コンパクトミニバンのカテゴリーにおいて人気のホンダ「フリード」ですが、これまで世界初の革新的技術が投入された歴史があります。一体どのようなものなのでしょうか。
■フリードに採用された世界初の技術とは?
ホンダ「フリード」は、2008年5月にデビューし、これまで3代にわたって展開されてきたコンパクトミニバンです。
ミニマムなボディに広く取られた車内空間や、多彩なシートアレンジやレイアウト、取り回しの良さなどが好評で、実際に日本自動車販売協会連合会が発表している「2024年新車統計データ ブランド通称名別ランキング」では、5位(8万5368台)を記録するなど、多くの人気を得ています。
そんなフリードですが、かつて世界で初めての革新的な技術が用いられ、注目を集めました。
一体どのようなものなのでしょうか。
その技術が搭載されたクルマは、2代目フリードのハイブリッドモデル。
パワートレインには、1.5リッター直列4気筒DOHCエンジンにモーター内蔵の7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を搭載する、ホンダ独自のフルハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」を採用しています。
その駆動用モーターに、世界で初めて重希土類完全フリーの熱間加工ネオジム磁石を採用した駆動モーターが搭載されているのが大きなポイントです。
この新技術により、資源リスクを軽減しつつ、ハイブリッド車に求められる高性能な駆動力を実現しています。
ハイブリッド車の駆動モーターには、強力な磁力を持つネオジム磁石が使用されていますが、モーターが高温環境下で作動するため、従来は耐熱性を確保するためにジスプロシウムやテルビウムといった重希土類元素が添加されてきました。
しかし、これらの重希土類元素は埋蔵量が限られており、特定の国に依存することから供給リスクが指摘されていました。
さらに、価格変動の影響を受けやすいため、安定的な調達が難しいという課題も抱えていました。
そこでホンダは大同特殊鋼と共同で、重希土類を一切使用しない新しいネオジム磁石の開発に成功。
この磁石は、大同特殊鋼の完全子会社であるダイドー電子が開発した、ナノレベルの結晶粒を高度に配向させる技術「熱間加工法」を採用し、結果として高耐熱性と高磁力を両立する磁石の製造が可能となったのです。
さらに、ホンダはこの新しい磁石に最適化された駆動モーターを設計。
具体的には、モーター内部のローター形状を見直し、磁石にかかる磁束の流れを最適化することで、トルクや出力、耐熱性において従来のモーターと同等の性能を実現しました。
※ ※ ※
なお、この世界初の技術が取り入れられた駆動モーターは、2代目フリードを皮切りに、ホンダが当時展開していた様々なハイブリッドモデルに投入されました。
電動化が進みBEVも増えていくなかで、高性能化はもちろん、このような資源リスクの軽減を両立した持続可能な技術が、今後より必要不可欠なものとなっていくでしょう。