高速道路の合流などで、加速車線の先頭で本線に合流する「ファスナー合流」は、ドライバーの間で賛否両論が分かれているようです。一体どのようなものなのでしょうか。
■渋滞の先頭まで行って合流する「ファスナー合流」とは
渋滞している高速道路への合流方法として推奨されている「ファスナー合流」。
合流する側のクルマが「合流部の先端部分」まで進んでから、本線を走るクルマと1台ずつ交互に合流する、という意味ですが、「ズルい」と感じるドライバーもいるようです。
なぜこのような合流方法が推奨されているのか、実践例をまじえて解説します。
まず、ファスナー合流が推奨されている理由ですが、渋滞の解消と、安全性の向上につながるからです。
高速道路を管理するNEXCO中日本の担当者に問い合わせると、以下のような回答がありました。
「かつて名神一宮JCT上り線付近では、東海北陸道から合流する車両が加速車線のいたるところから名神に合流するため、名神や東海北陸道の交通の流れを悪くし、一宮JCTの渋滞発生の一因となっていました。
そこで、東海北陸道から名神上り線に合流する箇所に設置するラバーポールを加速車線の先頭方向まで延伸することによって、規則正しく1台ずつ合流するファスナー合流を促し、合流時の交通の流れをスムーズにしました。
また同様の対策を、下り線でも実施しています。
運用開始から2ヶ月間の交通状況を前年同時期と比較した結果、交通量はほとんど横ばいであったにも関わらず、名神と東海北陸道を合わせた渋滞による損失時間が約3割減少しました。
現状においてもこのような効果を期待して、一宮JCTの対策を継続しつつ、下り線一宮ICの合流部でも対策を実施中です。
いたるところから合流するよりも、先頭1点で合流したほうが車両の錯綜が少ないので、安全面からも有効であると考えており、引き続き検証を続けます」
上記の回答のとおり、ファスナー合流による渋滞の解消効果についてはすでに証明されており、安全面の効果についても現在検証が行われているのです。
すべての合流地点でファスナー合流を促す対策ができれば理想的なのですが、加速車線に充分な長さが無いと対策することができないため、まだまだ対策が行えていない合流地点が多いのが実情。
海外では、渋滞が発生していない状況でも交互に1台ずつ合流することが義務付けられている国もあり、守らない場合は違反に該当するというケースも珍しくありません。
■SNSでは「ファスナー合流」に“賛否両論”の声!
このように、渋滞の解消と安全面の向上から推奨され、徐々に定着の進むファスナー合流ですが、これに対してSNSでは様々な反響が見られます。
「ファスナー合流をすれば全体的な流れが早くなる」「全員が全員ファスナー合流すれば最大効率で消化できる」といった肯定的な意見が多いものの、中には「東京に住んでいたときはファスナー合流していたけれど、関東圏以外の地方ではズルい扱いになる」「ファスナー合流しないで手前で合流する人も多いよね」との投稿もあり、全国的に完全に浸透しているとはまだ言えないようです。
ファスナー合流が必要なのは渋滞時の合流のみなのですが、渋滞していないときもしなければいけない、と誤解しているドライバーも多く、「ひとりひとりが理解できるように免許取得の段階で指導に組み込むべき」「看板や標識などでわかりやすいように周知したほうがいい」などのように、正しい知識を広めることの必要性を説くコメントも見られます。
ファスナー合流をする際のコツについて、先述のNEXCO中日本の担当者は以下のように述べました。
「渋滞中は合流車線を『先頭まで』しっかり使い、ゆずりあいの精神で1台ずつ『交互に』合流をお願いします。
なお渋滞していない場合は、ファスナー合流をする必要はございません」
推奨されるのは、あくまでも渋滞時のことだということもしっかり認識する必要がありそうです。