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新型「ジムニーノマド」発表! WR-Vやフロンクスは販売好調!? なぜ海外生産? ひと昔前は「海外生産車」敬遠されていた? 日本車メーカーが「逆輸入」する理由とは

くるまのニュース 2025年2月1日 9時10分

2025年1月30日にスズキは新型「ジムニーノマド」を発表しました。このモデルは、海外では「ジムニー5ドア」と呼ばれているモデルで、日本市場にはインドで生産したものを輸入して販売します。その他にもスズキは「フロンクス」などを、ホンダも「WR-V」や「オデッセイ」などを海外生産して日本で販売していますが、これにはどのような事情があるのでしょうか。

■日本車の新車、海外からの輸入事情・今と昔

 最近、海外から輸入される日本車の人気が高まっています。

 ホンダ「WR-V」やスズキ「フロンクス」はインドから、また三菱「トライトン」はタイから全数が輸入されるクルマです。

 また2025年1月30日にスズキが発表した新型「ジムニーノマド」もインド生産となっています。

 これまでも、世界各地から日本車の輸入はありましたが、正直なところあまりパッとせずに、ユーザーが知らない間にいなくなっていたことが少なくありませんでした。

 また当時ユーザーからは「日本での生産ではなく海外の生産は品質的に問題ないのか」などの声も。

 実際に海外生産車というだけで敬遠するユーザーも一定数存在していたのも事実です。

 それにしても、なぜ、いまになって日本車の輸入が増えてきたのでしょうか。

 そもそも、日本車をなぜ海外から日本に輸入しなければならないのか。

 以前からあるのが、「海外専用車に日本で乗ってみたい」というユーザーが専門業者を通じて並行輸入するケース。

 これは、一般的に「逆輸入車」と呼ばれます。日本から海外に輸出したものを、改めて輸入するという意味です。

 例えば、ホンダの「アキュラ」や日産の「インフィニティ」、また当初は日本販売されていなかった初期のトヨタ 「FJクルーザー」などの左ハンドル車です。

 一方、「自動車メーカーが正規に輸入する日本車」とは、海外工場で生産されたもの。車両の企画段階で日本仕様を考慮した設計になっています。
 
 日本輸入車輸入組合によれば、2024年に海外から輸入された新車登録台数は32万789台。

 ブランド別で見ますと、トップはドイツのメルセデス・ベンツ(5万3195台)なのですが、第2位はなんとホンダ(4万5107台)です。

 これはインドからの「WR-V」と中国からの「オデッセイ」によるものですが、大半はWR-Vが占めます。

ホンダ「WR-V」はインドから

 そもそも、日本メーカーが海外現地に工場を建てて現地生産する理由は、それぞれの国や地域での販売台数がすでに一定のレベルに達しており、今後さらに販売が伸びる可能性を予想するからです。

 日本からの輸出と比べてコスパが良いというラインを超えれば、現地生産に移行するという解釈です。

 そうした日本メーカーの現地生産の経緯を簡単に振り返ってみましょう。

 1970年代から東南アジア各国で現地資本と連携するなどして徐々に始まり、1980年代以降は販売量が多いアメリカで拡大。

 1990年代になると、アメリカとNAFTA(北米自由貿易協定)を結んでいるカナダとメキシコでもそれぞれ自国向けとアメリカ向けを生産するようになりました。

 欧州では、もともと日本車シェアがあまり高くありませんでしたが、現地国の支援や欧州メーカーとの協業などにより、イギリス、フランス、トルコなどで生産が始まりました。

 また、スズキは他のメーカーとは異なる戦略として、1980年代からインドへ、また1990年代には欧州ハンガリーに進出しています。

 そして2000年代になると、BRICs(ブリックス:ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)と呼ばれる当時の経済新興国での工場進出が加速したのです。

 こうして日本の自動車メーカーのグローバル化が進む中で、それぞれのメーカーが国や地域での労務費、関税、為替、そして運送コストを含めて、部品の調達や新車の輸出入の最適化を図るようになりました。

 例えば、スズキは欧州向けの需要も見込んだ「SX4 S-CROSS」をハンガリーから。

 三菱はタイやフィリピンなどで需要が多かった「ミラージュ」をタイから。

 そしてトヨタがグローバル戦略車のIMV(インターナショナル/イノベーティブ・マルチパーパス・ビークル)の「ハイラックス」をタイから日本に輸入する戦略を立てたのです。

■いま話題のインドと中国とは

 そうした中で今、注目されるのが中国とインドでしょう。

 両国とも、20年程前は経済新興国と呼ばれていましたが、いまではIT産業などで世界をリードする先進的な事業を行う国へと成長したことを、日本でも多くの人が認識しているでしょう。

 両国とも人口は14億人超えで、人口第三位のアメリカの3億4000万人を大きく凌ぐ巨大国内市場を有しています。

 中国については、アメリカを抜いて世界最大の自動車生産・販売国の座にあります。

 直近では経済成長が鈍ったとはいえ、政府が描く新エネルギー車政策などよって、EVやレンジエクステンダーの重要拡大を進めているところです。

 また、2010年代から徐々に海外輸出へ舵を取り、また2020年代に入ると欧州や東南アジアへの現地工場進出を進めるようになりました。

 そうした中で、中国から日本向け輸出について、BYDが日本市場の扉を開けようとしています。

 日本メーカーとしても中国から日本への輸出について、さらなる検討が必要なのかもしれません。

 現状では、ホンダが「オデッセイ」を中国から輸入しています。

中国から逆輸入しているホンダ「オデッセイ」

 そして、このところ何かと話題なのがインドからの輸入です。

 インドのモディ政権は「Make in India」政策を掲げて、自動車を筆頭とした海外メーカーの現地生産拡大を後押ししているところです。

 WR-Vの場合、商品戦略と設計をタイの拠点で行い、「東南アジア等向けと日本市場向けを両立させるモデルに仕上げた」(WR-V開発担当者)と言います。

 その上で、ホンダのグローバル戦略を考慮した結果、生産はインドで行うことになったのです。

 一方でスズキの場合、1980年代からインド進出した知見を活かし、グローバルでの最新生産技術を投入したグジャラート新工場を建設し、日本向けを含めた「フロンクス」を生産しています。

 フロンクスの開発責任者は「インド生産車の品質は日本製と同等」と言い切っています。

 実際「これまでユーザーや販売店から品質に関する(ネガティブな)声はまったくない」と言います。

スズキ「フロンクス」もインドから

 また2025年1月30日には先行してインドを皮切りに発売していた「ジムニー5ドア(日本名:ジムニーノマド)」を発表。これもインド向上で生産し、日本に持ってきています。

 なおスズキは「インド生産ですが、クオリティチェツクのために最終検査は日本で行っています」と説明しています。

 さらに2025年1月17日からニューデリーで開催された現地のモーターショーでは、スズキ初のバッテリーEV「eVITARA(イービターラ)」を世界初公開しました。

 グジャラート工場で生産し、2025年夏頃からインド、欧州、そして日本などグローバルで発売となります。

 ひと昔前とは大きく違う、高い品質とADASなど最新装備を持ち、また日本の道に合わせた走りのチューニングも施した海外生産された各メーカーの日本車が今後、続々と日本に輸入されることが予想されます。

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