2000年1月に発売されたトヨタ「WiLL Vi(ウィル・ヴィ)」は斬新なデザインを有するコンパクトセダンです。どのようなモデルだったのでしょうか。
■二度と出ない希少コンパクトカー「WiLL Vi(ウィル・ヴィ)」
トヨタ「WiLL Vi(ウィル・ヴィ)」は、2000年1月に発売され、2001年12月まで生産されたコンパクトカーで、レトロなデザインを採用し、特にリアに向かって傾斜するリアウィンドウや丸みを帯びたフェンダーが特徴的で、ボディ全体が曲線を帯びた形状で、他の車種にはないユニークなシルエットを持つモデルだ。
WiLLというブランド名には、作り手から明確な意志(will)を発信し、新たな市場、生活・消費の様式を生み出していくという意味が込められていた。
この小型4ドアセダン「WiLL Vi(ウィル・ヴィ)」は、シンデレラの馬車をイメージし、弓なりに反ったベルトラインと、後傾したリヤウィンドウが特徴のボディを載せたのである。
パステルカラーを中心とした多彩なボディカラーが用意され、ファッション性を重視するユーザーに向けたカラーリングとなっていた。
内装も外観と調和するようにデザインされており、シートやインテリアトリムにカラフルな素材が使用され、円形のエアコン吹き出し口や、シンプルなメーター類がレトロな雰囲気を醸し出している。
そのプラットフォームは「ヴィッツ」をベースに開発されており、コンパクトながら優れた走行安定性と取り回しの良さを持ち合わせていたのである。
ボディサイズは、全長3760mm×全幅1660mm×全高1600mm、ホイールベースは2370mm。パワートレインは1.3リッター直列4気筒エンジンで、最高出力は88psだった。当時の価格は145万円(キャンバストップ仕様)だった。
WiLL(ウィル)は、異業種による合同プロジェクトであり、若者への新しいマーケティング手法を探ったトヨタの社内プロジェクト「VVC(ヴァーチャル・ベンチャー・カンパニー)」」から始まっている。
これに、アサヒビール、花王、近畿日本ツーリスト、松下電器産業(当時)が加わって、1999年8月にスタート、さらに翌2000年には、コクヨ、江崎グリコが加わった(アサヒビールと花王は2002年脱退)。
20代~30代を中心とする層を顧客と捉えて、若年層市場をターゲットに家電製品や飲料、化粧品など、多岐にわたる製品を提供していたのである。
「遊びゴコロと本物感」のコンセプトを掲げ、各社が手掛けるWiLLの商品にはブランド名とオレンジ色のロゴが付けられた。
そして、トヨタが新たな市場開拓やブランド戦略を試みる上で重要な役割を果たした。その独創的なデザインは、国内外のデザイン賞を獲得し、自動車評論家からも高い評価を受け、テレビCMや雑誌広告などで積極的にプロモーションが行われた。
企業間でのブランドイメージを統一し、各社の製品を相互に宣伝することで、新しいマーケティング手法として注目を集めたのである。
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WiLL Viは、単なる交通手段としての車ではなく、ファッションアイテムや自己表現の一部としての車を提案した革新的なモデルで、その大胆なデザインと新しいマーケティング手法は、自動車業界だけでなく他業界にも影響を与えたことから、まだ多くの人々に記憶されている存在である。
ユニークなデザインで話題を集めたものの、販売台数は約1万6000台と限定的で、主にデザインやファッションに関心の高い若年層から支持を受けたものの、ファミリー層やビジネス用途には適しているとは言い難いかもしれない。
デザインの独自性が高かったものの、販売台数が伸び悩んだため、生産は約2年間で終了することとなる。WiLLプロジェクト自体も2004年頃に終了している。
WiLL Viは生産台数が限られていたこともあり、現在ではコアなファンやコレクターから注目される存在となっている。