3日間で25万8406人が来場した2025年の東京オートサロン。毎年事前予告無しのサプライズがどこかで起きますが、今回は日曜日に行なわれた「TOYOTA GAZOO Racing スペシャルデモラン」の時でした。ここが世界初公開となる「GRカローラRally Concept」の走行が行なわれました。
■世界初公開となる「GRカローラRally Concept」って?
トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)は2025年1月12日に「GRカローラ」をベースにしたあるクルマを世界初公開しました。
その公開されたGRカローラは、展示ではなく白煙をモクモクと出したデモランというカタチで披露。どのような特徴があるクルマなのでしょうか。
3日間で25万8406人が来場した2025年の東京オートサロン。毎年事前予告無しのサプライズがどこかで起きますが、今回は日曜日に行なわれた「TOYOTA GAZOO Racing スペシャルデモラン」の時でした。
ここでモリゾウ選手の愛車の1台「GRヤリスRally2」と、今シーズンのヒストリックラリー選手権に参戦する「セリカGT-FOUR(ST185)」に加えて、ここが世界初公開となる「GRカローラRally Concept」の走行が行なわれました。
世界初公開シーンと言えば、「ショー会場の壇上でベールを剥がして」と言うのが一般的ですが、いきなり走行とはTGRらしいなと。
このモデルは「モリゾウ氏へのプレゼント」としてWRCを戦うTGR-WRTが開発したモデルだと言います。
モリゾウ氏は現行カローラ登場時に「お客様を虜にするカローラを取り戻したい」とGRカローラの開発を命じましたが、このモデルはズバリ「モリゾウを虜にするカローラ」と言うわけです。
GRカローラのチーフエンジニアである坂本尚之氏に聞くと、「Rally2規定に則って開発をしています。GRヤリスよりワイドなのでより低く見えてカッコよくないですか?」と教えてくれました。
GRカローラはスーパー耐久シリーズのST-Qクラスに参戦しながら水素エンジンと共に鍛えられてきた歴史があるため、「サーキット向け」に思われがちですが、実はラリーフィールドでも鍛えられてきました。
実は2024年の全日本ラリー選手権にスポット参戦を行ない、ラリー車としてのポテンシャルも鍛えてきました。このラリーコンセプトは、その知見やノウハウも活きていると言います。
今回は体調不良で欠席だったモリゾウ氏に代わり、モリゾウのヘルメットとレーシングスーツを着た豊田大輔選手がドライブ。「朝、ちょっと練習しただけですよ」と言いながらも、モリゾウ氏譲りの派手なだけでなく精緻なコントロールのドーナツターンを披露。
デモラン後に正体を明かすまでは、多くの観客は「あれは、モリゾウさんでしょ?」とマジで騙されていました。
筆者は外で見ていていましたが、クイックな動きのGRヤリスRally2に対して、より扱いやすく、よりコントローラブル、より懐の深いハンドリングだと思いました。
この辺りはGRヤリスよりもロングホイールベース、ワイドトレッド、更にはサスストロークの長さなども影響しているのかもしれません。大輔氏も試乗後に「すごく運転しやすくてビックリしました」とインプレッションも。
そんなGRカローラRally Concept、筆者はモリゾウ氏へのプレゼント以外にも開発を行なった理由があると思っています。
その辺りを坂本氏にストレートに聞くと、「どうなんでしょうね?」とかわされたものの、ひとつだけヒントをくれました。
「GRヤリスは法規の問題で北米での販売ができません。でも北米でもラリーを楽しみたいと言う声は聞いています」と。
北米とラリーの関係は欧州/日本と比べると薄そうに感じますが、実は1988年までWRCオリンパス・ラリーが開催されていましたし、現在はラリーとサーキットレースを融合させた「ラリークロス」の人気も高いです。
北米でF1人気が再燃したように、何かのキッカケでラリー人気が再燃する可能性もあるはず。そのキッカケの一つがGRカローラRally Conceptだったらいいなと。
ちなみにWRCは世界選手権でありながらも、現在は北米にラウンドがありません。
しかし、2025年のWRCカレンダーには南米のパラグアイが加えられましたし、更にラリーUSA(アメリカ国内ラリー選手権の公イベント)の主催者チームが「2026年のWRC昇格を目指している」と言う報道を筆者は耳にしています。そもそも「火のない所に煙は立たぬ」と言います。
もうひとつはこれは筆者の妄想に近い推測になりますが、GRカローラRally Conceptはモリゾウ流の「スバルWRC復帰のラブコール」じゃないかと。
これまでも一部のモータースポーツメディアから「スバルがWRCへ復帰する可能性が浮上」、「FIA会長が復帰に向けた話合いがスタートした事を公言」、「豊田氏が架け橋に」などの報道が出ましたが、スバルの大崎篤社長は「プレッシャーをかけられていますが、長い目で見てください」と語っています。
スバルがWRC復帰を悩む理由はいくつかありますが、その一つがRally1車両に適するBセグメントのコンパクトモデルがラインアップに無い事です。
ただ、一クラス上のCセグメントにはインプレッサ/クロストレックがラインアップ。
ちなみにGRカローラはCセグメントのモデルであり、モリゾウ氏は「このクラスでもRallyはできるよ」と、モノで説得しようとしているのかなと。
実は日本ではあまり知られていませんが、スバルは過去にラリーチャイナ向けにクロスオーバーSUV「XV」がベースのラリーカーを走らせていました。
それと同じ事、つまりクロストレックをベースにしたラリーカーが開発されるといいなと。
このように色々と勘ぐってみましたが、このGRカローラRally Conceptが今後どのように活用されるのか。
今回モリゾウ氏は体調不良でオートサロン欠席でしたので、どこかでズバッと聞いてみようと思っています。