ホンダは、「二輪事業の取り組みについて説明会」を開催しました。今後の二輪事業における展開はどうなるのでしょうか。
■ホンダのものづくりの原点となる「二輪事業」 今後どうなる?
2025年1月28日にホンダは、「二輪事業の取り組みについて説明会」を開催しました。
そこでは、今後の二輪事業における展開などが語られていますが、ホンダの屋台骨とも言える二輪事業はどうなるのでしょうか。
ホンダは、四輪、二輪をはじめパワープロダクツ、マリン、航空、水素、モバイルパワーパックなど多彩な事業を展開しています。
元々は1949年にホンダ初の量産二輪車として生産を開始した「ドリームD型」を皮切りに、1950年代には自転車用補助エンジンを搭載する「カブ号F型」を発売。独自の販売網と優れた二輪製品で急成長しました。
そして1960年代には日本の四輪市場への参入。同時に二輪の世界戦略も始まります。
その後も事業を拡大させていき、海と空など幅広い分野でのモビリティを展開しています。
そんなホンダの原点でもあり、現在は、世界各地で二輪事業を展開。
日常の生活に使われるコミューターから週末のレジャーに使われる大型モデル、電動車まで幅広い商品ラインアップしています。
現在23の国と地域、37の生産拠点において年間2000万台を超える生産能力を持ち、3万店以上のホンダ販売店を通じた販売網を形成しています。
そんなホンダの2024年度販売台数は、世界シェア約4割となる2020万台の見通し。
このうちインド、インドネシア、タイ、ベトナムなどアジアでの販売台数が全体の85%(1717万台)、日本、欧州、米国は6%(120万台)をそれぞれ占めています。
そんな世界における二輪車の需要は、最大市場であるインドを含めた南西アジア、インドネシア、フィリピン、ブラジルを始めとする中南米などのグローバルサウスと呼ばれる地域を中心に、人口増や所得向上を背景にさらなる伸長を見込まれています。
地域別でいえば、二輪車において最大市場となるインドで、通勤・街乗りに使用される最量販スクーター「ACTIVA」をはじめ、若者向けスクーター「Dio」。
地方を中心に幅広い用途で使われるライトモーターサイクル「Shine」、また高付加価値ライトモーターサイクル「SP(エスピー)」など、ユーザーのニーズに合わせて魅力ある商品ラインアップを拡充。
また、販売ネットワーク・サービスの充実などの販売施策も強化するようです
また、さらなる拡販に向けては、生産工場の自動化や、現地サプライヤーの積極的な開拓・活用など、インド事業強化の取り組みを推進。
インドで培った商品力、競争力の高い商品は、インド国内だけでなく、お客様のニーズが近い中南米へ輸出するなど、グローバルで効率的な商品展開を行うことでさらなる事業拡大を図っていくとしています。
また欧州では、大型FUNモデルの需要が高いことから「CB」「CBR」「Africa Twin」「Rebel」シリーズなど、各商品の魅力向上に継続的に取り組むとしています。
さらに「HORNET」「TRANSALP」といった欧州において歴史のある商品ブランドを復活。
さらに、ライディング体験の質の向上につながる技術「デュアル・クラッチ・トランスミッション」「Honda E-Clutch」の提供など、「操る楽しさ」を求めるライダーの嗜好に応える商品ラインアップや技術を拡充してきました。
また、二輪車として世界で初めて「電動過給機」を搭載したV型3気筒エンジンを新たに開発。今後FUNモデルへの適用を予定しているといい、量産化に向け引き続き開発を行っているようです。
これらの取り組みにより、二輪車の全体市場は現状の5000万台規模から、2030年には電動車を含め6000万台規模に成長する見通しだと言います。
ホンダでは、この二輪市場の成長、需要拡大に確実に対応するため、「より競争力の高い商品の継続的な投入」と「電動化を含めたカーボンニュートラルへの対応」にて、二輪事業のさらなる盤石化を進めていくとしています。
これらの取り組みにより、2018年度では大半がアジアに偏っていた二輪事業の収益は、2023年度には欧州を含めた先進国、南米など、グローバルでバランスよく収益を獲得できるようになり、収益額の増大はもちろん、事業体質の向上にも大きく貢献したと説明しています。
■二輪のカーボンニュートラルや電動化はどうなる?
ホンダは、2040年代に全ての二輪製品でのカーボンニュートラルを実現することを目指しています。
そのため、内燃機関の進化にも継続的に取り組みながら、環境戦略の主軸として二輪車の電動化を加速。
これに加え、環境負荷ゼロの循環型社会を目指したコンセプト「Triple Action to ZERO」の方針のもと、脱炭素化に向けたさまざまな取り組みを進めています。
ホンダでは、二輪車ならではの幅広いニーズや使用環境に対応しながらカーボンニュートラルを実現するため、内燃機関の環境負荷低減にも継続的に取り組んでいるようです。
具体的には、燃費改善によるCO2削減に加え、ガソリンやエタノールなどの混合燃料に対応するモデルとして、ブラジルで導入実績のあるフレックスフューエルモデルの適用地域の拡大を進めてきました。
インドでは他社に先駆けてフレックスフューエル対応の「CB300F」を投入するなど、地域のエネルギー事情に合わせた商品展開を図っています。
そして、電動化に関してホンダは、2030年の世界における電動二輪車の年間販売台数目標を400万台、2030年までにグローバルで30機種の電動モデルを投入することを目指しています。
この達成に向けて、2024年を電動二輪車のグローバル展開元年と位置付け、電動二輪市場への参入を本格化。
2024年10月には、インドネシアで交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を搭載した「CUV e:」、固定式バッテリーを搭載した「ICON e:」という電動グローバルモデルを発表。なおCUV e:は、欧州・日本を含む20か国での販売を予定しています。
また、2024年11月には、インドでもHonda Mobile Power Pack e:を搭載した「ACTIVA e:」、固定式バッテリーの「QC1」を専用モデルとして発表しました。
これにより目標となる30機種中、13機種を投入し、計画を着実に進めています。
また、EICMA 2024では、ホンダ初のスポーツモデルの電動二輪車「EV Fun Concept」。
ホンダが考える近未来の都市型モビリティを具現化した「EV Urban Concept」を公開しています。
また電動化の加速に向けては、充電・利用環境の整備も重要です。
日本、インドネシア、タイ、インドでは、交換式バッテリーを搭載する電動二輪車の普及強化に向けて、現地法人Honda Power Pack Energy India Private Limitedによるバッテリーシェアリングサービス事業を展開。
ACTIVA e:の発売にあわせて、インドのベンガルール、デリー、ムンバイの三都市で、街中でバッテリー交換ができるシェアリングサービス「Honda e:Swap(ホンダ イースワップ)」を開始しており、バッテリー切れの不安や充電の待ち時間を解消するとともにより安心な移動体験を提供するとしています。
また、インド全土6000店舗の販売ネットワークを活用し、アフターサービス、メンテナンスを強化。
今後順次投入していく固定式バッテリー搭載車両の電欠不安に対しても、この幅広いネットワークを生かして充電網を拡充していくとしています。
またカーボンニュートラルの実現に向けては、バッテリーの二次活用やリサイクルなど、リソースサーキュレーションの観点での取り組みも重要です。
インドでは、分散型電源・グリッド事業を展開するOMCパワー社と協業し、使用済みのHonda Mobile Power Pack e:をインドの電力不安定地域および非電化地区での給電装置として活用することで個人商店や学校においての給電に役立てる取り組みを開始したと言います。
さらには、今後貴金属などの素材のリサイクルを含めた、循環型バリューチェーンの構築に取り組んでいくようです。