ガソリンスタンドの床面には必ず傾斜がつけられています。その背景には消防法や環境保護に基づいた重要な意図が込められています。一体なぜ斜めになっているのでしょうか。
■床面が斜めになっている理由とは?
2025年1月16日からガソリン補助金が撤廃されたことで、ガソリンスタンドでは1リッターあたり5円ほど、店頭小売価格の値上げが実施されました。
この値上げ前にガソリンスタンドに駆け込んだユーザーも多いことでしょう。
そんなガソリンスタンドですが、床面に必ず傾斜がつけられていることをご存知でしょうか。
日本国内のすべてのガソリンスタンドでは、この傾斜が法律に基づいて設置されています。
傾斜がある最大の理由は、漏れた燃料や雨水、または可燃性ガスが滞留するのを防ぐためです。
ガソリンは揮発性が高く、引火性が非常に強いため、漏洩した場合には火災や爆発のリスクが高まります。
そのため、万が一ガソリンがこぼれた場合に備えて、地面を傾斜させることで燃料が特定の方向へ流れるように設計されているのです。
消防法および関連規制では、危険物取扱施設における漏洩対策が義務付けられており、ガソリンが周囲に拡散せず、適切に回収または処理できるようにする必要があります。
実際に消防庁が公開している「給油スペースにおける漏洩ガソリンの滞留防止について」によると、給油スペースの勾配は1/100から1/60が目安となっていると記されています。
くわえて、給油スペース周りの排水溝までの勾配は給油スペースよりも大きい勾配となるのが一般的とされているようです。
そのため万が一ガソリンが漏れた場合でも、排水口や専用の貯留設備に集まるようになっています。
さらに、雨水とガソリンが混ざって下水道に流れ込むのを防ぐために、オイルセパレーター(油水分離装置)が設置されていることが一般的です。
これらの工夫により、ガソリンやその他の油分が環境に悪影響を及ぼさないように管理されています。
しかし、ガソリンスタンドの傾斜は、ユーザーに直接影響を与える可能性がいくつか考えられます。
1つ目は、クルマを正しく停車させることです。
傾斜があることで、クルマが勝手に動き出す可能性があります。
また、エンジンをかけたままにすると、火花が発生する可能性があり、ガソリンの蒸気に引火して火災や爆発が起こるリスクが高まります。
これは消防法によっても厳しく規定されており、スタンド内でのエンジン停止はユーザーの義務です。
パーキングブレーキを確実にかけ、エンジンを停止させ、クルマが動かないように確認してから給油するようにしましょう。
また給油の際にガソリンをこぼした場合、傾斜によって速やかに広がる可能性があります。
給油中はノズルをしっかり握り、ガソリンを溢れさせないようにしましょう。
もし万が一こぼれた場合は、すぐにスタンドのスタッフに報告して対処するようにしましょう。
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これらのガソリンスタンドの地面に傾斜がある設計には、消防法や環境保護に基づいた重要な意図が込められています。
給油自体は日常的な行為ですが、その背景にある安全対策を知り、今一度正しい給油を心がけてみてはいかがでしょうか。