二輪車と四輪車の両方を製造しているスズキは、かつてクルマとバイクの要素を融合させたユニークなモデルを公開していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■クルマなのにタンデム仕様!
世界には数多くの自動車メーカーがありますが、そのなかバイクも製造している企業は意外と少数派です。
ホンダ、スズキ、そしてBMWはその稀有な例に該当します。
これらのメーカーは、四輪車と二輪車という異なる乗り物の開発を両立させ、いずれの分野でも高い評価を得てきました。
そんな中、スズキが2021年に発表したコンセプトカー「ミサノ(Misano)」は、「クルマとバイクの融合」をコンセプトに掲げ、注目を集めました。
このモデルは、従来の枠組みを超えた革新的なデザインと、バイクの魅力を随所に取り入れた仕様で、オートモビル業界に新たな可能性を示しています。
ミサノは、スズキとヨーロッパ最大級のデザイン学校「IED(Istituto Europeo di Design)」とのコラボレーションにより生まれたEVオープンスポーツカーです。
名前の由来となったのは、イタリアのミサノ・ワールドサーキット。
バイクレースの聖地として知られるこのサーキットの名を冠し、モータースポーツ愛好家たちの心を刺激する1台となっています。
そのデザインやアイデアには、バイクの要素が色濃く反映されていますが、あくまで四輪車というフォーマットを維持しつつ、新しい乗り物の可能性を探るコンセプトモデルとして設計されています。
ミサノのボディサイズは、全長4000mm×全幅1750mm×全高1000mmとコンパクトなボディに、斬新なレイアウトを採用しているのが最大の特徴です。
運転席と助手席はタンデム(二人乗りで前後に配置)とされ、バイクのシート配置を彷彿とさせます。
また、左右対称ではなく片側に寄せたシート設計により、空いたスペースにはバッテリーや荷物を収納するためのトランクが配置されています。
操作系にもバイクらしいアプローチが見られます。
ハンドルはバーハンドルをモチーフとしたコントロールスティックを採用し、ウインドシールドもバイク風に仕上げられています。
これらの要素が、クルマとバイクの融合を体現するデザインを実現しています。
ミサノの外観は、機能性と美しさを兼ね備えています。
フロントにはスズキの「S」をモチーフにした大胆なLEDヘッドライトを配置し、サイドには空気の流れを最適化するための台形メッシュのエアアウトレットが設けられています。
これにより、空力性能を高めつつ、スポーティーで洗練されたスタイリングを実現しました。
リアデザインは、大型ディフューザーと立体的な3D形状のテールランプが特徴で、後方からも圧倒的な存在感を放ちます。
さらに、OZレーシング製の大径ホイールが、車両全体のスポーティーさを引き立てています。
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クルマとバイクはそれぞれ異なる楽しさを提供してくれます。
クルマは快適性や利便性に優れ、あらゆる天候でのドライブを可能にします。
一方、バイクは風を感じながら走るスリルやワインディングでの軽快な操縦性が魅力です。
そんな2つの世界を1つにまとめようとしたのが、このミサノというモデルです。
残念ながら、ミサノはあくまでコンセプトモデルであり、市販化の予定は現時点でありません。
しかし、その先進的なデザインやユニークなアイデアは、自動車業界や二輪車業界に新たな刺激を与えたことは間違いありません。
もしミサノのようなモデルが将来市販化されるとすれば、クルマとバイク双方の魅力を兼ね備えた「新ジャンルの乗り物」として、確実に多くの注目を集めることでしょう。