向が注目されます。