ソニーが展開するレーシングシミュレーションゲーム「グランツーリスモ」には、世界の自動車メーカーのコンセプトカーが数多く登場しています。「インフィニティ コンセプト ビジョン グランツーリスモ」もそのひとつです。
■今なお通用する「美麗」スタイリングがすごい!
2023年に実写映画にもなったレーシングシミュレーターゲーム「グランツーリスモ」に登場した架空のレーシングカーのなかには、魅力的なコンセプトモデルが多数登場します。
なかでも2014年に発表された、スタイリッシュで攻撃的なデザインをもつ「インフィニティ コンセプト ビジョン グランツーリスモ」は、いまなお注目される1台です。
インフィニティ コンセプト ビジョン グランツーリスモは、日産の海外向け高級車チャンネル「INFINITI(インフィニティ)」の協力のもとで制作された、架空のレーシングカーです。
マシンの構想には、日産・インフィニティのデザイン部門や車両開発部門が携わっており、想像上のマシンとはいえ完成度は非常に高いもので、2016年5月にはイギリスで実物大サイズに製作されたコンセプトモデルも展示されています。
このモデルが初公開となったのは2014年12月ですので、デビューからすでに10年以上が経過しています。
しかしこのエクステリアデザインは、今も世界中で通用するように筆者(自動車ジャーナリスト 吉川 賢一)は考えます。
2014年当時、インフィニティのデザインを統括していたアルフォンソ・アルベイザ氏は、インフィニティ コンセプト ビジョン グランツーリスモのデザイン構想について、「レースで得た知識を元に、どうすればレースのロマンが息づくサーキット生まれのGTカーがつくれるのかを考えた」としています。
そのため、世界中にある日産とインフィニティ全てのデザインスタジオがコンペを行ったというから、力の入れようは相当なものです。
結果、最終デザインには北京にあるデザインスタジオの案が採用となり、最初のキースケッチからファイナルモデルまで、全てをインフィニティデザイン北京で行ったといいます。
中国の若いデザイナーたちは、インフィニティのヘリテージを学び、そのうえで彼らが渇望する想いを「ビースト(獣)」と定め、デザインに押し込めたといいます。
コンセプトは「センシュアリティ&ビースト」(ぞくぞくする獣)。官能的で魅力的で未来的で、見る者をひと目で虜にするような、ワイルドで力強い外観を持ったマシンでした。
フロントから見ると、鋭いまなざしやワイドで力強いグリル、そして、いたるところに見られるシャープなディテール、タイヤを包み込む力強いフェンダーの曲線、後部には迫力ある大型リアウィングなど、フロントからリアにかけての造形が、野獣のような力強さを醸し出しています。
パワートレインは、4.5リッターのV型8気筒自然吸気(NA)エンジンと1つのモーターを組み合わせたハイブリッドユニットで、トランスアクスルレイアウトによる後輪駆動、かつ45:55の絶妙な前後質量バランスを達成しています。
モーターは十分すぎる低域トルクを与えており、V8 NAエンジンの官能的なサウンドと共に、トップエンドまで加速します。
車両のダイナミクスは、腕に覚えのあるインフィニティの若手エンジニアが、バーチャルテストを繰り返し実施。
空力に関しては、アンダーフロアの空気流コントロールと前後ディフューザー、そして、特異な形状のリアスポイラーでダウンフォースを確保したといいます。
車両パッケージングを担当したエンジニアによると、後輪駆動レイアウトにより、積極的にリアを流すような走りの楽しさを体感でき、さらには(ゲームで)リプレイを見たくなる楽しみも目指したといいます。
※ ※ ※
2014年当時のインフィニティは、F1のレッドブルレーシングとマーケティング契約を交わし、マシンやドライバーのレーシングスーツに「INFINITI」ロゴを掲載するなど、イケイケのブランドイメージを目指していました。
結果的に2015年シーズンを以て契約終了となりましたが、当時のインフィニティは、若々しさと勢いを強く感じられたものでした。
現在の北米インフィニティのラインアップは、クロスオーバーSUVが4台、セダンが1台と寂しい限り。この先、日産とともにインフィニティがどのような道を進むのか、要注目です。