独自規格で設計され、経済性を重視した「軽自動車」は似たようなモデルが多くなりがちですが、過去には、デザインを優先した「個性派モデル」を目指したモデルも存在しました。
■個性的な軽自動車が魅力的!
現在主流となった「背が高い軽自動車」というジャンルは、1993年に誕生したスズキの軽ハイトワゴン「ワゴンR」から始まったものです。
その後ダイハツ「タント」(2003年)やホンダ「N-BOX」(2011年)といった「軽スーパーハイトワゴン」が登場して人気を獲得。さらなる広い居住空間や高い経済性を備えた超実用な軽自動車がもてはやされるようになりました。
サイズと排気量に制限がある軽自動車は、とかく同じようなモデルになりがちですが、その一方で、かつてはデザイン重視で「スペシャリティ」を目指した軽自動車も存在したのです。
そんな「個性派軽自動車」にはどのようなモデルがあったのでしょうか。
2010年以前の軽自動車は、ハッチバックや3ドアがまだメンツを保っていました。その中でも、超個性派として現在でも一部では根強い人気のスバル「R1」(2005年~2010年)です。
往年の名車「スバル360」を現代版にアレンジし、スタイリッシュなデザインが印象的なR1は、2名乗車が基本の「スーパースモールカー」。小さいながらも後席が設置され、4人乗車が可能です。
スーパーチャージャー搭載モデルが後から追加され、パワフルな走りを楽しむこともできました。
また個性派軽自動車で忘れてはいけないのがスズキ「セルボ」でしょう。初代は先代に当たる「フロンテ クーペ」の意匠を受け継ぎ1977年に誕生。リアエンジン・リアドライブ(RR)という超個性派の軽クーペでした。
しかし、3代目は4ナンバーのバン仕様のみという迷走を見せ、4代目・5代目は実用性の高い「アルト」の亜種となってしまい、個性派からは脱却してしまいました。
もう1車種、実は隠れ名車の要素を持っていたのが、ダイハツ「ソニカ」(2006年~2009年)です。
車高を1470mmに抑え、全グレードにターボエンジン&前後にスタビライザーを装備。また世界初のCVT搭載量販車であり、さらには「レーダークルーズコントロール」をオプションながら用意するなど内容的には頑張っていましたが、わずか4年という短い期間で消滅してしまいました。
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そして現在、流行はひと回りし、「スポーツカー・スペシャリティ待望論」が徐々に盛り上がっています。経済性が優先される軽自動車にも個性派を求める機運は高まっているようです。
その証拠に、中古車市場でR1の極上車は150万円前後の値が付くプレミアム状態、セルボもクラシックとなる初代は160万円前後、ホンダ「S660」は初期のモデルでも100万円前後から値崩れしていません。
同じような軽自動車が増えた今だからこそ、個性派モデルの登場に期待したいものです。