高速道路の右側の車線は「追越車線」となっていますが、この車線をずっと走り続けると取り締まりの対象となることがあります。なかには数分走っただけで取り締まられたことがある人もいるようですが、どういうことなのでしょうか。
■「通行帯違反」ってどんなもの?
「高速道路」で複数の車線が設けられている場合、「走行車線」と「追越車線」が存在します。
そして、追越車線を走り続けていると取り締まりの対象となるというのですが、どういうことなのでしょうか。
警察庁の統計によると、令和5年(2023年)の高速道路における交通違反取り締まり件数は36万4079件。そのなかでもっとも多かったのが「最高速度違反(スピード違反)」(26万1523件)ですが、その次に多いのが「通行帯違反」(4万7149件)でした。
この通行帯違反が、“追越車線を走り続けた違反”となっており、取り締まり件数が多いことに驚かされますが、逆にいえばそれだけ追越車線の走行が覆面パトカーなどにチェックされているともいえます。
というのも、道路交通法では「高速道路は左側端から数えて1番目の車両通行帯を通行しなければならない」と明記されていることに加え、右側の追越車線については「最も右側の追越車線を通行して追い越した後は、速やかにそれ以外の車線に戻らなければならない」と決められているから。
右側は「追い越しするための専用通行帯」であり、追い越しが完了したにも関わらず、ずっと走り続けるのはアウトということになります。
ここで難しいのが「ずっと走り続ける」の定義で、あくまで「追い越し後は速やかに」となっているものの、〇分以内に車線変更しなければいけないとは明記されていません。
慌てる必要はありませんが、安全を確保しつつ早めに走行車線(左側車線)に戻らなければならないことは覚えておきましょう。
では、どんな時に通行帯違反になってしまうのでしょうか。実際に通行帯違反で取り締られたことがあるSさん(40代男性)に聞いてみました。
「用事を済ませて高速道路で帰るとき、早く帰宅したいという意識もあって、前走車に追いついてしまいました。
そこで追越車線に車線変更し、そこまでスピードは出していませんでしたが、空いていたのでそのまま数分走り続けたところ、後続車が迫ってきたのです。
そして走行車線に戻ろうとしたら、後続車が急に赤色灯を点灯させ、通行帯違反で取り締まられました」
Sさんが追越車線を走り続けたのはほんの数分だったと言いますが、それでも違反となってしまったことに驚いたと言い、明確には定められていないものの、数分でも通行帯違反となることがあることがわかります。
なお、渋滞中は走行車線も追越車線も当然混んでおり、追越車線を走り続けても通行帯違反で取り締まられることはないのが現状です。
追越車線を走り続けるのが違反となることは理解できましたが、そこで悩ましいのが、「追越車線を加速せずに走っているクルマ」の存在です。
追い越すならサッと加速して走行車線のクルマを追い越してから走行車線に戻ればいいのですが、スピード違反を恐れてか、一向に追い越しをしないケースも見かけます。
だからといって、そんな追越車線をゆっくり走り続けるクルマを左側から追い越してはいけません。「左側車線からの追い越し」も違反となり、そして通行帯違反よりも罰則が重いのです。
通行帯違反は反則点数1点+反則金6000円(普通車)ですが、左側車線からの追い越し(正式名称は、追い越し違反)は、反則点数2点+反則金9000円が科せられます。
たとえ制限速度内であっても、左側からの追い越しは控えたほうがいいでしょう。
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通行帯違反は、高速道路だけでなく一般道でも適用されます。
片側3車線などの広い幹線道路で取り締まりの対象になる可能性があることも覚えておいて損はなさそうです。