ホンダは、「人間尊重」のフィロソフィーに基づく人事の取り組みについて説明会を2025年1月17日に開催。この説明会には貝原 典也副社長などが登壇し、概要を明らかにしました。
■ホンダの新たな人材戦略とは
2025年1月17日にホンダは、人事戦略に関する説明会を実施しました。
ホンダの「人間尊重」のフィロソフィーに基づく人事の取り組みとはどのようなものなのでしょうか。
会社にとって社員はかけがえのない財産といえます。
そうしたなかでホンダは、「Honda フィロソフィー」の基本理念の「人間尊重」をベースに「主体性」「公平」「相互信頼」という3つを人事の3原則としてそれぞれの社員が働きやすい職場づくりに注力してきたと言います。
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●主体性
それぞれの個性・自由な発想・意思を尊重する
●公平
年齢・学歴・国籍などにとらわれることなく、誰もがハンディのない公平で自由な競争の機会を提供する
●相互信頼
お互いの立場を尊重し、信頼し合い、認め合い、誠意を尽くして自らの役割を果たす
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こうした3原則をベースに今後の総合モビリティカンパニー・ホンダの進化に向けて加速させていく内容が明かされました。
説明会には、ホンダの取締役 代表執行役副社長・貝原 典也氏、コーポレート管理本部 人事統括部長・安田 啓一氏・コーポレート管理本部 人事統括部 人事部長・足立 竜平氏が登壇。
貝原副社長は説明会の冒頭で次のように語っています。
「ホンダは『技術』と『人』を大事にしてきました。
これまでもビジネスアップデートやTech Meetingなどで技術は披露してきましたが、今回『人』に関して発信するのは初めてです。
主に、グローバル20万人のうち日本の4万人の社員に関する話をしていきます。
今回はホンダにおける人事の考え方、総合モビリティカンパニーの進化に向けた人事の取り組み、具体的な人事施策をお伝していきます」
現在、各自動車メーカーは大きな転換期を迎えています。ホンダにおいては、プロダクト・モビリティの進化だけでなく、様々な分野での戦略的チャレンジも求められています。
こうした戦略的チャレンジのなかで重要となるのが「人(社員)」です。
そのホンダの人事において今後の大きなテーマとして、短中期の視点で「事業上の注力領域の人材の量的・質的充足」、そして中長期の視点で「従業員の内発的動機の発起と多様な個の融合」の2点を掲げています。
このなかで人材の量と質の観点では、事業戦略の到達点からバックキャストした将来必要な人材ポートフォリオ形成を図るべく、ソフトウェアやバッテリー、デジタルといった「電動化」「知能化」における注力領域に必要な人材を迅速に充足することに加えて、それぞれの従業員に求められる知識・スキルの拡充を進めていくとしています。
またそれぞれの人材の活用・処遇では、さらなる変革やイノベーションの創出に向け、適材適所、実力主義を今まで以上に徹底して進めていくようです。
また具体的な人事の取り組みについては、「個の違いを認め合い、尊重する企業風土」「大胆かつ柔軟な人材獲得と育成」「主体性の尊重と実力主義の徹底」の3つを柱に展開していくとしています。
「個の違いを認め合い、尊重する企業風土」では、多様な働き方に対応するべく「選択定年制」は2017年に導入済み。今後は高い技術・技能を持つ一部の社員に対して「定年制度の廃止」を2025年6月から導入。
また以前から自由度の高い「フレックスタイム制」に加えて個人の事情や業務効率を向上させるための「リモートワーク」が導入されている他、有給休暇取得や短日勤務の導入なども行ってきたと言います。
また企業風土を強化・進化させていくために変革期における行動要件として「Honda 6 ACTIONS for Change」を明示した「企業風土改善プログラム」を2025年4月から開始するようです。
「大胆かつ柔軟な人材獲得と育成」では、今後課題となるソフトエンジニアの採用強化の一環として働ける場所の拡充を強化するため、これまでの大阪、名古屋、福岡、大宮に加えて2025年4月には大阪に新たなオフィスがオープン。2026年はじめには東京都内にもオフィスが出来ると言います。
その他、海外から日本への採用拡充、育成の観点ではソフトウェア・電動化といった注力領域においてリテラシー向上を行っていくとしています。
なお注力領域の人材育成に関して、ホンダは2030年に向けて今後5年で約150億円の人材投資を行ってくことを明かしました。
その他、既存社員の学びの支援、新たな価値の探索プログラムとして「MINERVA」というフィールドワークも行っているようです。
最後に「主体性の尊重と実力主義の徹底」では、2025年6月に役職者の給与・評価制度を大幅に改定。
これにより、経営事業基盤の変革をリードする「トランスフォーメーション職」と、技術革新と新事業の創出をリードする「イノベーション職」の2つの給与・評価体系を導入するとしています。
トランスフォーメーション職は、役割と報酬がダイレクトに連動することで完全な脱年功・脱一律な制度となり、実力によって特定のポジションにつけば、年齢に関係なく実力に応じた報酬を得られるものです。
一方でイノベーション職は、能力や専門性の発揮をダイレクトに処遇に反映するものとなっています。
また賞与水準そのものも引き上げていくとして、とくに部長職においては年収で200-300万円の引き上げを検討しており、報酬の競争力を強化していくとしています。