トヨタ「クラウン」の最上級グレードとして、かつて「マジェスタ」という特別なモデルがラインナップされていました。日本では消滅した同車ですが、サウジアラビアではマジェスタを名乗るモデルが販売されているようです。
■特別なクラウンだった「マジェスタ」とは?
トヨタ「クラウン」といえば、同社を代表する高級車です。
現行モデルは2022年にフルモデルチェンジした16代目で、従来からの「セダン」に加え、「クロスオーバー」「スポーツ」「エステート」といったSUVタイプも用意されます。
時代のニーズに合わせて常に進化を続けるクラウンですが、かつては上位モデルとして特別なモデルが設定されていました。それが「クラウン マジェスタ(以下、マジェスタ)」です。
現在は、国内市場で姿を消したマジェスタですが、実は海外でその名前が復活していました。
マジェスタは、1991年にフルモデルチェンジした9代目クラウンと同時にデビュー。クラウンシリーズの“頂点”として、トヨタの技術とデザインの粋を集めた1台でした。
マジェスタの登場には、トヨタが1989年に発表した「セルシオ」が関係しています。
セルシオは、北米市場では「レクサスLS」としてデビューしており、豪華さや高性能さで欧米の高級車と肩を並べる存在となりましたが、当時の日本市場にはレクサスブランドが導入されておらず、セルシオはトヨタブランドから販売されることになります。
そうすると、それまで高級車として君臨していたクラウンの立場が揺らぐことになり、クラウンの最上級グレードを強化する必要性に迫られたトヨタは、8代目クラウンの最上級グレード「4000 ロイヤルサルーンG」を設定。
そしてこのグレードがマジェスタへと進化し、セルシオに引けを取らない豪華さとパフォーマンスを提供する“最上級のクラウン”となったのです。
そんなマジェスタの特徴の1つとして、「4リッターV型8気筒エンジン」が搭載されていたことが挙げられ、この大排気量エンジンは、ほかのクラウンとは一線を画す最上の動力性能を誇ります。
加えて、エレクトロマルチビジョンや運転席エアバッグといった当時の最新技術だった安全装備も標準搭載されました。
その後もマジェスタは、クラウンの全面刷新とともにさらなる進化を遂げ、特に2004年に登場した4代目マジェスタは、アクセル、ブレーキ、ステアリングを統合制御してクルマの挙動を安定させる「VDIM」や、量産車として世界初の低速追従モード付きのレーダークルーズコントロールを搭載するなど、高度な先進技術が投入されました。
しかし、時代の変遷とともにマジェスタはその独自性を失っていき、2013年に登場した13代目クラウンにおいてマジェスタは、「ロイヤル」「アスリート」と同列の“シリーズのひとつ”へと統合。
2018年に登場した14代目クラウンでは、マジェスタの名前がついに消滅してしまいました。
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日本市場で姿を消したマジェスタですが、2023年にその車名が復活。サウジアラビアで販売されるクラウンクロスオーバーの最上級グレードに同名が付けられました。
5年ぶりに車名が復活したマジェスタですが、あくまでもクラウンクロスオーバーのグレード名として採用されたもので、かつてのマジェスタと直接の関係はありません。
サウジアラビアのマジェスタは、日本仕様のクラウンクロスオーバー RSと同じく、2.4リッター直列4気筒ターボエンジンにモーターを搭載したハイブリッド車。
21インチの大径ホイールが採用されたほか、内装はシフト回りやドアパネルに木目調パーツが備わるなど、上質感のあるインテリアを備えています。
現地での価格は、22万9195サウジアラビアリヤル。日本円に換算すると約948万円で販売されています。