2025年をもって、発売から70年たった「フライングフェザー」。戦後まもなく販売が始まった超小型モビリティとして知られる本車両はどのようなクルマなのか、その詳細を見てみましょう。
■運転免許も不要で気軽に使用できた「フライングフェザー」に注目!
「日本自動車博物館」は石川県小松市にある日本最大級の自動車博物館。その中でも、特に珍しい車両なのが「フライングフェザー」です。発売当時は運転免許不要で運転できたというこのモビリティについて、注目してみましょう。
フライングフェザーは1955年、老舗織物メーカーの子会社である「住江製作所」によって製造された車両です。デザインしたのは、富谷龍一氏。その後富士自動車に入社して「フジキャビン」を手掛けるなど、超小型経済車の開発に尽力しました。
ボディサイズは全長2767mm×全幅1296mm×全高1300mm。参考までに、スバルがかつて生産していた軽自動車「スバル360」のボディサイズが全長2995mm×全幅1300mm×全高1360mm。超小型自動車として知られるスバル360より小さいことになります。
外観はどこか馬車を思わせる装いをしています。ルーフには布製の幌を使用。また、車体に使われている薄鋼板はハンドメイドで製作されているそうです。乗車定員は2人。車体重量はわずか400kgと非常に軽く、大型バイク程度の重さになっています。
内装はハンドルに加え、計器・ボタンを数点付いているだけの極めてシンプルなデザインになっています。しかし、シートやダッシュボードなどのデザインや、フロントボンネット付近につけられたバックミラーなどは、今から見るとオシャレに思えます。
パワートレインは、空冷V型2気筒OHVと3速MTの組み合わせ。最大12.5馬力、最大トルク約2.2kgf-mを出力します。駆動方式はRRを採用。タイヤにはオートバイ用のワイヤースポークリムと、自動車用としては異様に細い19インチタイヤが使われています。
このフライングフェザー最大の特徴は、当時の法規制だと運転免許が不要だった点です。さらに前輪ブレーキの未採用といった簡素化を実施。当時の新車価格は38万円にまで抑えられています。
このように、フライングフェザーはとにかく扱いやすく、機能的なモビリティを目指していたのが見て取れます。しかし、当時の市場には受け入られず、翌年の1956年には生産が中止されました。
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総生産台数はわずか200台程度と、成功には至らなかったフライングフェザー。しかしながら、これだけわかりやすく、明確なコンセプトを備えた車両が出て来たのは、現代でも賞賛に値する車両だったといえるでしょう。