「登坂車線」は、長い上り坂が続く山岳部などの高速道路や主要国道に見られますが、どのように使うのが正しいのでしょうか。また空いている場合は、追越しなどに使用しても良いのでしょうか。
■「登坂車線」は誰がどのようにして使うのか
高速道路や主要国道などで時々見かける「登坂車線」は、誰がどのように使うものなのでしょうか。
他の車線よりも空いていることも多いですが、追い抜きや追い越しのために走行しても問題ないのでしょうか。
高速道路や山間の一般道などの長い上り坂には、登坂車線が設置されていることがあります。
これは、荷物を多く載せたトラックなどの大型車が使うことを想定されたもので、NEXCO東日本では次のように説明しています。
「斜度のきつい上り坂に設置されている車線で、大型トラックなど重量のある車両は、どうしても最低速度(時速50km/時)を切ってしまうことがあり、周囲の交通の支障となります。
そこで、そうした車両のために低速走行用の車線を設け、通常の交通を支障なく通過させられるようにしています」
荷物を多く載せて重くなったトラックなどの大型車は、急な上り坂で速度が上がりにくいだけでなく、じわじわと減速してしまうことがあります。
これによって後続車も減速しなければならず、渋滞を引き起こしたり、あおり運転を生じさせたりする原因にもなるかもしれません。
道路構造令第21条では、登坂車線を「一般道であれば勾配が5%、設計上の速度が100km/h以上の道路であれば勾配3%以上の道路に設置できる」としています。
もちろん走行できるクルマに制限はないため、大型車でなくとも、スピードが出せない時などには普通乗用車でも走行可能とされています。
ただしその使い方には、十分な注意が必要です。
■登坂車線を使った「追越し」は明確な「違反行為」!
登坂車線はあくまで低速走行するクルマのための車線であることから、走行車線が混雑しているという理由で登坂車線を通行することはできません。
特に登坂車線のほうが空いている時、登坂車線を使って追い越しをすると、交通違反となってしまうため注意が必要です。
交通違反となる根拠は、道路交通法第28条で「他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両の右側を通行しなければならない」と定められているからです。
しかし、登坂車線は基本的に車線の最も左側に設けられることから、登坂車線を使った追い越しは左側の車線からの追い越しとなってしまうのです。
この「追越し違反」で取り締まられると、違反点数2点に加えて普通車で9000円の反則金を科される可能性があります。
また登坂車線は、高速道路上に設置された場合でも一般道という扱いとなるため、最高速度が60km/h以上の区間であっても、60km/h制限が適用されます。
なお道路標識で指定されている場合はそちらが優先となるため、標識をよく確認しておくことが大切です。
さらに高速道路上に設置された登坂車線は、それ以外の車線と同様に駐停車禁止です。
事故や故障などやむを得ない事情で駐停車しなければならない時は、ハザードランプを点灯させて三角停止板や発煙筒を設置するなど、後方の安全確保を行いましょう。
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登坂車線は主に大型トラックなど、上り坂で速度の出せないクルマが通行することが想定されていますが、乗用車でも使うことができます。
ただし大型トラックは急加速や急減速ができないため、しっかりと車間を確保して進入するなどの配慮も大切です。