ジュネーブショー2018で発表された「GRスープラ・レーシング・コンセプト」について過去全日本GT選手権(JGTC)やニュルブルクリンク24時間にも「スープラ」で出場していた木下隆之が開発責任者に話を聞きました。
■復活を望む世界中の多くの声に応えた結果
スイス・ジュネーブで開催された有名な国際自動車ショーで、トヨタは「GRスープラ・レーシング・コンセプト」を発表しました。
スープラとはトヨタを代表するスポーツカーですが、2002年に生産を中止していました。それが16年ぶり復活するというわけです。
スープラは長い間トヨタのスポーツイメージを牽引するモデルとして大人気で、モータースポーツの世界でも快進撃を続けてきました。
全日本GT選手権でも王者に輝きましたし、ドイツの過酷なレースであるニュルブルクリンク24時間でも活躍しました。個人(木下隆之)的にも、そのマシンのステアリングを握って戦ってきましたので、感慨深いものがあります。
今回の発表には驚くことが沢山あります。その一つはまず、「スープラ」という名が復活したことです。
開発責任者である多田哲哉氏に話を聞きました。そもそもスープラの定義とはなんなのでしょうか?
「スープラがスープラであるためには二つの条件があります。ひとつはFR駆動であること、ふたつ目は直列6気筒のエンジンを搭載することです。ですので、最初からこの組み合わせで開発を進めてきました」
今回の復活についてどう感じているのでしょうか?
「トヨタでは86を復活させ好評を得てきました。その時から世界のものすごく多くの方々からスープラへのラブコールがとどきました。その気持ちに応えたのです」
本格的なトヨタブランドのスポーツカーが求められていたのです。公道を走ることが可能な量産車は、2018年の秋の発表が予定されているとのことです。
■スープラ開発には大きなサプライズがあった
実はこのモデルには大きなサブライズがあります。ツーリングカーの開発では定評のあるドイツのBMW社との共同開発車なのです。
エンジンはBMWが得意とする直列6気筒を搭載します。プラットフォームという骨格もBMW社と共同で設計されているのです。
「BMWと共同で開発することで、お互いの得意な点を合わせることが可能になりました。開発のスピードも高まりますし、コストを抑えることも可能になりました」(多田哲哉氏)
BMWはこのパッケージングを利用してZ4というオープンカーを発売するようです。ドアは左右の2枚で、リアゲートが大きく開くハッチバックスタイルを採用しています。
エンジンは推定ですが、直列6気筒の3リッターと、その3リッターエンジンにターボチャージャーが組み込まれたハイパワー仕様が準備されていると噂されています。
それが現実だとすると、86よりも力があり高いスピードの出るモデルになります。
■驚きの連鎖反応はさらに続く、ル・マン24時間レースに出場!?
驚きは他にもあります。量産車が公表される前に、レーシングカーが発表されたことです。
一般的にはまず、量産車が発表され、その後に量産車を改造したレーシンクカーがサーキットを走り始めます。ところが今回は、量産車はまったく公表されていないのに、まずレーシングカーがデビューしました。それは異例なことなのです。
しかもスープラは、ル・マン24時間にも出場できるLM-GTEという規定に合わせて開発されています。
「LM-GTE規定を選んだのは、改造範囲が広いことです。どうせなら徹底的に改造したかったのでこのカテゴリーを選びました。いざレーシングカーの戦闘力を高めようとした場合に、量産車の段階でこうしておけばよかったのに・・ということが発生します。ですので、あらかじめレーシングカーを開発することで、事前に量産車に細工をしていくためです」(多田哲哉氏)
まだ実際に参戦するかは発表されていませんが、すでに勝つためのシナリオが出来上がっているのですね。
ジュネーブショーの会場では、とても人気の高いモデルでした。マシンの周りには常に黒山の人だかりができていました。これから話題の中心になることは疑いありません。