昨年12月、アメリカのカーオークションサイトで、真っ赤なボディカラーの1998年型日産「スカイラインGT-R」が日本円で約1500万円の価格で落札されました。どのような個体なのでしょうか。
■生産台数はわずか12台!? 程度抜群な”幻のR33GT-R”
2024年12月3日、アメリカの自動車オークションサイト Bring a Trailer」にて、日産「スカイラインGT-R」(BCNR33型)が9万8888ドル(当日レート換算で約1484万円)で落札されました。
その高値の理由は何なのでしょうか。
今回のオークションを開催したのは、アメリカ・カリフォルニア州に本拠地を置くオークショニアのBring a Trailerです。日本を含む世界各国の様々な年代・タイプの自動車やバイクのオークションを開催しています。
オークションに掛けられたのは、日産自動車が1995年から1998年にかけて生産したスポーツカー、BCNR33型スカイラインGT-R(以下、R33GT-R)です。
「スカイライン」シリーズの最速バージョンであるGT-Rは、1960年代から1970年代にかけて国内レースで50勝以上を上げた伝説的なモデルです。
GT-Rは1973年に発売した4代目スカイライン、通称“ケンメリ”GT-Rをもって一度生産中止となりましたが、1989年に8代目「R32型」スカイラインで復活。
ドイツの難コースで、世界の名車が開発現場として使う「ニュルブルクリンク」サーキットを徹底的に走り込んで開発したR32GT-Rは、人気絶頂だったグループAカテゴリレースでの全勝をはじめ、数々の偉業を成し遂げました。
そんなR32GT-Rを超える“R”を、という大きな期待をかけられたR33GT-R。
折しもバブル経済の崩壊やスカイライン自体のボディサイズ拡大など、非常に厳しい条件が立ちはだかりましたが、ニュルブルクリンクでのR32型のラップタイム「8分20秒」の更新を目指して開発が進められました。
結果、R33GT-RはR32型より約21秒速い「7分59秒」をマーク。この記録にちなんだ「マイナス21秒ロマン」のキャッチコピーを引っ提げ、1995年1月、改造車ショーの最高峰「東京オートサロン」で鮮烈なデビューを飾りました。
さて、今回出品されたのは1998年式のR33GT-Rで、出品地はオーストラリアです。走行距離は7万8000キロで、内外装は非常にきれいな状態です。
R33としてはモデル末期のこの年に生産された個体、というだけでも非常に珍しいのですが、出品車両は中でも群を抜いて珍しい純正ボディカラー「アクティブレッド(カラーコード:AR2)」をまとったモデル。
新車時に、この鮮やかなソリッドの赤色を塗られた車両は、わずか12台程度しか存在しないといわれています。
また、出品車両のエンジンは「NISMO S1」仕様へと換装されています。これは日産のモータースポーツ活動を手掛ける「ニスモ」が製作したコンプリートチューニングエンジンで、熟練のメカニックによる高精度な調整と組み付けが施されているのが特徴です。
出品にあたっては、出力を測定できるシャシダイナモメータでのテストが実施され、374.9馬力を叩き出したようです。
フロント左右フェンダーにはNISMO S1エンジンが搭載されていることを示すステッカーと、換装を担当した「大森工場」のデカールが貼られ、エンジンのヘッドカバーもレッドの結晶塗装が施されています。
さらにブレーキシステムは2世代後のモデルに当たる日産「GT-R(R35)」に採用されたブレンボ製を装着し、アルミホイールには軽量なニスモ「LM GT4」の19インチの貴重なものをチョイスするなど、足回りもバランスよく強化されています。
もともと高度なパフォーマンスを持つR33GT-Rの魅力を、確実な方法で引き出した一台と言えるでしょう。
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R33GT-Rのなかでも非常にレアな個体ながら、それに臆することなく贅沢なモディファイが施された今回の出品車両。
その一方で、CDデッキやメーター、シート、シフトノブ、4本スポークのステアリングなどは純正のまま。特にデッキやステアリングなどは多くの個体が社外品に変えられてしまっているので、そのまま残っているのはとても貴重です。
こうしたことが評価されたのか、R33 GT-Rとしては異例の高額落札で、新車時の3倍にも匹敵する1500万円に上りましたが、実際にその内容を考えると納得の行くものなのかもしれません。