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「紀伊半島の真ん中」国道168号が大変化中!? 壮大なバイパス計画「五條新宮道路」のスゴさとは “酷道”は今や過去!? 十津川村も「トンネルで丸ごとスルー」

くるまのニュース 2025年1月20日 7時10分

奈良県・和歌山県の山岳地帯をつらぬき、紀伊半島の最内陸部の南北軸となる「国道168号」が、走りやすいスムーズな道路へ改良整備中です。一体どこまで改良が進んだのでしょうか。

■気が付けばほとんど「トンネルワープ」実現済み!?

 奈良県・和歌山県の山岳地帯をつらぬき、紀伊半島の最内陸部の南北軸となる「国道168号」が、走りやすいスムーズな道路へ改良整備中です。
 
 一体どこまで改良が進んだのでしょうか。

 国道168号は、大阪府枚方市から生駒山地裏を抜けて、王寺・大和高田・御所を経て、五條からいよいよ長い長い山岳地帯へ入っていきます。日本最大の有人村である十津川村を経て、和歌山県新宮市へ到達する、総延長200km近い路線です。

 さて、山岳地帯を抜ける五條~十津川~新宮区間は、長らく延々と谷筋の狭隘区間で、急カーブが連続しすれ違いも困難な場所も多い、いわゆる「酷道」の部類でした。

 これではネットワーク道路としての役目は果たせず、十津川村など内陸エリアの緊急輸送にも支障をきたしています。そのため、丸ごと高規格化する「五條新宮道路」という壮大なプロジェクトが進められています。

 気が付けば十津川村中心部をはじめ、大部分のバイパス工区が完成し、かつての苦難の道のりがウソのように、快適な道路で谷筋を通過できるようになっています。もちろん、まだまだ事業中の区間は複数あります。

【設計中】新天辻工区 7.2km
 2018年に事業化。天辻峠を丸ごと長大トンネルでワープするもので、宗川野から阪本大橋までほぼ直線で一気に抜けていきます。古来から未開業の「国鉄五新線」の長大トンネルが掘られていましたが、それに並行する形です。

 気になる進捗ですが、まだ用地取得や設計段階。ちょうどトンネル本体の詳細設計について、担当コンサルの発注が行われているところです。

【完成】阪本工区 1.4km
 2024年3月に開通したばかり。谷斜面にへばりつくような細道区間で、バスが離合不可能な狭い隧道もあるクネクネ区間を、トンネルで一気にワープします。

【完成】辻堂バイパス 4.1km
 2018年に全通。猿谷ダムからトンネルと高架の連続で、大塔村の中心街を一気にワープしていきます。とにもかくにもクルマ1台分くらいの幅しかなかった国道の風景は、いまや過去のものになりました。

【工事中】長殿道路 2.7km
 2019年に着工。十津川村に入ってすぐの区間で、現道は切り立った谷斜面にかろうじて道路が通されていて、最低限の車幅で谷筋に沿ってクネクネ道が続き、ドライバーを疲弊させます。そこをほぼ全区間トンネルで一気に抜けていきます。

 まずは合間の谷をまたぐ橋梁の工事が先行で進められています。トンネル本体の着工はのちほどになりそうです。

■十津川村をほぼ「丸ごとトンネルで通過」可能に!?

【完成】宇宮原バイパス 1.8km
 2007年に開通。谷筋のS字カーブを「$」のように、トンネル2本でショートカットしていきます。

国道168号(現道)は道幅が狭い箇所がある(画像:奈良県)

【設計中】宇宮原工区 1.2km
 2020年に着工。有名な「谷瀬の吊り橋」の北側の急カーブを、トンネルと橋でショートカットします。現在は測量設計の段階です。

【完成】川津道路 2.0km
 2016年に全通。谷瀬の吊り橋の南側を、トンネルショートカットと張り出し高架でスムーズ化します。

【工事中】風屋川津工区 5.7km
 2020年に着工。風屋ダム貯水池の谷筋の崖っぷちクネクネ区間を、長大トンネルで一気にワープし、ダム下流まで抜けていきます。ちょうどトンネル詳細設計が発注されたところで、現場では谷をまたぐ橋梁の工事が先行しています。

【完成】十津川道路 6.0km
 2019年に全通。十津川村役場から平谷の温泉郷までをほぼトンネルでノンストップでつなぎ、まさに「ワープ」したかのような移動が可能になりました。初訪問で、十津川の渓谷の風景を楽しみたい場合は、旧道を走行するほうがいいでしょう。

【設計中】十津川道路2期 5.6km
 2020年に事業化したばかり。十津川道路の延伸区間として、平谷の温泉郷のオメガカーブを長大トンネルで丸ごとショートカット。さらに果無、二津野の厳しい山岳区間も一気にワープして、和歌山県境付近まで到達してしまいます。1期区間と合わせれば、十津川村の生活風景を車窓に全く見ないまま、丸ごと通過してしまうことが可能になります。

 現在はまだ設計段階です。

■和歌山県側もかなり開通済み!?

【完成】十津川道路・本宮道路 計5.4km
 2013年に全通。県境部を立派な高架道路で一気に飛んでいき、和歌山県側は連続トンネルで通過していきます。

国道168号(現道)は道幅が狭い箇所がある(画像:奈良県)

【完成】熊野川・本宮道路 2.6km
 2006年開通。熊野本宮をすぎて紀伊田辺方面と別れ、東に向きを変えた先のトンネルショートカット区間です。

【設計中】相須工区 6.4km
 2020年に事業化したばかり。瀞峡方面から合流してくる宮井橋周辺のクネクネ区間を、トンネルや拡幅などでスムーズにします。現在は測量設計の段階です。

【完成】日足工区 2.0km
 2014年に全通。旧熊野川町の中心部を丸ごとバイパスします。それまで街の中を右左折で抜けていたのが、高架橋で最短距離であっさり通過できるようになりました。

【工事中】相賀・高田工区 4.8km
 2019年着工。浅里集落のある狭い谷筋区間を、トンネル主体で一気に抜けていきます。「M」の字の下側をショートカットしていくような線形です。トンネル工事が進んでいて、2023年に1号トンネルが貫通を迎えています。しかし2号トンネルでは重金属の発生に手を焼いていて、別途対策に迫られています。

【完成】越路道路 1.9km
 2009年に全通。熊野川河口で新宮市街へ抜ける最後のトンネルが狭隘だったのを、広い新トンネルで通し、事業でした。

※ ※ ※

 このように、奈良盆地から太平洋岸まで長い長い山岳道路だった国道168号は、今や大部分が急カーブ急勾配・狭隘区間とは無縁になりつつあります。大型車も観光バスも走行しやすく、今や半島南部への短絡アクセスを担うネットワーク道路にまで成長しています。

 もちろんだいたいはトンネルであっという間に抜けてしまうので、旅行として峡谷美を楽しみたい場合は、物足りなさを感じるかもしれません。その場合は、バイパスを少し外れて、昔ながらの旧道をのんびりと走行するのもいいかもしれません。

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