日本で盗まれたクルマの多くは海外に密輸されます。そんな日本でじわじわと増えているのが、3代目アルファード(30系)に代表される「目玉抜き」という行為です。いわば、盗難車のロンダリング(洗浄)ですが、今回は実際に被害に遭われた関東在住のAさん夫婦の実例を元に解説していきます。
■車台番号を貼り換えて流通させる「目玉抜き」とは?
今、日本でじわじわと増えているのが、3代目アルファード(30系)に代表される「目玉抜き」という行為です。
目玉抜きとはアンダーグラウンドな業界用語の一つでA車(盗難車)の車台番号を取り去って、同じ型式のB車の車台番号を貼り付けた車両のことを言います。
いわば、盗難車のロンダリング(洗浄)です。今回は実際に被害に遭われた関東在住のAさん夫婦の実例を元に解説していきます。
日本で盗まれたクルマの多くは海外に密輸されます。
かつては出所がわからないよう解体し、部品として密輸されることが多かったのですが、近年はとくにトヨタの「アルファード」や「ランドクルーザー」などの高値で取引されるクルマはバラさずそのまま海外に持ち出されることが増えています。
それは、クルマとしての価値も高いまま保つことができるメリットがあり。
また、日本の税関は出ていくクルマに対して大型X線機器による検査もほとんどしていないという実態があるからです。
実際、過去10年間、全国の15か所の港にある大型X線でコンテナの中から盗難車が発覚のはわずか年間で4-5件です。全くのザル検査なのです。
盗難車をバラさずにそのままの形で輸出する場合によく使われる方法が「目玉抜き」という方法です。
簡単に言うと、盗難車の車台番号を事故車や水没車などから切り取った同型車種の車台番号に貼り換える方法です。
車台番号から調べると盗難車であることがすぐに判明するので他のクルマの番号に貼り換えるのです。
関東在住のAさん夫婦は今年春に盗難車だとはもちろん知らずメルカリを通じて知り合った売人から30系アルファードを購入しました。
値段は390万円。外装も内装もとてもきれいで距離も3万キロと少な目です。現所有者は愛知県在住で「尾張小牧」ナンバーがついていました。
代金とクルマの受け渡しは売人からの指示で「クルマと引き換えに現金を渡す」ことになったので、Aさんは売人が指定した神戸まで現金を持って行きます。
それと引き換えに車両本体と名義変更のための書類(印鑑証明、委任状、譲渡証明書等)を受け取りそのままアルファードを運転して帰ってきました。
しかしその後、Aさんはオイル交換をお願いした工場で妙なことを告げられます。
「このアルファード、車台番号が違うんじゃないですか?」
続けて「クルマは明らかに30系アルファードなのに、車検証の車台番号が20系になっているのはおかしい」ということでした。
Aさんは「もしかしたら盗難車かもしれない。20系アルファードは1世代前のモデルだから30系の車台番号につくはずがない」と思い、不審なクルマなので名義変更をせず、「このまま返品して390万円を返してもらいたい」と願うようになりました。
しかし、「どうやればいいのか?不審なクルマだとは思うが決定的な証拠がないし、その証拠の集め方もわからない…」と。
そこでAさんは「詐欺撲滅系YouTuber」として活動している「【新宿109】KENZOチーム」に相談をしたのですKENZOさんは独自に詐欺やマルチで騙された方々の救済活動を行っており過去4年間で総額1億円以上の「返金」を実現させた実績も持っています。
そのKENZOさんから相談を受け、筆者も390万円の返金に協力することになりました。
筆者がまずやろうとしたことは、「盗難車かどうか?」を調べることでした。
いかなる理由でも車台番号が違うのは、絶対にダメなことです。
金融車であっても車台番号の貼り換えは道路運送車両法違反で厳しい処罰を受けることになります。
そして「盗難車かどうか?」は、Aさんのアルファード本来の車台番号から調べるしか方法はありません。
アルファードの車検証を見ると確かに車台番号は20系、初度登録は平成20年。前回車検時の走行距離は20万キロを超えていました。
コーションプレートははがされており、トヨタが出す保証書もなく、自賠責保険の証書に記された車台番号も20系です。
つまり、Aさんのアルファードは30系を証明する車台番号がどこにも残っていないという状態でした。
■トヨタディーラーの協力で本来の車台番号が判明! その後返金はされたのか?
そこで実行したのは、ディーラーにAさんのアルファードを持ち込んで本来の車台番号を調べてもらうことでした。
詳細は割愛しますが、事情を話したところディーラーで快く調べていただけることになり、すぐさま、「30~」からはじまる本当の車台番号が判明しました。
また、運転席を外した形跡があり、車台番号が貼り換えられた際の傷も確認できました。
筆者とAさんはその番号を持って運輸支局に行き、「登録登録事項等証明書」を取り寄せたところ盗難情報が設定されていることがわかりました。
履歴によると、2023年12月に大阪市内で盗まれており、2024年3月に被害者が契約していた保険会社(あいおいニッセイ同和)の名義に代わっていたのです。
つまり、この時に被害者に対して保険金が支払われたことになります。
Aさんのアルファードは確実に盗難車であることが分かったので、筆者とAさん夫婦、【新宿109】KENZOの3名などは神戸に向かいました。
Aさんは「友人がアルファードを買いたいといっている」といって売人を呼び出すことに成功。
本当に「返金してくれるのかどうか?」の不安もありました。
これまで500回以上の「突撃」をして総額1億円以上の返金を実現してきたKENZOチームも、盗難車の購入代金を返金させるのは初めてとのこと。
結論から言うと、スリリングな展開も随所にありましたが、お金は売人が所属する会社の前で390万円現金できっちり返金されました。
そのあと、そのアルファードは警察署(兵庫県警葺合警察署)に押収され筆者はAさんに付き添って警察での事情聴取も行いました。
この時の様子は【新宿109】KENZOの動画で見れますが、コメントの中には「なぜ、盗難車とわかった時点で警察に届けないのか!」という内容がいくつかありました。
しかし、今回の突撃の目的はあくまでも「390万円の返金」です。
警察に届け出たところで、絶対に返金はされませんし、Aさんからアルファードが没収される可能性もありました。
そうなるとAさんは390万円が返ってこないどころか、購入したアルファードも警察に押収されて戻ってこない可能性もあったのです。弁護士や運輸支局にも事前に相談のうえで実行した作戦でした。
今回は盗難車であるという確実な証拠を確保したうえで交渉したこともあって、売人が返金してくれることになりましたが、これはなかなか稀なことです。
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ネットで知り合った人から現金手渡しでクルマを購入することは非常に危険です。どれだけ条件の良い話でも絶対にやめましょう。
昨今、逮捕事例も数件あるように目玉抜きのアルファードが関西圏を中心に一般ユーザーに対しても流通しています。
クルマは信頼できるディーラーの認定中古車を購入するのがベストだと筆者は考えます。
少し高くても安心度の高い中古車店で万全な保証を付けて購入することをお勧めします。