トヨタは2023年10月に開催の「ジャパンモビリティショー(JMS)2023」で発表した「カヨイバコ」は、商用から個人ユースまで、幅広い使い方を提案したモデルとして注目を集めました。市販化の可能性はあるのでしょうか。
■全長4mのコンパクトボディに「ハイエース」並みの広大な室内空間を確保
自動車メーカーが未来のモビリティを模索するなか、モーターショーなどに登場する「コンセプトカー」は、その方向性を提示する重要な役割を担っています。
トヨタは2023年10月に開催された「ジャパンモビリティショー(JMS)2023」で「KAYOIBAKO(カヨイバコ)」を初公開しました。物流の「ラストワンマイル」に焦点を当てたバン型のコンセプトカーとして注目のモデルです。
車名の“カヨイバコ”とは、物流業界で拠点間の製品や部品を効率的に運ぶために使用される「通い箱(通函)」に由来します。
通函はプラスチックや段ボールなど多様な素材で作られ、用途に応じた形状やサイズで展開されています。
カヨイバコも同様に、用途に応じた「超拡張性能」を持ち、優れたパッケージングと使い勝手を追求したモデル。その設計により、さまざまなシーンで柔軟に活用できる基盤車両として位置付けられています。
さらに、カスタマイズ可能なソフトウェアとハードウェアを組み合わせることで、スマートグリッドをはじめとする高度な知能化社会のシステムにも対応できる設計が特徴です。
ビジネス用途では、ラストワンマイルの物流課題解決に向け、小口輸送の効率化や移動販売車、さらには乗り合いバスとしての利用が想定されています。また、地域ごとのニーズに応じて柔軟な対応が可能で、多様な課題解決に貢献します。
プライベート用途にも対応しており、ユーザーのライフスタイルや趣味に合わせたカスタマイズが可能となっています。
さらに車いす利用者が快適に乗車できる設計や、運転席へのスムーズな移動を実現するなど、誰もが自由に移動できる「フレンドリーな車両」としての側面も強調されています。
ボディサイズは、全長3990mm×全幅1790mm×全高1855mm、ホイールベース2800mm。フロントに小さなノーズが備わりますが、基本的にはワンボックス型のシンプルかつプレーンなスタイリングです。
コンパクトなボディのなかに、室内長3127mm×室内幅1485mm×室内高1437mmの広大空間を確保しているといいますが、パワートレインの詳細は発表されておらず「BEV(バッテリーEV:電気自動車)」と伝えられていました。
このようにカヨイバコは、ビジネスからプライベートまで幅広いニーズに応える革新的なモビリティとして、未来の移動の可能性を広げるコンセプトカーでした。
■商用から個人ユースまで視野に入れた「未来の箱型ワゴン」!?
大きな注目を集めたもうひとつのポイントは、さまざまな使い方が提案された複数のカヨイバコのなかに、「bB+コンセプト」とフロントマスクのディスプレイに表示された、ローダウンのカスタマイズモデルが含まれていたからです。
ここでいう「bB」とは、2000年から2015年の間、2世代に渡ってトヨタが販売したコンパクトハイトワゴンを指します。
初代bBは20代男性をターゲットに開発され、ユーザーがカスタマイズする余地を残したシンプルな内外装デザインを特徴とします。
4mを切る短い全長に、約1.7mの高い車高を組み合わせた5ナンバーサイズで、1.3リッターおよび1.5リッターガソリンエンジンと4速ATのパワートレインに、FF(前輪駆動)と4WDの駆動方式を設定していました。
そんな初代bBは、デビューするや当初の狙いが見事当たるだけにとどまらず、幅広い層に受け入れられ、大ヒットモデルとなりました。
bBを購入した若者は、ホイールを交換し大径化したりローダウンするなどの思い思いのカスタムを施しますが、ちょっと「ワルっぽい」カスタマイズをしたものが目立ちました。
カヨイバコ「bB+コンセプト」は、そのDNAを受け継ぎ、ローダウン&大径ホイールといった”ちょい悪”のテイスト溢れるバージョンとなっていました。
別のカヨイバコでは、アウトドアレジャーを楽しむ仕様もあり、こちらは逆にリフトアップされている様子。
さらに真っ白なボディが映える仕様は、ビジネスユースを想定したものでした。
コンパクトカークラスの全長を持つカヨイバコですが、荷室長は全長4.7mのワンボックス商用バン「ハイエース」並みで、さらにホイールベースの伸長も容易とのことでした。
つまり現行ハイエースのような、ショート・ロング・スーパーロングといったバリエーション展開も可能であることを意味しています。
現行型ハイエース(200系)は、2004年のデビューからすでに20年が経過したロングセラーモデルで、次期型の登場が待たれています。
カヨイバコは、そんなハイエースの未来像を示したコンセプトカーとしての側面があったと考えるのが自然でしょう。
JMS2023の閉幕から以降、カヨイバコについての続報はありませんが、bBのような拡張性を持った次期型ワンボックスワゴン・バンが登場する可能性は決して低くないと筆者(佐藤亨)は予想します。
今年2025年秋に開催のJMS2025では、進化したカヨイバコ“Ver2.”の姿を見ることができるかもしれません。