道路上にはセンターラインや停止線、安全地帯を示す長方形など、さまざまな道路標示があります。そのひとつとして、消防署や警察署の出入口付近には、道路上に斜線の入った長方形の道路標示がありますが、この「斜線ゾーン」にはどのような意味があるのでしょうか。
■SNS上では「停車しているクルマが多い」「講習で教わらなかった?」の声
一般的に警察署や消防署などの出入口付近の道路上には、白色の「斜線ゾーン」が設置されています。
たびたびこの場所に停車しているクルマも散見されますが、斜線ゾーンに停車しても良いのでしょうか。
道路上には「一時停止」や「駐車禁止」といった道路標識のほか、「停止線」、「横断歩道」などさまざまな道路標示があります。
ドライバーにとって視覚的・感覚的に分かりやすいデザインが多く採用されていますが、中には一見しただけでは意味が分かりにくいものも存在します。
そのひとつとして、警察署や消防署、病院などの出入口付近の道路上に設置されている、白線の四角い枠組みの中に白色の斜線が引かれた「斜線ゾーン」の道路標示が挙げられます。
この道路標示に関しては信号待ちなどの際、斜線ゾーンに入らないよう手前で止まるクルマが多い一方、斜線ゾーンの中に入って停車するクルマもみられます。
では、斜線ゾーン付近ではどのように停車するのが正解なのでしょうか。
そもそも、この斜線ゾーンは正式名称を「停止禁止部分」といい、前方の車両などの状況によって停止するおそれがあるときは、その部分に入ってはならないことが道路交通法で定められています。
つまり、信号待ちなどで前方の車両が詰まっているときは停止禁止部分に入らず、その手前で停車すべきといえるでしょう。
さらに、この停止禁止部分で停車すると「交差点等進入禁止違反」という交通違反に当たり、検挙されれば違反点数1点、普通車で6000円の反則金が科されます。
なお警察庁が公表している「交通規制基準」によると、停止禁止部分は原則として次のような場所に設置されます。
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1.緊急自動車の出入口付近またはバスターミナルの出入口付近の道路で、信号待ち車列等により、緊急自動車の出動等や路線バスの正常な運行に支障がある道路の部分
2.バス停留所付近での路線バスの円滑な運行を確保するため、特に必要な部分
3.交通整理のおこなわれていない交差点で、滞留車両による交通障害のため交差道路の安全で円滑な交通に著しい支障がある交差点内の部分
4.滞留車両が踏切まで及ぶため踏切付近の安全空間を確保するなど、特に必要があると認める道路の部分
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上記をまとめると停止禁止部分は、一般の車両が緊急自動車の出動や路線バスの発進などを妨げないようにしたり、交差点や踏切付近で車両が滞留して交通に支障が出ないようにしたりする役割があるといえるでしょう。
停止禁止部分の通行に関してはSNS上において「信号待ちのとき停止禁止部分に停車しているクルマって多いよね」「講習で教わらなかったのか?って思う」などの声が寄せられています。
加えて、「消防署の前の斜線部分を空けていたら、後ろの車両からすごいクラクション鳴らされたことある」という体験談も聞かれ、意外にも停止禁止部分の意味を知らないドライバーが少なくない状況がうかがえました。
警察署や消防署、病院などの付近を通行する際は「緊急自動車が出入りするかもしれない」という意識を持つことが大切です。
そのほか停止禁止部分と、交差点の右折レーン付近などで見られる「導流帯」を混同して覚えているドライバーもみられます。
導流帯は白線の枠の内側に白色の斜線が入った道路標示で「ゼブラゾーン」とも呼ばれ、車両の走行を誘導する必要がある場所に設置されます。
停止禁止部分は通行が可能、停止は禁止という道路標示である一方、導流帯は通行と停止のいずれも可能です。
またこれらに似た道路標示として、黄色い枠線の中に白色の斜線が入った「立入り禁止部分」という道路標示もありますが、立入り禁止部分がある場所では通行も停止もできません。
見た目が似た道路標示を混同しないよう気をつけましょう。
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警察署や消防署などの出入口付近にある停止禁止部分の中で停車してはいけません。
ここで停車していると事件・事故への出動や、病人・負傷者の搬送などを妨げるおそれがあるため、付近では十分に注意して通行すべきといえるでしょう。