現在トヨタ「ハリアー」はミドルクラスSUVのなかで人気の車種です。対するレクサス「NX」も、レクサスの販売台数の上位を占める人気を持ちます。この2台は同じプラットフォームを用いた兄弟車ですが性格は大きく異なります。一体、どのような違いがあるのでしょうか。
■同じようでもまったく違う「ミドルSUV」!?
1997年に登場し、元祖都会派SUVとして洗練されたデザインと快適性を追求してきたクルマがトヨタ「ハリアー」であり、2014年にレクサス初のコンパクトSUVモデルとして誕生したクルマが「NX」です。
クルマの性格上、ハリアーと競合するのはレクサス RXですが、値段が近いNXの方がハリアーとの比較対象として取り上げられやすい傾向にあります。
ただし、ハリアーとNXは価格やボディサイズが近くとも、その中身や性格はずいぶんと違うため、比較検討する際には注意が必要です。
ハリアーのボディサイズは全長4740mm×全幅1855mm×全高1660mm、ホイールベースは2690mmです。対するNXのボディサイズは全長4660mm×全幅1865mm×全高1660~1675mmです。ホイールベースは同じであり、両車は最小回転半径や室内寸法も自然と近くなります。
しかし後席はハリアーの方がわずかに広く、リアドアの開口部も広く確保されているため、後席の居住性が高いのはハリアーの方になるでしょう。一方NXは、ハリアーにはない多くの便利機能が備わる特徴があります。
NXに備わる「e-ラッチシステム」はタッチ操作だけでドアの開閉ができる先進装備です。後方死角監視システムと連動して接触の危険がある場合は開閉動作が一時停止する安全機能も備わっています。
リアシートはどちらも6:4分割可倒ですが、NXは「F SORT」グレードを除く全車に電動格納機能が標準で備わっており、荷室のスイッチ操作で簡単に背もたれの格納、引き起こしが可能です。
また、NXのシートはベースグレード以外、シートヒーター付きの本革シートが標準装備です。対するハリアーは、PHEVモデルとレザーパッケージ装着車以外はすべてファブリック素材となりシートヒーターも備わっていません。
ディスプレイオーディオのモニターサイズを比べても、NXは14インチでハリアーは12.3インチないし7インチです。さらに、NXは高級ブランドのクルマとして遮音や防振処理も徹底して行われるため静粛性にも優れています。
両者の使い心地を比べた際、後席の居住性で優位なハリアーはファミリーユースなどで高い使い勝手の良さを感じられるでしょう。一方でNXは、日々の利用においてもハッキリとした高級車らしさが感じられるクルマとなっています。
■パワートレインにも細かな違いが!レクサススポーツを体現したNX
パワートレインの基本構成はおおむね共通ですが、細かな違いも設けられています。
ガソリンモデルはハリアーが排気量2リッターであるのに対しNXは2.5リッターとなり、最高出力279馬力/最大トルク430Nmを発揮する2.4リッター4気筒ターボエンジンが搭載されるNX350をラインナップする点もハリアーとは異なる点です。
共通エンジンとなるハイブリッドモデルのスペックを比べても、ハリアーのエンジンが177馬力/最大トルク219Nmであるに対し、NXはエンジン出力/モーター出力ともにハリアーよりも10%ほど引き上げられており、100kgほど重い車体重量をカバーしています。
ただし、燃費性能はハリアーの方が上です。ハイブリッドグレードのFF同士を比較した場合のWLTCモード平均燃費はハリアーの22.3km/Lに対して、NXは20.9〜22.2km/Lとわずかに低く、PHEVモデルのEV航続距離はハリアーの93kmに対してNXは87kmとなります。
ハリアーにはないターボエンジンの設定や、本来経済性を重視すべきハイブリッドモデルがハイオク燃料指定となっている点は、NXのスポーティな性格の表れと言えるでしょう。
さらにNXは2024年2月の改良で、もともと高かったボディ剛性がさらに強化され、足回りにも再チューニングが施され操縦安定性や乗り心地が向上しています。
スポーティな外観や内装も含め、ミドルSUVでレクサススポーツを体現している点がNXのもっとも大きな特徴です。一方、ハリアーにはトヨタのラグジュアリーSUVとしてふさわしいデザインと性能が与えられています。
ハリアーとNXは、それぞれのブランドの違いが色濃く反映されたクルマであり、ベースが同じだけに明確な違いとなって表れています。
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ハリアーの車両価格(消費税込)は312万8000円から620万円。NXは485万から772万5000円です。
NXの場合は、整備費用が3年間無料となる「レクサス ケアメンテナンスプログラム」が適用されることで価格差が幾分縮まるうえ、高級車を所有しているという満足感も得られます。
しかし、日常的に使うクルマとして使いやすいのはハリアーの方でしょう。希望すれば、本革シートなどでさらなる高級感を付与できるレザーパッケージを選択することも可能です。
このようにハリアーとNXを比較することで、トヨタとレクサスが用途や価値観に応じてしっかりとクルマを作り分けていることがわかります。