東京オートサロン2025にTOYOTA GAZOO Racingは、エアロパーツを装着したコンセプトモデル、GRヤリス エアロパッケージを出展しました。関係者にそのポイントを聞いてみましょう。
■空気を味方につけて
TOYOTA GAZOO Racingは、カスタムカーイベント「東京オートサロン2025」にエアロパーツを装着した新たなコンセプトモデル「GRヤリス エアロパッケージ」を出展しました。関係者にそのポイントを聞いてみました。
このコンセプトモデルは、モータースポーツやサーキット評価の現場で出た課題のひとつひとつに向き合い、プロドライバーとともに目標とする性能に一切の妥協を許さず開発し続けているエアロパーツを搭載。
走行シーンに合わせて角度が調整できる“可変式リヤウィング”など、計6点のパーツを搭載し、空力性能・操縦安定性を追求すると同時に、デザイン面でも目を引く存在感を発揮しています。
ある関係者はこのプロトタイプの目指したことについて、「GRのビジョンとして、もっと良いクルマを出し続けるということがあります。GRヤリスも世の中に出して、ご好評、お褒めの言葉もいただいていますが、まだまだ改善点もあります。そういったところをより速くする、より良くするという視点でやっているのです」と説明します。
このコンセプトモデルでは、「ブレーキのスネーキングなどの状況を極力抑えたいというポイントがありました」といいます。
例えば本格フルコースのサーキットのホームストレートからフルブレーキングすると、ドライバーによってはリアが少し安定しない場合もあるようです。そういった際に、「もう少しリアの接地感を上げるために、リヤウィングを装着することで効果が分かりやすく出ています」。
その結果、コーナリングパワーも上がりますので、そういったことも複合的に狙っているようです。
ただし、サーキットの場合はコーナーばかりでなくストレートもあります。したがって、「当然スポイラーは抵抗にもなりますので、様々なシーンを複合的に全て見てトータルでバランスを取っています」とのことでした。
■空気をいかに逃がすか
「もともとGRヤリスはフロントエンジンですので、前が重くアンダーステア(コーナーに速いスピードで侵入すると、ステアリングを切ってもまっすぐ行こうとする状態)の特性が出がちです。
そういったところを少しでも改善できないかと、フロントのリップスポイラーやフェンダーダクトもコーナーのターンインから中速、出口に向かって効果を発揮するように狙っているのです」と話します。
■空気をいかに逃がすか
このフェンダーダクトの効果は大きいようです。具体的にどういう働きをするかを説明してもらいました。
「フロントに荷重がかかっているときにステアリングを切るとしましょう。その時にそこから空気が抜けることでフロント荷重がより強くなる仕組みです。ホイールハウスの中には空気がありますよね。その空気がエアバネみたいな状況になって、クルマが沈み込もうとする姿勢を邪魔してしまうんです。
そこでブレーキングしてノーズダイブ(フロントが下がる状態)する際に空気を逃げやすくすることでフロントがシュッと沈んでコーナーに素直に入る。私たちは初舵のところが変わるという表現をしています」といいます。
また今回のエアロパッケージは熱対策にも力を入れています。「GRヤリスではもともとハードな走行時にエンジンルームからの熱が逃げにくい状況がありました。そこでフードのダクトを用いることでエンジンルーム内の熱を逃がせるようにという思想です」とのこと。
同時にフードダクトには裏にカバーが装着されました。「サーキットで使う方であれば、それを外したり取り付けたり、状況に応じて効果をより高めて使ってもらえるようにしています」。
ほかにもリアスポイラーは可変式なので、「ミニサーキットと高速サーキットでは欲しい角度が違います。それに応じてお客様が変えられるようにしました」とドライバーがクルマと対話しながら好みのセッティングが出せるようになっているのです。
また、この仕様について、「メーカーとしてはトータルパッケージとして今後出せるように検討していきたいのですが、GRヤリスのユーザーは既にいろいろ手を入れている方が多くいらっしゃいます。そこでここだけ付けたい、あそこだけ付けたいというご要望にも応えられるようにすることも課題として考えています」と既存ユーザーもきちんと視野に入れた対応をしていきたい様子でした。
そして、「GRヤリスはいろんな方にいろんな使い方をしていただいています。もっともっと市場でも鍛えてお声をいただければ、またフィードバックにつなげていきたいと思いますので、ぜひ楽しんで鍛えてください」と語っていました。
毎年のように小改良を加えて進化し続けているGRヤリス。最近でもATを追加した際にフットペダルがMT用のままで小さかったものを、2ペダル用に改めて拡大させたり、ボルトのフランジを大きくして低結合性を上げながらショックアブソーバーのセッティングを見直すなど進化し続けています。さてどこまで上り詰めるのか、楽しみな1台です。